これまではシステムさえ入れれば、それでCRMは導入されたと考えられていた。多くの企業が競ってCRMパッケージを導入した。どこどこの会社がCRMに数十億円の投資をしたなどという巷のうわさはいくつもあった。
しかしシステムを導入しただけではCRMは回らないと言うことが分かりだしてきた。けれどもシステムを販売した企業の多くはシステム屋さんであったから、回らないといってもどうすれば回るようになるのかの解を持たなかった。
それがCRM低迷の引き金となった。欧米のCRMパッケージベンダーの、最近の様子を聞くとM&Aの対象となって、あそこはどこに買われたという話ばかりである。
営業改革と言うからには売り上げが上がらなければ意味をなさないのであるが、それを従来のデータベースマーケティングに頼った。データベースマーケティングはデータベースで分析をして、顧客を抽出するまでのことであるがそこにマーケティングという言葉がついたためにDMやメールをだすことが付随した。
データベースでお客を抽出するための分析は一定期間における定点分析である。これをタイムスライス分析とも言う。例えれば富士山に登頂した30名の人が記念撮影をした。撮影後30分休んで下山し、翌日はそれぞれが各自の職場へ出勤した。
ある人はデパートに勤務し、買い付けでフランスへ飛んだ。ある人は学校の教師として教鞭を振るっていた。
ところがデータベースではこの30名は富士山の頂上にいる人として定点観測されている。
現実には今は誰一人富士山の頂上にいやしない。顧客は動くのである。けれどもデータは定点観測だからRFMの5・5・5にいる人として扱ってDMを出し続ける。次に富士山の頂上を定点観測すると別の人が写っている。すると今度はこの新しく写った人にだけDMを出して追い続ける。これがデータベースマーケティングの現実である。
これでは売り上げが伸びるわけがないのである。儲かるのはただ一社。郵政公社だけである。
(今日の本題)
それではどうすれば売り上げが伸びるのか。
まずは顧客戦略を駆使して何をどうしたいのかを明確に定めることである。
BREA理論では、このプロセスを顧客育成モデル構築プロセスと名付けている。顧客をどのように育成して行くか該当企業に合わせて顧客育成方法をモデル化することである。
この作業はコンサルティング作業である。システムが導入されれば解決できるテーマではない。企業に合わせて、顧客育成モデルを構築していくアナログ的な作業である。顧客育成とは、顧客を維持し育成していくということである。育成するとは顧客がアップセルクロスセルを継続していただく関係に育成していくことであり、維持とは離脱をさせないように関係を構築していくことである。
顧客をどのように育成するかの定義、それは業態や業種に合わせて異なるのであるが、例えば自動車販売で考えると、次期購入も当社製品を当社から購入いただくようにして、次も実際にその通りになっていただくことであり、百貨店婦人靴売場で例えれば、ブーツ、ハイヒール、ローヒール、コンフォートなど靴の種類を問わず、購入するときは当売場から継続して購入いただくことである。
損害保険業であれば、次の契約も当社の保険契約を継続することであり、自動車保険だけではなく傷害保険も火災保険も、また保険の種類によっては本人だけではなく家族も同様に契約していただくことである。
旅行業であれば、顧客が旅行に行くときは、必ず当社の旅行に参加する関係を築き上げることである。顧客育成とはこのようなことを指している。
さらに顧客育成モデルには、新規顧客の獲得も含まれる。新規顧客をどこから獲得するのか。そこを含めてモデル化することである。
顧客育成モデルはコンサルティングで創り上げるものであるが、同時にシステムに目標として何らかの形で搭載できるようになればベターである。何らかの形としたのは、同じ形でシステムにそのままの形では搭載することはできないからである。顧客育成モデルを構築し、実現するには顧客育成シナリオを作成することと、顧客育成モデルを実現するためのリレーションシップ力が必要になるからである。したがって顧客育成モデルをモデル化し目標とするには、成果を評価する指標と合い照らし合って比較できるような成果目標指標に搭載することが必要で、それは顧客育成モデルとは相似形にはならない。そこがシステムにそのままの形で搭載することは出来ないと言った所以である。
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