【2009.10.02配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
顧客ターゲティングプロセスは訪問型営業でも店舗営業でも、新客を創造する、あるいは既存客を維持育成する手段として、顧客政策を担う入り口のプロセスです。なぜ重要かといえば、入り口が間違えてしまえば出口を間違えてしまうからです。
迷路と同じで入り口を間違えたら出口に出ることができませんが、これと同じで顧客ターゲティングは出口までつながる道筋を探す第一歩です。
小売流通業がCRMを導入して膨大なお金をつぎ込んで顧客政策を展開していますが、この成果がまったくでないのは、顧客ターゲティングと手法の選択が間違っているからです。
企業はRFM分析がどのようなものであるかの真実を知らないです。
RFMの状況を分析して、過去の一定期間の推移や、過去2期間の比較をすることであれば、分析ツールとしての役には立ちますが顧客を育成する、あるいはもっと買ってもらうとなるとほとんど役立ちません。役に立たないどころか顧客との関係を切断してしまう、マイナスの効果さえ生じる危険な分析方法であることを知らないのです。
だから小売流通業ではRFM分析がいまだに顧客政策の主流を占めています。私は10年前からRFM分析では顧客育成はできないことを叫び続けていましたが、実際にはRFM分析をいまだに展開している小売流通業が圧倒的に多いのです。
数年前に、あるパッケージメーカーに勤務していたという人から会って欲しいと連絡がありました。彼が元勤めていた会社ではRFM分析を大手流通業に勧めてたくさんの小売流通業向けCRMパッケージを販売してきたそうです。私がRFM分析では顧客育成はできないといろいろな機会で執筆を繰り返していましたから、それを読んで彼はかなり反発をしていたそうです。そんな彼が親しい顧客先である流通業に転職をしてCRM担当責任者になったそうです。今まで自分が勧めてきたRFM分析による顧客政策を展開し始めて、まったく成果が出ない。そこで試行錯誤を繰り返したそうですが、成果は出ない。会社はCRMのプロを採用してこれで売上が上がると見込んだようですが成果が出ないので周りの目が変わってきたそうです。そこで彼は私の著書「売れる仕組み」を読んだら、RFM分析が売上アップにならない理由が心にずしんと響いてきたそうです。そこでどうしても私に会いたくなって連絡をしたということです。
彼は私にこういいました。
「RFM分析を中心としたCRMパッケージが主力製品というか、それ以外に売るものはありませんから、我々はあれを売らないと自分たちが生きていけなかったのです。正直言って服部さんの本を読んで当時は相当に反発しこういう意見は営業妨害だと思いましたが、自分が実際に流通業に入ってやってみると服部さんの言うとおりでした」
企業は顧客の誰と、どのような関係を、どのように構築して、どのような関係を持続・深化させるべきかを考えてプロセスにしなければならないのですが、企業は顧客マーケティングのプロではありませんし、ましてや普段は顧客政策について考えを張り巡らしていませんから分からないのが普通です。
売るほうもIT会社ですから顧客マーケティングのことは分からないことが普通です。
RFM分析でLTVを実現するのです!などと平気な顔をしていえるのは、RFMとは何か、LTVとは何かを自らの中で議論し定義していないからです。
SFAでも同じことです。社内都合で構築した自社の価値実現プロセスを可視化することに専念し、顧客との関係をまったく無視したSFAが大半ですから、顧客ターゲティングは議論するものの実にあいまいな定義で終わっています。
少なくとも「企業は顧客の誰とどのような関係を、どのように構築して、どのような関係・深化させるべきかを考えてのプロセス」を実現するSFAにはなっていないのです。
それでも企業が問題視しなかったのは、問題が分からなかったことばかりではなく、CRMやSFAに頼ろうとする時代背景ではなかったこともその一つです。
しかし今は時代が変わりました。顧客政策を企業に導入しないとやっていけないと企業が真剣に考え始める厳しい時代になりました。
顧客ターゲティングは顧客政策の入り口だといいましたが、「顧客の誰」と「どのような関係を」、「どのように構築して」「どのような関係を持続・深化させるか」の入り口である、「顧客の誰」を定めることこそが顧客ターゲティングの目的なのです。
定めるとは、決定したら焦点を当て続けることの意味です。狙いを定めるという意味です。
振り返るとRFM分析では、「顧客の誰」を定めることができず、「どのような関係を」も定めることができず、「どのように構築して」をも定めることができず「どのような関係を持続・深化させるか」も実現できませんし実現しません。だから小売業全体では膨大な費用をつぎ込んでいると思いますが、成果が出るはずはないのです。プロセスの結果が成果ですから、一連のプロセスが誤っているために結果が出ないように動いているということです。
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