ヒト・モノ・カネ経営三要素で経営できたわけ
世界的な不況に翻弄されているにせよ、企業が翻弄されたまま漂っているのは、企業がいまだにヒト・モノ・カネの経営三要素のままでいるからです。ヒト・モノ・カネ経営は高度経済成長時代の経営モデルで、とうの昔に通用しなくなっているモデルです。商品が生活者にとって強いエネルギーをもっていた時代にはマスメディアに宣伝をすれば、顧客は競って商品を求めていました。企業にインフラが整備されていない時代でしたから、ヒトのがんばりで企業は支えられていました。資金があれば工場を拡大し、販路を広げて企業を拡大できました。高度成長時代の商品は生活を激変するようなモノが多かったですから、旺盛な消費欲に支えられて顧客政策を持たなくても、企業は十分に経営を拡大することができたのです。
経営に絶対必要な要素はヒトとモノとカネと、そして顧客です。顧客がいなければどれほどの経営準備をしても売上げは立ちません。高度経済成長時代は1955年から73年までの18年間と言われていますから、終焉して36年間も経過しているのですが、なぜヒト・モノ・カネ三要素経営が成立していたのかというと理由は二つあります。
大きな要因はヒトとモノとカネが企業にとってはコストであるとの気付きから企業がコスト削減経営に入り込んだこと。三要素を管理し削減することで利益を出す手法に専念したことです。この手法は間違ってはいませんが、顧客に目を向けることがなくなってしまったことでは損失はあると思います。
二つ目の要因は顧客戦略に目を向けてもどれ一つ経営要素としての顧客戦略にならなかったことが挙げられます。SFAはこれまで日報で報告していたことがIT化したものに過ぎませんし、到底顧客戦略になり得るではありませんでした。また、CRMはRFM分析など1930年代のアメリカ通販業界で創案した通販カタログを送らない顧客の発見方法、言い換えれば関係切断する顧客の発見方法がいまだに使用しているというありさまです。これでは経営四要素として顧客と係わり合いを深めて売上げを継続して構築していく手法にはなり得ません。
いまは「成熟・少子・超高齢社会」です。不況は必ず出口がありますが、不況の出口はデフレスパイラル社会の入り口に連結しています。デフレスパイラル社会とは、需要が螺旋階段を下り落ちるように逓減する社会のことです。日本は政府が2001年にデフレ宣言をしてからいまだに解除されていませんが、この不況を契機にして国民の節約は一気に広がりました。成熟し、少子化し、超高齢社会では消費が伸びる要素が見当たりません。企業は生き残りをかけた椅子とり競争に突入しているのです。
次は顧客要素を経営に加えることであることは、真剣に考えている企業人では分かっていることですが、一体企業はどのようにして顧客と絆を結んでいけばよいのでしょうか。果たして企業は顧客と絆を紡ぐことができるのでしょうか。この一点にこれからの経営の成否が掛かっているといって過言ではないのです。
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