【2008.05.16配信】
大量生産大量販売時代は、顧客の方から望んで商品を買う時代であった。だからこそ大量生産をして大量販売することができた。大量生産大量販売は高度経済成長時代とリンクする。この時代は商品を並べれば売れる時代であった。顧客が買いに来る時代であったからである。
やがて商品が行き渡ると、次に売る技術が必要になってきた。商品パッケージ、ネーミング、デザイン、ターゲットを決めた商品開発、価格政策、商品の陳列技術、広告宣伝などなど、売る技術が商品を販売するために必要になり、その技術に長けた企業が売上げを伸ばした。いまはその延長にいる。
営業マンも同じで、企業の目標は部に割り当てられ、課に割り当てられ、チームに割り当てられ、個人に割り当てられ、割り当てられた個人は、目標ノルマの実現に向けて営業活動を繰り広げる。
追いかけるのは、毎月のノルマ達成である。
私は過年に家をリフォームしたことがあった。次女の結婚が急に決まり30年間も経過した家を建て直そうとしたが時間がなく、リフォームでテレビ宣伝を派手にやっている大手ハウスメーカーにお願いをした。
ところが、なんとも新築するより高い見積金額であった。私は価格交渉をしたところ、それではと改めて価格が下がった見積書を出してきた。
内容を逐一チェックすることはなく、その金額で印を押した。
下請けに入った職人達は、慣れてくると「なんでリフォームをこういう会社に頼んだの?
我々直に依頼されればウーンと安くできるんだよ」と言った。
やがて出来上がった家を見て驚いた。例えば敷居は削っていなかったから30年前そのものであった。金属の雨戸もペンキを塗っていなかった。材料はすべて一番安いものであった。結局、価格交渉をして値引きをした分、作業をしないか、使用材料を落とすかをしていたのである。
それでも建物だけで坪換算では70万円ほどのリフォーム工事費用であった。
営業マンは、コンピュータで見積書を作るので値引きができない。営業マンは、「厳しい利益ノルマがあって仕組み的にも利益を下げることができないように作られている」と弁解をした。
その後、ハウスメーカーの紹介で造園業者が入ったのだが、その役員と食事をした時に、私はこの話をした。
するとこの役員は、「どこでも同じ苦情です。普通は立ててもらうと顧客はうれしいから感謝をするのですが、そうではないのです.どこでも顧客は怒り出すのです。膨大な宣伝費を使ってリフォームの顧客を取るのですが、下請け業者をいじめ、顧客を無視しているから、彼らは規模が大きくならないのです。徹底的な利益管理をしていますから、WINは自社だけで、顧客も下請けもWINにはならないのです」
さらにこの役員は、「顧客の苦情が多くて営業マンが定着しません。いやになってしまうのですね。怒られることでいやになるのではなく、顧客の主張が正しいから会社がいやになってしまうのです。だから、伸びないですよね。こんなやり方では」と言った。
次には、「こうしたことはうわさになりますから、どこでも目標に程遠い業績なのです。
ですから企業は利益確保に敏感になる。彼らは、リフォームは壊して作るから高くなるといっていますが詭弁です。見積書を精査して御覧なさい。異常に高いと思いますよ」と言った。
悪質ではないが、高度経済成長時代にやっていたやり方をいまでもやり続けている。
成熟社会では、企業はミッションを打ち出し、ミッションに忠実でなければならないのである。ミッションとは社会的な使命と訳す。
ミッションは、CI計画から導き出されるものである。
企業が示す価値を顧客も社員も共感できるようなものでなければいけない。
顧客をケアしなければ生き残れない時代に、顧客をないがしろにして、ノルマを追求し、利益を追求する経営はもう時代遅れなのである。
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