自動車はデザインやエンジン性能に官能的な側面を持っているから官能を刺激するような新車が生まれると爆発的に売れることがある。かつてはいかに美しく早いクルマかを競う時代があった。そのようなクルマが誕生するとマス広告だけで顧客が押し寄せてきた。
これまで各メーカーは必ずヒット製品を持っていた。こうしたクルマが誕生するとコストは下がり利益を生むからメーカーは、売れるクルマ、ヒットするクルマづくりを目指してきた。
けれどもデザインはCD値という空力性能の影響を受けて没個性化し、エンジンもコンピュータ制御無しには語れなくなってきた。数値化できない官能性能は世界的にも一部の高級車にのみ引き継がれ、いわゆる大衆車、大衆高級車は数値的側面を強調化した競争になっている。
そこでクルマは似たり寄ったりになり、次にどの車種を購入しようと大差ない状況に陥っている。
高齢化社会を迎えると次の新車購入時期は大幅に後回しになる。いや新車を購入しないようになるかもしれない可能性を秘めている。
保険会社で交通事故被害者と交渉する業務をしている人の話しでは、最近は高齢者が運転するクルマでの交通事故が大変な勢いで増えているそうである。
それも青信号で横断歩道に歩行者が歩いているのに、赤信号を識別せずかつ横断歩道を歩いている人を識別せず、突っ込んで負傷者を出すような事故が増えているそうである。
しかも恐ろしいのは、こうした高齢者は自分の過失を理解できず、自分は何一つ落ち度がないのになぜこんな大きな事故が起きたのだかわからないと主張するのだそうだ。
このことは、クルマは生涯のものではなく、ある一定の年齢になれば顧客は乗らなくなるものであることを証明している。
自動車販売会社は既存顧客を育成し、買い換えるときには自社のクルマを選択してもらうことと、今のうちに次世代の顧客を育成しなければならないことを如実に物語っている。
販売の現場は毎月、今月のノルマを達成することに追い掛け回されているが、本社スタッフはリピート率の向上と次世代顧客の開発、すなわち未来への投資に専念するべきなのである。
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