【2010.11.19配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
昨日、井上幸喜宝塚大学洵教授を迎えて、RPG(ロールプレイングゲーム)設計理論についての勉強会があり、大変盛況でした。私は今回2回目の聴講になります。2回聴くと1回目では分からなかったことに気が付き、一層理解を深めることができます。
そこで今日はRPG設計理論を聴いての確信をテーマに致します。
結論を先に言いますとRPG設計理論はBREA理論でした。まったく同一のものです。
3つに絞って理由を書きます。
1.目的を実現するプロセスをロジカル思考で組み立てていること
RPGゲームでは、大ボスを倒すことが目的です。RPG設計時に大ボスを倒すまでのプロセス、シナリオを詳細に設計し、時に平面では足りず立体構造で設計図を作っています。
ビジネスでは注文をいただき、顧客との関係を持続することが営業活動の目的です。
BREA理論は訪問営業では新規開発から案件を発掘するまでのプロセス、注文をいただくまでのプロセス、顧客をケアするプロセスまですべてのプロセスに目的を与えて、ロジカル思考で組み立てています。店舗やネット、通販事業も同様です。
ここが一致する最大点ですべての成果はここから生じます。
2.グローバルプロセスとローカルプロセスがあること
RPG設計理論では、目的達成のために主人公が絶対に通過しなければならない重要プロセスを定め、これをグローバルプロセス(ゲーム業界ではグローバルフラグ)と呼びます。
しかしグローバルプロセスだけを進めれば目的を達成するからそれでよしとするものではありません。
ゲームの世界では大ボスを倒すことが目的です。ゲームが始まったらいきなり大ボスがでてきて、主人公がすぐに大ボスを倒して、それでゲーム終了では、そんなゲームを誰も見向きもしないでしょう。そこでストーリーをおもしろく楽しく、豊かにするためにローカルプロセス(ゲーム業界ではローカルフラグ)を何本も立ち上げます。
何をしたらよいのか分からない状態でゲームはスタートし、主人公は果てしないところにいる大ボスを倒すために果てしない旅が始まります。繰り返しますが、果てしないプロセスのなかで絶対通過しなければ目的に達しないプロセスをグローバルプロセスというのです。
BREA理論も同様です。企業が必ず通過しなければならないプロセスを進捗することが目的を達成するために必要と考え、企業の価値実現プロセスをメインに置きます(グローバルプロセス)。
しかし企業の価値実現プロセスを追いかけても目的は達成しません。企業の価値実現のために営業活動が存在しているのではないからです。顧客の価値を実現することで付随して営業員の活動が報われ、結果として売り手企業が求める価値が実現するのです。
言い方を変えるならば、製品を売ることが顧客の価値になるように顧客を納得させる活動が必要であるということです。
そこで情の関係プロセスと理の関係プロセス、ASKプロセスなど複数のローカルプロセスを立ち上げます。このように目的達成のためのプロセスを多面的に捉え、グローバルプロセスを進めるためにたくさんのローカルプロセスを配置することで、確実に目的を達成するように、コースを外れてしまった場合には修正できるようにロジカルに配置しています。
複数のプロセスを用意し、目的を達成するプロセス全体をロジカルに組み立てるからプロセスは整理整理されて、営業活動を活き活きと導き出します。
3.マーケティングコントロールセンターがあること
RPGでは、目的を達成するためのプロセスをロジカル思考で組み立てているから、いま主人公はどこのプロセスにいて次にどこのプロセスをクリアしなければならないかが可視化できます。例えばドラクエをやっていますとシステム的に、どのプロセスの途中にいて、これから何をしなければならないか、どのプロセスを終了し、プロセスに向かわなければいけないかを認識し主人公に教えます。ゲーム業界の言葉では、上記のプロセスをフラグと置き換えてください。「いまどのフラグをクリアするかの途中にいて、どうすればフラグをクリアするかを誘導し、そのフラグが終わったら次のどのフラグに向かわなければならないかを誘導します」と言います。
誘導を無視しているとシステム的にいまの居場所を確認し、これからやることを主人公に教えます。こんな風です。「兄貴!いつまでこんなところでぐずぐずしているんですか。商人が南のパース港へ向かえと言っていましたぜ」
これはBREA理論でいうマーケティングコントロールセンター機能です。
マーケティングコントロールセンターは、BREA理論が持つ重要機能の一つで、いま営業員がグローバルプロセス、ローカルプロセスのどこにいて、目的達成のために次に何をしなければいけないか次の一手を指示します。それだけでなく顧客との関係度がどのように深化しているか、顧客の課題を聴くためのASKがどこまで進んでいるか、それに対する顧客の回答がどこまで入手しているか、進捗度合いを表示します。
これらは契約する目的のために組み立てたプロセスに添って営業員を誘導しているわけです。
一方、顧客を誘導するのがBREA理論の客観誘導理論です。目的を実現するプロセスを設定した以上、プロセスを進めることは目的に向かって進んでいくことになります。プロセスは売り手のプロセスだけではなく顧客側にも存在します。ですから顧客の課題解決を目的とする顧客購入プロセスを顧客の立場に沿って進めることが、顧客誘導の本質です。
分かりやすく言うと岡山行きの切符を持って東京駅コンコースで迷っている人に、あそこに見える改札口から新幹線ホームに入って15番線に上がって15時12分発光34号岡山行きに乗車くださいというのが顧客誘導ということです。顧客は誘導されたことで自分の目的地とした岡山へ到達することができます。
以上、3点に絞ってRPG設計理論はBREA理論と同一であることの理由を書きました。
もうお気付きのことと思いますが、BREA理論とRPG設計理論の根本に流れるものは「目的を実現するためのプロセスをロジカル思考で組み立てている」ことです。目的の考え方、プロセスの考え方、ロジカル思考の考え方、グローバルプロセスを実現するためのローカルプロセスの考え方、顧客誘導の仕方などに、「顧客」を軸にした数多い経験とそこから生まれた現場からの知恵で磨かれたものがBREA理論の本質であり特質であるということです。
BREA理論がIT化できるのも、マーケティングコントロールができるのも、顧客を誘導できるのも、目的を実現するためのプロセスをロジカル思考で組み立てているからです。
私がさらに磨かなければならないことは現場のいまと、目的を実現するためのプロセスをロジカル思考で組み立てた仕組みとの違和感を無くす着地点の作り方だと思っております。
ゲームと現実は異なります。しかし、理論と実際は同じ軸に存在していなければなりません。
同じ軸に有らしめる考え方とは突き詰めると「目的を達成するプロセス」を「ロジカル思考で組み立てる」ところに落ち着きます。
日本の営業が一番不足しているところは、実はここです。目的を達成するプロセスを真剣に考えたこともなく、顧客の求める価値をロジカルに考えたこともないからです。それは毎月の数字を追いかける悪しき営業習慣から脱却できないところから生まれています。企業は数字を追いかけるのではなく、顧客の価値を実現するためのプロセスを実現しないといつまで経っても毎月の売上数字を求め、今月の数字を実現できそうな顧客だけを追いかけ、それ以外の顧客を払いのける悪しき習慣を直すこともできません。
この話は次の機会にしましょう。
昨日のRPG理論を聴いて確信したことを書きました。
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