【2010.07.23配信】
暑中お見舞い申し上げます。
ブレアコンサルティングの服部です。
本メールマガジンで、いままでiPadと固有名詞を使用しておりましたが、NECも発売、シャープも発売と、分かっているだけで21社が発売します。そこでiPadという名称は使わないで一般用語を使用しようと思いますが、現在は電子書籍、マルチメディア端末、タブレット端末といくつかの用語が乱れ飛んでいて、まさにWeb創成期のような状況で、混沌としている状態です。
私は用語が固まって定着するまで、以降タブレット端末という用語を使うことに致します。
先回カスタマープリンシプル協議会(CPA)でiPadの活用方法を巡って2時間半の話を繰り広げました。そのうち私が1.5時間も話をしてしまったのですが、勉強会後に秀逸な感想メールが私に届きました。下記【 】内は、その荒木さんからのメールです。
【理の部分では、営業員が自分の脳の外側に、もうひとつ別な脳を持つように情報をクラウド化して、いつでもどこでも、即座にiPad上に引っ張り出せる。
また、提案、プレゼンテーションについては顧客に聞いてもらうというこれまでの営業スタイルからiPadを通じてコミュニケーションを図りながら、営業員とお客様が一緒になって対話を進めるというスタイルへとより変化していく。
もっと言えば、お客様がこれまでの受身の姿勢から、お客様が主人公となるような感覚をiPadを使うことで、実現しやすくなるのではないかと思いました。
もちろん、そこにはプロセスがあり、プロセス間のプロセスがあり、その時々のお客様の心理があり、それを進捗させるためのシナリオやツールがありますが、お客様が主人公になって、自ら階段を登るようなものが重要なのかなとも思いました。】
まるで囲碁か将棋をするように、タブレット端末を真ん中において営業員と顧客とが対話を続けながら相互関係を深めて、顧客が抱えている課題を見つけて、即座にソリューションを引き出し、顧客に提案して、顧客の「なるほど、納得した、理解した」という感情を落とし込んで、プロセスを先に進めることができる。この実現がタブレット端末の価値です。
メールマガジンの読者から「最近はiPadの話が多いですね」と語りかけられることが増えていますが、私は「ようやくITがBREA理論実現に近づいてきたという思いで溢れているからでしょう」と答えています。
実際その通りなのです。拙著、「今後50年を生き抜く新・経営パラダイム」では、かなりのページを使って「顧客との対話」を章立てにして具体的に理論と実際を語っていますが、顧客対面時における顧客との対話がタブレット端末で実現できるのです。
そればかりではありません。理の関係を構築する理論や、顧客から課題を聞き出す理論が、タブレット端末で実現できるのです。また顧客と非接触時期の接点設計がこれまで紙媒体を使って数多くの成功事例を実現していた手法そのままなのです。
言い換えればBREA理論の中核となす「顧客との対話理論」がタブレット端末で一気に実現できるようになったのです。もちろんBREA理論にはほかにもたくさんの枝葉になる理論で構築されています。BREA理論の全体像がタブレット端末で実現するわけではありませんが訪問営業でも、集客営業でも(店舗営業でも)、顧客接点設計とリレーションシップ計画の多くがタブレット端末で実現できるのです。
私はタブレット端末が営業を変えていくと思います。けれどもしっかりと設計をしなければ、ナレッジデータベースの後追いで、どのデータをどこにシーンで使ってよいか分からず、そのデータが生きたものが古いものかも識別できず、しまいには宝の持ち腐れになっていくことも十分考えることができます。
どのようにすれば営業を変えることができるのか。もはやカタログをいくら作っても営業支援にならない現状下、顧客接点の設計(顧客接触時接点と、顧客非接触時設計)、リレーションシップ計画の設計をタブレット端末と、紙媒体を使って実現することで顧客の心を動かし、結果としてプロセスが進捗する画期的な、営業員が待ち望んだ営業支援ツールが完成するのです。
これがいま本メールマガジンでタブレット端末について記述が増えている背景です。
これからが本題です。
さらに深く考えていくとタブレット端末の行き着く先は「顧客誘導デバイス」です。正確には「顧客誘導デバイスとして活用できる」が、正しい表現方法です。デバイスは単なる箱ですから。
顧客誘導の定義は、「顧客が商品の購入に当たって、求めている価値を発見し整理して正しく決断できるようにお客様と一緒に取り組み、顧客が求める価値を実現すること」です。
私は最近の企業活動を見ていると、競争が激化する現況下、市場シェア拡大戦略を展開するために、その打開策を商品に求め過ぎて、逆にコモディティ化を促進するように思えてなりません。商品に価値を求めることの行き詰まり現象がすでに既定化されていることを喝破しなければならないと思います。
ところが顧客価値実現を求めていくと打開策は無限に広がり、打開策は商品価値だけではなく顧客との関係性から生じる価値に存在し、商品の価値は関係性が深化することで付随的に高まっていくことに気付くはずです。
このことに気付いた企業が、車の両輪関係である、商品価値と関係性価値の双方を実現でき、初めて競争優位に立つことができるのです。
この実現は顧客誘導以外にありません。メーカーの研究所がこれまでにない画期的な技術を開発し、商品化したとしても、その価値を顧客から真に納得していただかなければ価値は存在しないに等しいです。一方、それほどでもない商品の価値を真に顧客に納得いただいたら、商品はメーカーが感じる価値以上に力を発揮して売れて行きます。メーカーの研究所が100の価値を見出した商品でも、顧客が10の価値しか認知しなければその商品は10の価値しかないものと同等の価値能力しか存在しません。しかし残りの90の未認知価値を関係性の結果として認知できたときに始めて商品の価値は100が認知価値となるのです。
そのときに顧客は初めて企業の代弁者となって商品価値のすばらしさを他人に向かって語り始めます。
この実現は製品カタログや会社案内を使ってもできません。ましてやマスマーケティングではなおさらです。
できるのはタブレット端末や紙媒体による顧客誘導なのです。
そして顧客誘導はテクニックではありません。営業活動の根幹をなすもっと本質的なものです。このテーマはこれからの企業拡大戦略に重要なことですので深掘りするために次回に続きます。
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