■見えることと売上げを伸ばすことは別のこと■
欧米のSFAが日本で定着しないで衰退をしていった背後から国内製のSFAが「プロセスの可視化」をキャッチフレーズにして、しかも廉価な価格帯で登場してきた。可視化とは営業プロセスの可視化のことである。
このキャッチフレーズは大企業だけではなく中小企業経営者の琴線をくすぐった。
メーカーは、工場の可視化が改善につながった成功体験を持つ。工場はプロセスが見えれば即改善につながる。品質管理も、納期改善も、コスト削減もすべてプロセスの可視化から始まったのである。
したがってメーカーの経営者は営業プロセスの可視化に飛びついた。欧米のSFAもプロセスの可視化ではあったが何せ価格が高すぎた。
その点、国内産SFAは安く導入できた。
「今までブラックボックスにあった営業プロセスが可視化できれば営業改善ができるに違いない」
工場プロセスの可視化で大きな成功体験を持っているメーカー経営者はそう思ったのに違いない。
企業経営者がSFAを導入する目的は大きく下記四点である。
●効率的に(営業マンを増やさないで、コストを増やさないで)受注獲得率を高めたい。
●できる営業マンの暗黙知プロセスを営業マン全員の形式知化し、SECIモデルを回していきたい。
(SECIモデルについては検索エンジンで調べてください)
●可視化したプロセスから案件ごとに次の一手を対策できるマーケティングコントロール機能を持ちたい。
(これが可視化の最終目標である)
●顧客との永続した関係を構築するLTM(ライフタイムマネージメント)を実現したい。
企業はグローバルで生き残り競争を行なっている。そのためにはさらにコストを下げ、国際競争に勝てる高品質で新たな価値を生む商品を作り、大量に販売をし、高収益を出せる企業体質を構築しなければならない状況に差し掛かっている。
そこでネックとなるのが営業体質である。経営はここを触らない限り、真の最適経営は実現できない。したがってSFAは単に可視化だけでこと済むわけでなく、日本経済の行方とも直接的に関わりあいを持つ大切な経営システムなのである。
さて、話を戻そう。
営業プロセスが可視化できれば、かつて工場改善で成功したように営業改善ができるかもしれない、多くの経営者はそう思ったのである。
国内SFAは廉価であったことが要因で、広く企業に納入されたのだが、経営者が求めるような上記四点をフォローできるものではなかった。
工場に組立工程の現状プロセスがよく見えたのだから組立工程を合理化し、プロセス改善をせよと命令をすれば工場は直ちに取り組んでいくだろう。
しかし営業は顧客を対象にしている。プロセスが見えたから顧客に買えと命令指示は出来ない。
またプロセスを集計して勤務時間の中で在社時間が長いから、もっと外に出ろ、顧客のところへ行けと命令しても、顧客は購入しない。
だから、営業プロセスを可視化して見えることは営業マンの時間や行動だけであって、管理好きな上司の格好な部下管理用具として、お前は在社時間が長いとか、お前はいつもこのプロセスから先に進まないなどと叱られるデータ作成システムになっているのである。
その結果、営業マンの士気はさがり、やがてはやる気をなくす営業マン育成システムにまで成り下がり、企業は慌てて使用中止するケースまで発展しているのが実態なのである。
これは運用が出来ていないことと、可視化しかできないこと、受注率を高めるAFA本来の機能がついていないことによる)
つまり、プロセスの可視化はBI(ビジネスインテリジェンス)の領域であって、プロセスの可視化はSFAの領域ではないのだ。
BIは可視化を目的とする。一方SFAは、販売生産性を上げること(効率よく受注を高めること)、SECIモデルを回すこと、可視化したプロセスをコント ロールできるまでに高みに追い上げていくことを実現するシステムである。さらにはLTM(ライフタイムマネージメント)を実現し、安定した顧客との関係を 構築するシステムである。
繰り返す。可視化はBIであって、SFAと言ってはいけないのである。
可視化できただけでは売上げは伸びない。契約率も高まらない。SECIモデルも回せない。マーケティングをコントロール機能にもならない。これはデータベースマーケティングで、いやというほど体験したはずである。
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