■第五期 顧客データベース作成期
BtoC、BtoBtoC企業を中心にしてCRM導入の動きが生じたが、適切なCRMパッケージがなかったことや、顧客データが分散していてしかもCRMに適した情報項目を取得していない企業が多かったところから、顧客データベースを作成する、あるいは各所に散り散りになっている顧客データを統合しようとする動きが強まった。顧客データベースを統合し、CRMができる項目を取得して一元管理をしていこうという動きである。
多くの企業がこの流れに乗って顧客データベースを作った。
■第六期 SFAによる見える化
第四期のSFAと本質的には何一つ変わっていない。行っていることは営業マンのプロセス管理であり行動管理、時間管理である。プロセスの見える化というキャッチフレーズがついたことと、SFAの投資価格が第四期より小さかったことでSFAは新たに動き始めている。プロセスを数値化すれば可視化できる。しかし可視化してからどうするのかという話題がユーザーの方から生じてきている。ITベンダーは販売の効率化、販売生産性の向上を謳っているが、現実はIP電話を導入し、本当に顧客へ電話をかけたかログ分析をして確認するなど行動管理や時間管理をより厳しく管理する方向へシフトして提案しているのが実情である。一方こうした管理方法では売上げは上がらず営業マンのやる気を維持できないことも分かってきだしている。
第六期はやがて崩れ去っていく。
■第七期 データ分析(ビジネスインテリジェンス)による分かる化
第五期で顧客データベースを構築した企業が次に手がけたのはデータ分析である。
これまでのCRMの歴史の中で、BtoC企業向けCRMは話題になっていない。これという適切なパッケージがなかったことに起因している。
多くのCRMパッケージは顧客との接点部分にだけ注力をしていて、顧客データベースを使った顧客維持育成、顧客創造などのマーケティングが出来上がっていなかった。
分析をして絞り込んで顧客を抽出しメールを送付するのですとしか説明はされなかった。
そこで顧客データベースを構築し、一元管理ができるようになっても次に何をするのかが分からなかった。ITベンダーやSIerはデータ分析することを勧めた。
分析の分野はITが進化して、BI(ビジネスインテリジェンス)分野が広がりを見せていた。そこで顧客データベースを構築した企業にBIを導入する動きが強まった。もちろんITベンダーやSIerの提案によるものが多い。
いまは、CRM第六期および第七期である。SFA系は見える化、B2C系は分かる化を目指している。しかしこの期も時間の問題で消え去り、次の期に進む。
見える化、分かる化にするプロセスと売上げを上げるプロセスは別個のものなのである。
近未来予測
■第八期-1 見える化SFA→契約率が向上するSFAへ進化する。
プロセスを可視化できたことは大きな前進として受け止めてよいが、過題はシステム導入によって可視化できたプロセスをどのように契約率向上につないでいくかである。
現状では営業マンの業務内容や行動時間を管理して生産性向上、効率化を追求することを売りにしていても、第四期に導入し、失敗に対する学習を行った企業が導入したわけではなく、実質は価格が下がった分だけ導入する裾野が広がっただけで、いまSFAを導入している企業も第四期SFAと同じ車輪の轍を踏むことは十分に予測できることである。
実際、第四期でSFAを導入し、営業マンは記載しない、記載してもその価値が活用できないことを体験した企業は、SFAが必要なことは認めてもITベンダーの提案やパッケージの機能を信用しないでいる。
また、第六期で導入した企業が使用することを中止したという情報が散見しているところから、契約率向上を実現するSFAの登場で、一気にそちらへシフトする可能性が高い。
第八期の契約率が向上するSFAへ移行する上で、成功する要因は一つ。それは営業マンが興味を持って積極的にSFAに取り組めるようなシステムを作るかである。
この項目を記入してくれれば契約率が成功するのだということだけではなく、営業マンが積極的に興味を抱いてSFAに記載するような、記載することが楽しみになるようなSFAでなければやはり成功しないということである。
■第八期-2 分かる化顧客データベース→売上げが向上するCRAへ進化する
経営の意思決定としてのレポーティングを目的とした分析と、CRM観点から売上げを伸ばすこととは目的も手法も違う。
顧客データを一元化し、分析をしている企業では次のようなやり取りがなされている。
「いろいろなことが分かることは理解した。ところで売上げはいつ上がるのだ。CRMは売上げを伸ばすために導入したのではなかったのか」
営業プロセスを可視化できた企業では、次のような議論がなされている。
「営業マンの行動や時間管理をすることは分かった。こんなことやって売上げは伸びるのか。契約は増えていくのか。そこが少しも見えん」
プロセスを管理するCRM(Customer Relationship Management)は売上げを伸ばすような仕組みではない。
なぜ、CRMが売上げを伸ばす仕組みと思い違いしたのかは、ワントウワンマーケティングが掲げた顧客生涯価値の実現、顧客育成、顧客創造というキャッチーなキーワードをCRMが引き継いだからである。
CRMはあくまでも顧客との関係をシステム統合した概念論であってワントウワンマーケティングを引き継いだ概念ではない。CRMといっても実態はSFAであり、メール発信装置であり、顧客データ絞込み装置であり、コールセンターシステムであり、マイページ機能であったりする。売上げを上げる、契約率を高めるCRMであるならばCRMではなくCR-Automationとするべきである。
CR-AutomationとはCustomer Relationship Automationの意味である。
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