【2009.01.30配信】
ブレアコンサルティングの服部です。引き続き顧客対話の説明を致します。
SFAでは社内向けの営業プロセスの進ちょくを管理しますが、どうすれば営業プロセスが進ちょくするかには触れていません。前号のハウスメーカーの事例を再掲しますと、はじめに設定した「土地の調査を行う」とした、社内向けプロセスのマイルストーンが終了したか、継続中か、していないかを管理することが目的であって、どうすれば成功裏に終了し、次のプロセスに移れるかを支援する仕組みにはなってはいません。
この考えは、ホワイトボードに社内向けプロセスのスケジュール表を列記して磁石がついたプラスチック版を貼り付ける営業工程管理表と寸分違っていないです。
若い営業担当者は、土地の調査をしましょうと積極的に話を持ちかけますが、顧客の立場では「お宅に決めていないのになぜ土地の調査をしなければならないの」と拒否反応を示して、消去法で消されてしまうのが落ちです。
最近では土地の調査前に「顧客とリレーションシップ構築」という新しい社内向けプロセス・マイルストーンを打ち立てているSFAを見ることがありますが、これは社内向け営業プロセスの定義が明確になされていない結果であって、営業部が混乱するだけです。
社内向け営業プロセスとは、企業にとって必ず通過しなければならないプロセスと定義しなければならないのです。ハウスメーカーの社内向け営業プロセスは、前号で記したとおり土地の調査、聞き取り調査(ヒアリング)、社内プロジェクトの立ち上げ、建築図面の検討と承諾、設備の検討と決定、内装の検討と決定、見積書提出、契約です。
もちろん実際には社内向け営業プロセスは、行ったり来たりします。図面が決まっても後から修正が加わることもありますし、設備が決まったあとから、こちらのキッチンに変更してくださいと建て主から依頼があることも普通にあります。予算が合わなくて元から図面を書き直しということもあります。そこでプロセス進ちょくを補完するために、土地はあるか、予算はいくらか、建てる時期は決まっているかの確認、相続問題の確認、税金問題の確認、資金計画の確認などが各プロセスに付随しているわけです。
この発想は、ホワイトボードの営業工程スケジュール表から生まれていますから、SFAでも、営業の誰々は土地の調査プロセスから先に進まない。あいつは営業力が無いと評価するだけの仕組みになっています。つまり土地の調査に入る前に失注しましたと営業担当者の報告で、営業担当者の名前と顧客名を記入したプラスチック板は、土地の調査と名がついたプロセスから垂直直下して失注のセルに移動されます。これが既存SFAの実情です。
一方、SFAにおける顧客戦略では、社内向け営業プロセスを成功裏に進ちょくさせるためのプロセスを最重要視します。そのプロセスこそが顧客対話なのです。
顧客戦略では、土地の調査を実現するためには顧客とどのような対話を行えばよいかを定義し、システムに設定し、可視化することになります。
土地を調査する、つまり所有者の了承のもとに、用途地域を調べ、近隣の関係や日照を調べるだけではなく、建てる場所を想像し、地盤調査のために機械を持ち込み、どのような基礎が必要かを調査する土地の調査を行って、それでは次にヒアリングをして家族構成を聞き、将来の家族構成、二世帯住宅なのか、それも完全分離型二世帯住宅か、部分供給型なのか、完全共有二世帯住宅なのかを聞いて、間取りの希望、外観の希望、屋根の形などを決めていくヒアリングに進めるためには、社内向けの営業プロセスを推し進めるだけで実現できるはずが無いのです。
あるハウスメーカーが5万円で土地の調査と家のラフデザインをしますとキャンペーンを張ったことがありましたが、結果は大失敗でした。
ラフデザインがパソコンソフトを使って描いたアイディレベルのものでしたので、顧客はこれを見てこんな家はダメだと頭から否定しキャンセルしました。土地の地盤調査は、スウェーデン方式と呼ばれるものですが、数字が入っているだけのもので素人から見れば何ら意味が分からないものでした。しかも建物や土地の登記簿謄本を取って提出資料に貼り付けていましたから、勝手にこんなことを調べてと不快なものでした。
土地の調査をしないと基礎の形状を決定することが出来ません。だからハウスメーカーは最初に土地の調査プロセスを持ってきているのですが、顧客対話が無く、お宅に決めたというプロセスを待たずして土地を調べましょうとここに集中した売込みをかけてくるので顧客は引いてしまうというパターンを繰り返しているわけです。
前例のように5万円を支払っていれば、メーカーに対して顧客の心情にはいわゆる借りはないわけですから、「お宅に決めていないよ。5万円支払っているんだろう。ヒアリングなんて受けないよ」と、こうなってしまうわけです。そこで大失敗となったわけです。
社内の営業プロセスを決定しSFAに搭載しても、プロセスが進むわけではなく、いろいろな手を尽くしてもこの事例のように簡単にプロセスは進まないのです。
次につながる、最終的には契約にまでつながるプロセスを進ちょくさせる手法が、顧客対話です。顧客対話は営業活動ではないですかと聞かれるのですが、似て非なるものといえます。営業活動は販売を目的とした売込みの活動です。顧客対話は、顧客と情と理の関係を深めて顧客の購入
プロセスを確認する活動です。それによって社内向け営業プロセスをスムーズに、成功裏に次のステップへ進めることを実現する活動です。
営業活動の成果は最大で見積を提出するところまでです。最小ではプロセスの第一マイルストーンで敗退してしまいます。一方、顧客対話の成果は最大ではLTVの実現です。最小の成果は契約です。契約後のケアを含めれば繰り返し購入いただけることが成果になります。
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