いままでの管理型SFAはよくないと分かりはじめてきているが、管理型SFAを導入しても営業員は上司から叱られるために必要な資料を余計なエネルギーを費やして作成していることになるから幸福にはなれないと、SFA を先行した企業が気づき始めてきている。
最近はSFAを「営業監理から営業支援」とキャッチフレーズを変えているITベンダーが多いが、マーケティン グ理論があって契約に導くことができるような仕組みになってメソッドがあるのか、私は疑問を感じている。
先行してSFAを導入した大企業の執行役員は、私との対談でこう話している。
以下は執行役員の発言内容である。
「これまでのSFAは営業マン性悪説に基づいて展開していたように感じている。
営業はだらしない。営業はだめだ。だからSFAを導入してしっかりとやらせ、それを厳しく監理していくのだという思想が根底にあったように思う。当社も早 くからSFAを導入した。それが失敗に終わり、つぎに当社は営業支援システムとして再導入をしたが、やはり営業マンは使わない。
本物の支援になっていないからなのだ。
私は、次のSFAは営業マン性善説をとりたい。彼らの中にはすばらしい暗黙値がある。これを拾い上げて形式値化して、それをベースに営業マン各人がスパイラルアップし、暗黙値となるようなそんなSFAを構築していきたい。SFAには的確なマーケティング理論の搭載が必要である。見える化なんて言っているうちはまだ稚拙。いまの営業マンからよいものを引き出してSFAをつくっていかないといけないとつくづく思う」
この執行役員はSECIモデルを回すことを念頭に置いて発言しているように思われる。SECIモデルとは、下方アドレスで詳細を知ることができる。
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/seci.html
いわば営業マン個人が持つ知識(暗黙知)をSFAで表出化して、情報を共有し(形式知)それをまた個人に戻すことによって更なる個人スキルをレベルアップし(共同化)、また形式知化しようとするものである。
個人のノウハウ、知識を集約したSFAをつくり、それを共同使用することによって形式知化する。
その上で個人の知識はスパイラルアップする.またそれを形式知化しようとする考えは一ツ橋大学院の野中郁次郎教授らの組織的知識創造理論に基づくものであ るのだが、日本でSFAを広めるにはこの方法しかないと言うのが先の2回にわたるSFA導入失敗を経てたどり着いた心境なのである。
そこで問題になるのが、企業ごとにまったく異なるSFAが出来上がるのではないか、余りにも現場に引っ張られることになるのではないかという心配である。
この実現には、パッケージの機能ではなく、もう少し上位概念でのマーケティング理論がシステムに搭載されていないといけない。
このマーケティング理論に基づいてSFAが展開される。ここでは営業マンが持つ暗黙知の集大成が登載されてSECIモデルがぐるぐるまわることになる。
一方、これまでのSFAスタイルを擁護する意見もある。
「国際競争に勝つために、生産性を上げコストを下げなければいけない。企業改革における最後の砦が営業改革である。欧米が行なっているように(パッケージの機能に合わせて)営業行動を再構築して、営業を叩き直さなければ日本企業は負けてしまう。
国際的に通用する営業を作らなければいけない」と。
欧米型をそのまま強制導入することが正なのか。日本流のSFAを構築することが正なのか。
短期的、長期的見方で解釈は違ってこようが、SFAはこれだというものが、日本ではいまだに出来上がっていないといえる。
しかし、これまでの管理型SFAはほぼ壊滅している現状を見ると、日本の営業文化に沿って、真の営業支援、それはB2B、B2CでのLTM(Life Time Management:顧客生涯価値を実現するためのマネージメント)を実現できる新たなSFAを企業は待ち望んでいるのかもしれない。
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