【2008.02.01配信】
百貨店が行なうべき顧客ケアは明確である。百貨店はいくつかの経営課題を持っている。
それは百貨店が絶頂期の頃に作り上げたビジネスモデルに起因している。売れたら仕入れる消化仕入れ制度。派遣店員制度。売り場面積に応じた最低売り上げ保障制度などである。
こうした一見すると百貨店側にとって都合の良い仕組みが百貨店を弱体化させた。
顧客ケアを誰がやるのか。派遣店員に顧客ケアが出来るのかという課題がある。
一方で、百貨店の集客力に頼らず自社で顧客管理をやろうとする出店企業は増えている。
百貨店は、顧客はすべて百貨店の顧客であるから勝手に顧客管理をすることはけしからんと言うスタンスであるがこれも力関係で有名無実になっている。
そこでこのような現状を踏まえて百貨店が行なうべき顧客ケアは次の通り明確である。
【1】店舗レベルでの優良顧客層の創造、発見、維持、育成
百貨店が最重要視しなければならない顧客戦略は、館(やかた)としての優良顧客を定義し、該当顧客を発見し、維持し、育成していく、すなわち顧客ケアを行なっていくことである。
個人外商部が顧客をもてなすと同じように、顧客を徹底的にケアしていく。このことを顧客ケアマーケティングで実現していくのである。館とは一店舗全体の意味である。
【2】館の準優良顧客層の発見と維持・育成による優良顧客化
次には準優良顧客を定義して、準優良顧客を発見し、維持し、育成していくことである。
一般には毎年、五〇万円程度の買い物をしていただける顧客のうちポテンシャル度の高い顧客を発見し、育成シナリオに基づいて年間百万円以上の購入客に育成するためにケアをすることなどである。
【3】館の若手優良顧客層の発見と維持、育成による近未来の優良顧客化
次には近未来に優良顧客になりうる若い年齢層顧客を早期に発見し、ケアを行い、維持し、育成していくことである。
【4】外商部門での未ケア顧客の発見とケアによる営業支援
外商部門では顧客を把握しているが関係が深まっていないために購入金額が伸びないでいるケースが非常に多い。そこで育成シナリオに基づいて、顧客ケアをおこない関係を深めて維持、育成をおこない、外商営業マンを支援する。
【5】百貨店自主編集売場のLTV実現を目標とした売場優良顧客の育成
次には、百貨店の直営売り場というべき自主編集売り場でのLTV実現を目的とした売り場の顧客に対する顧客育成を行なっていく。
【6】全売場のLTV実現を目標とした売場優良顧客育成
自主編集売り場のノウハウを元に全売り場の顧客ターゲティングと育成を百貨店が行なうことは重要である。低迷する百貨店を横目に見ながら有名ブランドや大手アパレル業は直営店政策に切り替えようとしている。これらメーカーが本気で直営店政策に力を入れれば売れ筋商品を直営店に優先的に並べて直営店への誘導を図る政策に出ることは明らかである。百貨店がブランド力で顧客を集め、顧客戦略で顧客をLTV実現に向けて展開していくことは重要な経営政略となる。
このケースではシステムをASP対応にして展開することが望ましい。
【7】館として育成する顧客層の拡大
当初は現在優良顧客の発見と維持育成、準優良顧客の発見と維持育成、続いて近未来に優良顧客になるべき顧客を発見して維持育成することは本項で前述したとおりだが、さらに育成するべき顧客層をクラスター分析で抽出して特定し、館としての育成顧客を定めて、展開していく。
【8】以上の形式知化
これらはすべて仕組み化し企業としての形式知化していく。これまで顧客戦略は販売員の暗黙知とされていたきらいがあった。顧客戦略を暗黙知から形式知にしていかなければならない。
顧客ケアを出来る販売員のノウハウに依存するのではなく中長期的な仕組みとして企業の形式知として展開していく。
【9】横展開化
一つの館ででき上がった顧客ケアマーケティング手法を他の館へ横展開していく。この実現によって百貨店は顧客ケアマーケティングを仕組み化し、形式値として完成させることができる。
以上が、百貨店のビジネスモデルを熟知した上で百貨店として実現できる顧客ケアの手法である。
RFM分析で顧客を抽出しDMを出すようなことは、もはや通用しないのである。
コメント