営業プロセスを数値化することによって可視化できることと、データベース項目を分析していろいろなことがわかる(可視化)とは同じ意味である。
データベース項目を分析すればさまざまなことがわかる。どの顧客が一番の売上げかもわかるし、順位表を作成することも出来る。最終来店日の古い順に顧客を並べることも出来るし、購入頻度の高い順に顧客リストを作成することも出来る。
商品別に購入顧客を並び替えることも出来るし、商品別購入年月日別顧客リストを作成することも出来る。
この商品の寿命は3年だから、この商品を購入して3年経過した顧客をリストにすることも出来て、このリストにDMとカタログを送るのですと、分析ソフトを販売した営業マンは使い方を指導することが出来る。
まさに営業プロセスが可視化できることと寸分違わない。
けれども商品寿命3年の商品を購入し3年経過した顧客に商品カタログを送っても、そのことで購入する顧客は、ゼロとは言わないが、限りなくゼロに近いのが普通なことである。ある自動車用品FC店のオーナーが、タイヤを交換して3年経過した顧客にタイヤのチラシを送付してリスポンス率を期待したが、結果はゼロであったということがこうしたことが理論ではあっても実際にはありえないことであることを如実に物語っている。
プロセスが可視化することと、契約率向上とはまったく別なことなのである。データベースを分析してさまざまなことがわかっても、それで売上げアップにはつながらないのが普通なのである。
私はCRMで営業改革の成功事例が少ない理由はここにあると考えている。
数値化することによってプロセスが可視化出来て、その数値を分析しても売上げアップにはなかなかつながらないのである。データベースを分析して、いろいろなことがわかることと、売上げを上げることとは別なことである。しかしこれまでのCRMエンジンはここを無視していたといっても良い。データベースの後ろには分析ソフトとメール送受信ソフトがついているだけである。あるいはOLAP分析ツールが付き、CSVでも、エクセル形式でも吐き出せるようになっている。さらには絞込み機能がついている。いたれりつくせりであるのだが、データベースマーケティングの立点から一歩も抜け出していない。
通販の発達と共に普及していったデータベースマーケティングが、約20年前の衣を着たままCRMエンジンに鎮座しているのである。
分析することは価値あることだが、分析することと売上げを上げることとは別なことであって、売上げを上げるためには売上げが上がることを仕組み化しなければいけない。
BREA理論は、まさにこの部分を解決した理論であり、実践方法である。
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)について、BREALOGICでは次のように考えている。
1.ビジネスプロセスとは、これまでは最終見積書を提出するまでのプロセスであった。
2.ビジネスプロセスで打ちたてた項目は、最終見積書を提出するために必ず通過しなければいけないマイルストーンのことであった。
3.ビジネスプロセスを進めても契約に到るとは限らない。契約に到るまでには別のプロセスを再構築(リエンジニアリング)し、可視化し、営業支援する必要がある。
4.BREALOGICでは、この点を重視する。
5.別のプロセスとはBREALOGICではASKとエモーションである。
6.エモーションは「情のエモーション」と、「理のエモーション」とがある。
7.ASKとエモーションを組み合わせてビジネスプロセスを見積書提出までではなく契約に到るまでに押し上げていく。
8.店舗系でもASKとエモーションは重要である。
9.これらを包含したプロセスをリエンジニアリングしなければ、営業改革とは言わない。
真の営業改革とは、売上げを上げる仕組みを創る改革である。行動管理を厳しくして余剰時間を販売活動に充て、売上げを上げていこうとする営業生産性向上、営業活動の効率化による営業改革は真の営業改革とは考えない。それはプロセスを可視化して効率をあげただけであって、詰まるところは生産性を向上させて余剰時間を創製し、挙句の果ては人員削減をして、一人当たりの売上高を高める道に入り込むか、営業マンの行動を厳しく管理して追い立て営業の道に入り込むかのいずれかである。
真の営業改革は、顧客を育成し、維持し、継続した売上げを構築していくための仕組みを創るか、契約に到るプロセスを構築することによって、契約率を高め、かつ継続して顧客と関係を深めていくためのプロセスを構築していくかのいずれかである。
プロセスの見える化や分かる化は数値化することによって簡単に出来る。しかし営業マンの行動を見える化しても、POS情報を分かる化しても、それと売上げを上げることとはまったく別なことであって、見えてもわかっても売上げを上げることにはならないのだということを認識しなければならない。
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