損害保険会社(損保)は、かつては契約解除客よりも新規加入者のほうが多く顧客は増加していった。
そして営業活動は、一般消費者に向けては代理店に依存するケースであった。
そのため大手損保ではきわめて官僚的な組織構造が出来上がりマーケティング力はなくともゆるぎない収益構造ができあがっていた。
しかし今は、様子が様変わりしている。
バブル期に過剰投資をしたつけが消えやらぬうちに外資がダイレクト販売を武器にした積極的な参加で、価格競争ならぬ保険料割引競争に突入した。
保険料はうちがこれだけお得。万が一のサービスはこれだけよい。しかもロードサービス付き・・・
こうしたPRは、日常に目にするところであったが
最近、割引競争に底が見えてきたと新聞で報道されるようになった。
各社が価格競争の愚を気づいてきた結果であろう。
しかし、最大のネックは損害保険に加入する人より、脱退する顧客数が増大してきたことのよる収益減である。
これまで体験したことのないこの現象に対して各社とも打つ手はない。
いや打つ手はある。若手のマーケッターは顧客維持育成に力を入れるべきだと社内で声を高めている。
けれども決定する役員クラスが成功体験から脱却できていない。
「そんなことより新規加入者を増やせ」
「おれは新規加入者を増やすことによってこの会社を大きくしていったのだ」
「代理店を甘やかしているんじゃないか。腰は低くしても厳しく管理しなければいけない」
その代理店も高齢化が進んでいる。
損保の顧客育成の成果は希望的に言えば三点。少なくとも二点ある。
一点は、今契約している損害保険の継続を続けていただくこと。
二点は、今契約している保険以外の未加入保険に加盟していただきたいこと。
三点は、家族、親戚など新たな顧客を紹介して欲しいこと。
これが実現できれば損保会社は次の活力が生まれてくる。
キャッシュフローは好転し、収益体質に代わっていく。
損保はすぐにこの取り組みをするべきだが、官僚的な組織がこの取り組みを阻害している。
保険代理店に聞くと、優秀な代理店は顧客維持育成が大変上手である。
顧客創造(新規加入者・・・他の損保保険を自社に切り替える)の獲得もよくできている。しかしこれらはすべて個人の暗黙知となっている。
私が知っている優秀な保険代理店の青年経営者は、リレーションシップの重要性とむずかしさを語っている。
意味なく顧客に電話をすると、「保険屋から電話なんていうので驚いたじゃないか。
意味もなく電話をしないで欲しい」と怒られてしまうのです。
したがって手紙やハガキを使うことになるのですが、ここで勝負なんです。いかに感動を与えることができるか、ここに掛かっているのです。
感動を与えるDMとは何なのか、それを次号で語ろう。
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