外国テレビ局のトップキャスターが日本に入って取材している。キャスターは被災者の姿に衝撃を受けている。その報告が各国でなされ、それを見ている駐在日本人が日本に報告を寄せている。
被災者の老婆は取材で話しかける中国人キャスターに「あなたも食べなさい」と配給されたおにぎりを差し出した。中国では絶対にあり得ないことと、このキャスターは衝撃を受けたと語っている。
6時間も並んで待った給水車の係りが、もうこれで今日はおしまいというと、水をもらえなかった人は何も言わずに静かに戻っていく。この姿を米国のキャスターは普通なら暴動が起きても不思議でないことと、被災者の静けさに衝撃を受けたと話している。
25年ほど前、原発反対運動があった。電気事情を考えると原発しか選択肢がなかった官僚と自民党政府は、強引に反対者を封じ込め、反対する知事を冤罪で逮捕してまで原発を進めた。それほど安全なら東京に原発を造れとジャーナリスト広瀬隆氏は、東京に原発をと本を書いた。
東京は地方によって支えられている。福島原発で造った電気は皆東京に送られている。
ある外国テレビ局のキャスターは被災者が微笑んでいること。けれども誰もが目に一杯の涙をためていることに、強烈な衝撃を受けたと報告している。
自己を抑えて抑えて、抑え抜いて生まれる微笑。けれども抑えられた苦悩は涙になって目に溢れている。これほどの高い文化度を持っている誠実な民族、このことは実際に災害地を訪ねて取材を続けている人々の手で語り継がれやがて世界から絶賛されるであろう。
私は長く弘前で仕事をしていたことがある。そこで弘前言葉の美しさ、母音がたくさんあることの驚き、人情を学んだ。その経験から東北の歴史を学び、東北は高い文化があることを知った。「涙をためた微笑」は、きっとカメラマンが撮影した一枚の画像と共に世界を駆け巡るであろう。雪が降り真冬の寒さに戻った被災地には暖が欲しい、水が欲しい、ミルクが欲しいと悲痛な叫びが届いている。
政府が福島原発からの避難地域にあって立ち入りを禁止した南相馬市の被災地では救援物資も届かない。運転手がいないのだ。