【2009.05.22配信】
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ブレアコンサルティングの服部です。
時代が大きく動いています。企業はどこに進むのかとする課題が議論されていますが、間違いなくカスタマープリンシプル活動に進んでいると確信できます。
今日はその証明とも言える明治安田生命に見るカスタマープリンシプル活動の話をします。
CRMもSFAもこれからはカスタマープリンシプル活動にとって代わって行きます。
顧客と関係性を通じて顧客の価値を発見して、顧客の価値を実現できる、したがって企業の価値も実現できる持続した関係を実現するCRM・SFAに変わっていきます。
とって代われないCRMやSFAは、やがて消えていくと確信しています。時代変化に適合する新経営パラダイムを実現できるのはカスタマープリンシプルだけです。
カスタマープリンシプル協議会のご入会をお薦めいたします。
カスタマープリンシプル協議会は、http://cpajp.org です。
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■CSRとカスタマープリンシプルを連動した明治安田生命■
明治安田生命では顧客に対する根本的な方針をCSR(企業の社会的責任)の観点から捉えてCSR経営宣言として次のように公表しています。
「当社は、企業の社会的責任(CSR)とは、社会からの負託、果たすべき役割を正しく認識し、それに応えようとする企業活動であると考えます。そして、その活動を通じ、お客さま・従業員・地域社会などの幅広いステークホルダー(関係者)から信頼と共感を得ることが、社会とともに企業が持続的に発展していくために、必要不可欠であると考えます。
当社は、グループ各社と協働して、ステークホルダー(関係者)とのコミュニケーションを通じ、時々変化する社会からの負託、果たすべき役割を的確に捉え、それに応えるべく生命保険業の公共性や次世代への責任を踏まえた経済・社会・環境活動を行なうとともに、その活動を適切に開示していきます」
CSR経営宣言
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一、お客さまとの絆
私たちは、意識・行動のすべてを「お客さまを大切にする」ことに集約し、確かな安心と豊かさをお届けすべく、常に謙虚さを忘れず、誠実に行動します。
二、ガバナンス~お客さまとの絆のために~
私たちは、公正・公平なサービスを提供するため、透明性の高い適切な経営に励み、健全な成長をめざします。
三、コンプライアンス~お客さまとの絆のために~
私たちは、お客さまに信頼いただけるよう、法令遵守はもとより企業倫理や良識に基づき、高い倫理観をもって行動します。
四、お客さまが暮らす社会・環境との絆
私たちは、お客さまとともに安心して豊かに暮らせる「社会」や「環境」を育み、守っていけるよう、社会貢献や環境保全活動に積極的に取り組みます。
五、従業員との絆
私たちは、意欲や能力が最大限発揮できる働きがいのある職場作りに努め、お客さまの更なる満足のために、使命感と情熱を忘れず、個々人の成長を重視します。
CSR経営宣言を行ったカスタマープリンシプル活動は次に二点に集約され、日経MJ2009年4月8日号に大きく取り上げられています。同紙によると次のカスタマープリンシプル活動として展開されています。
安心サービス活動
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明治安田生命はカスタマープリンシプルを単に宣言に留まらず、行動基準を作成し営業職員の行動を管制しカスタマープリンシプル活動を展開しています。
その一つが既存顧客のアフターケアです。保険業務は契約をしてしまうと保険商品の性質上、顧客接点がなくなるので、関係性が途切れて顧客離脱につながるケースが多いのです。
明治安田生命では顧客を大切にするという理念を行動基準にするために、既存顧客との対面接遇を5ポイント、郵便による接遇を2ポイントとしてポイント制度を作って目標を設定し定期的にチェックをする安心サービス活動制度を確立したのです。
営業職員一人当たりの平均的な既存顧客数は二〇〇人で、その場合には既存顧客と会うことで獲得できるポイント数を年間4000ポイントとしました。すべて対面接遇(5ポイント)とすると全顧客に年間4回会うことが達成目標となるわけです。
営業職員は上司に一日の活動報告をすると上司がポイントを付加するシステムです。
主な訪問シナリオは年末年始の挨拶、決算説明、住所変更の手続きなど業務プロセスに関係する必要業務の推進、関係を深めるもの、礼をつくすものなどに分けられています。
保険営業に限らず、できる営業担当者は必ず既存顧客のケアを充実させている。明治安田生命の取り組みは既存顧客から高く評価されて、次々と顧客を紹介していただいているようです。
社内検定制度
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さらに明治安田生命では、営業職員が顧客をケアするために訪問しても顧客との会話が弾まなければ意味がないことを承知して徹底的な教育制度を構築しています。
職場での定期的な研修は商品知識、法令遵守、マナー、顧客ケアのための知識、新契約の獲得に必要な知識、商品や販売の知識、これに面接ロールプレィイングが加わり入社2年目以内は3ヶ月や半年に一回。3年目からは1年に一回のテストがあって追試でも不合格であったら営業職員は解雇になります。
二つをクリアしたら
既存顧客との接遇回数による目標ポイント数、社内検定制度の試験をクリアすると固定給10万円を獲得し、営業職員の雇用を継続することになります。
明治安田生命はカスタマープリンシプル企業です。
顧客に対する方針を明確に確立し、行動基準にしてそれを具体的な行動にしています。その実現に向けて営業職員の評価制度と教育制度を確立し厳しく運営をしています。
顧客は保険金につながる件が発生しなくても、いつでも明治安田生命からケアをされ包まれていると感じ取っていることになります。この顧客との関係深化が顧客離脱をしない大きな原動力になっているわけです。そして新たな顧客を産んでいる。善循環をしているわけです。
明治安田生命の決断が光るところはもう一点あります。
今、日本中の訪問営業企業が陥っている過ち。それは訪問件数を増やせば受注率も比例して増えるとする考えを真っ向から否定して新たな戦略をとっていることです。
訪問件数を増やしても商談密度が低くなるだけで受注率が増えることは無いことを、大企業である生命保険会社が喝破し、良い顧客を育てていく方向に舵を切ったところが大英断なのです。
保険会社はどちらでも制度で運営されていくから組織はどうしても官僚的にならざるを得ないのですが、明治安田生命の決断は俊敏であって感嘆します。
訪問件数を増やすことによって商談の量を増やして契約量が増えたとしても、既存顧客をケアできていなければ顧客はいつでも顧客を止めていくわけです。
生命保険会社の決算書を読めば一目瞭然だが、保険金流入寮より、保険金流出量が上回っているのが実情なのです。
量を増やすばかりに質の悪い契約を取って、その上、既存顧客を無視して新規顧客の獲得にだけ血なまこになり、片方では既存顧客がボロボロと離脱していくことを放置しているよりも、顧客と関係を深めてよい商談をし、その後もきちりと顧客ケアをして関係をより深化させて、商品を心底理解いただいて、長期的な関係を持続させる方が新しい時代に即した経営方法であることはいうまでもありません。
実はもう一点大切なことができているのです。
いまの訪問営業企業は、訪問件数を母数として母数を拡大することで受注率を高めることを目的として「量の管理」をしているが、明治安田生命では「質の管理」をしている点が特異です。質の管理とはプロの育成を目指した管理のことです。
私はこの社内研修制度と顧客との関係深化力で磨かれた営業集団は、強力な営業集団になると確信します。
同社の社内検定制度でお分かりのように、営業職員としての質の向上に目標を置いてついて来られない人を排除しています。しかも一人の顧客と面談接遇を年四回平均と定め実行できない営業職員を排除しています。
営業職員に対しての、質の管理の厳しさは、量の管理以上に厳しいものがあります。これをやり抜いているところに明治安田生命のカスタマープリンシプル企業として顧客とともに歩む決心の深さを見て取ることができます。明治安田生命は、手堅い資金運用で知られていますが、そこにカスタマープリンシプル企業と成り得たことによって、今後50年を象る(かたどる)デフレスパイラル社会に生き残り、勝ち残ることができる生命保険会社として勝ち名乗りを上げているのです。
私は、明治安田生命の決断力と、対峙する厳しさに凛として胸襟を正す思いでおります。
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