業務プロセスを細分化し、細項目の一つひとつを数値化(デジタル化)することによって業務プロセスは可視化できるようになる。
CRM-SFAはこうして、メーカー経営者から導入の火がついて日本企業に、もう数千社が導入をしている。
SFAパッケージを販売している企業はIT企業だ。プロセスを可視化するためのコンサルタント業務を行う人たちは、ITコンサルタントである。だから「ほら、あなたの営業マンの業務プロセスがこのように見えるようになりました」と言うところまでが仕事の範囲で、そこから先は導入した企業で考えてくださいというスタンスをとる。
見えたらその後どうするのか、どうすれば売り上げが伸びるのか、契約率が高まるのかという解は導入企業にもITベンダーにも持ち合わせていない。
SFAはCRMの一環として登場してきた。西暦2000年当時、CRMが根付かないうちに登場したSFAをCRMと名付けた。CRM tとは(Customer Relationship Management)であるはずだが、ITコンサルティングの領域には顧客戦略は存在していない。
導入する企業も、見えたことによってこれで営業改革ができると信じ込む。これまではブラックボックス化して見えなかった業務プロセスが見えることは大きな進歩だからだ。
ところが可視化したプロセスを契約率向上に導くノウハウもなく、やり方も知らないで営業改革をするにはどうしたらよいかと企業担当者が考えれば、やり方はただ一つ、プロセス管理しかないのである。
営業マンのプロセス管理はいくつか手法がある。
一つは時間管理。営業マンの時間管理を集計し、在社時間率、移動時間率、商談時間率を円グラフにして比較をするもの。例えば平均と比べあなたは在社時間が38%も多いから営業活動に専念し在社時間を減らすように、あるいはあなたは商談時間が少ないから、あるいは商談件数が少ないから在社時間を減らして、商談件数を増やすようにとアドバイスする。
二つはプロセス管理。例えばあなたは概算見積書を提出してからプロセスが中断する率が多いので、概算見積書を提出してから、次のプロセスに進捗できるように努力をするようにとアドバイスをする。
分かりやすく書けばこうだが、実態は決して営業改革が実現できるような話ではない。
例えば時間管理を一時間管理で記入していたある大手メーカーでは、社長がSFA資料を見て一時間単位で動くわけがない。実態は分単位で動くのだろうからこれを分単位に直せと命令を降したために、営業マンは毎日の記録を何時何十何分から何時何十何分まで何をやったという報告をしなければいけなくなり大ブーイングがおきた。
別の会社では営業会議で必ず行動管理が議題になり、営業成績とは別に平均値と比べて低い行動管理の数値を持つ営業マンが吊るし台に昇るなど、SFAを導入したあとのこうした負の話は限りなく存在している。
営業マンの行動管理は必要だが、それはついでの話にしないといけない。実際のところ行動管理だけが目的でSFAを導入したのか。そうではないはずだ。
工場の全プロセスが可視化できれば生産性は向上し、コストは下がり、品質は向上する。工場コストは一つひとつのプロセスの積み重ねで出来上がっているから、プロセスが合理化できればそれに拘わる工数が削減されコストは一気に下がる。しかし営業プロセスは可視化できてもそのままでは契約率がアップされることにはならない。
営業と工場とではプロセス合理化の仕方がまったく異なるのである。
しかし現状は営業の業務プロセスを可視化したところで導入企業に引き渡すところしか、できていない。
当社の実例を話そう
当社では某メーカーのSFAをデザインし、BREA-SFAを構築している。
このメーカーのA社長はSFAを導入するべく調査研究を続けた。著名な見える化ソフトを制作販売する会社へも訪問し、ヒアリングをし、ソフトウエアを見、事例を聞いた。
しかしA社長の結論はノーであった。見える化後、営業マン行動管理しか使っていない。これでは意味がない。
A社長は、当社を訪れ、私と会談をしてその場でシステム導入を含むコンサルティング契約を申し入れた。
このメーカーは多角経営で知られている中堅メーカーである。アルミ鋳物事業部、コンクリート事業部、セラミック事業部、そして食品事業部、それぞれ異なる事業を広大な敷地をもって国内生産をするだけでなく、中国、ベトナムなどに子会社をもって現地生産現地販売まで行っている。
当社はそれぞれの事業部で調査を行った後に、プロセスデザインに限定して言えば
1.営業プロセスの全体デザイン
2.新客を創造するためのプロセスデザイン
3.案件発生後に見積書を提出するまでのプロセスデザイン
4.契約するためのASKプロセスとエモーションプロセスデザイン
5.契約後納品し、集金するまでのプロセスデザイン
6.集金後、定期訪問に戻るためのプロセスデザイン
をした。
大事なことはヒアリングをして現状のプロセスをシステムに記載するのではなく、あるべきプロセスをCRMマーケティング観点から書き直してシステムに搭載することである。
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