ソリューションとは課題解決という意味だ。多くのIT会社はソリューション部、ソリューション営業と、ソリューションという言葉を使っている。つまりITを使って企業の課題解決を図るというものである。しかしIT会社のソリューション営業は本当に企業が求める経営課題を解決することができるのか。ERPやSCMならシステムに載った機能をそのまま使うことによってソリューションをすることができても顧客を対象とするCRMの世界は別なのだ。
最近、当社はA社と私のメソッド導入契約を交わした。A社はなぜ他社を選ばず私のメソッドを選んだのか。答えは一つ。ソリューション力の違いである。当社のソリューション力が圧倒的に強かったからである。A社から見れば自社が解決しなければいけなかった「売上げを上げる仕組みをより強靭なものに再構築すること」が、我々のソリューション提案内容、つまりBREAシステムの導入とコンサルとで、実現できると結論を下したからである。
ここが大事なところなのだ。
IT会社はソリューションといいながら、多くの場合システム導入が終われば後はクライアント企業である御社でやってください。システムに問題があればいつでも駆けつけますというスタンスを取る。
例えば「見える化」は実現できましたね。ここまでは私たちでできましたが、見える化を元にどう営業を改善するかは御社の範疇ですというスタンスを取るわけだ。
住宅建築に例えれば、設計図面を書く作業も、家を建てることもすべて建築会社がやっている。この習慣が今も続いているが、いまは、設計事務所が活躍して重要な建築はすべて設計事務所が入っている。
振返ってわが業界を見るとIT会社が設計事務所の役割を果たしてきた訳だが、CRMに関して言えばそれは通用しなくなってきているのだ。ここを気づかないといけないのである。
IT業界はあくまでもITの専門家であってマーケティングの専門家ではない。マーケティングの専門家ではないものがマーケティングの仕組みをIT化することは本来できないはずである。
しかし長い習慣でIT会社が設計事務所の役割をしているから、これまでと同じようにIT会社はCRMの持つ機能に忠実にシステムインテグレーションを行う。
経理事務をIT化することは、IT会社でも簡単にできるが、CRMとなるとマーケティング戦略そのものであるから、顧客マーケティングの理論無しに設計はできないのが普通である。
一般にIT会社ができるといえば、絞り込んで抽出した顧客にメールを発信する機能とか、既存のCRMパッケージの持つ機能に忠実にトレースするとか、コールセンター機能を導入するということだけであって、マーケティングに直接関連したシステムを設計することはむずかしいのである。
一方、企業は課題を持ってそれを解決したいと考えている。課題解決こそがソリューションの意味なのだがIT会社ができる範囲はソリューションではなく、あくまでもシステムインテグレーションの範疇なのである。
ここを明確に認識しないとIT会社は、儲からないビジネスモデルを展開することになる。既にSI会社の多くは、利益がなく儲からないといっている。
Web2.0時代が台風のように押し寄せて来るとすれば、SI会社は一番先に影響を受けてしまう。
なぜか、SI会社が真のソリューションをできるなら、Web2.0時代が到来しようとまったく影響は受けないのであってソリューションができないのにソリューションと言っていることから影響を受けるのである。
ソリューション力とは改革能力である。見える化が実現できてもソリューションとは言わない。物事を数値化し分類すれば見える化が実現するのは当たり前なのである。
自社はシステムインテグレーションを行うSI会社であってソリューションを実現する会社ではないと自己規定できて、その上に立ってソリューションとは何かを定義すれば何が不足しているかが見えてくる.そうすればソリューション会社になることは間違いないのである。そうなるためには設計事務所の機能と建築をする機能を区分けして考えるべきである。ソリューション力の大切さを最近の出来事からふと思うのである。
A社の課題は何であったのか
A社はこれまで顧客データベースを構築してABC分析やRFM分析で選定した上位顧客にのみ膨大な販促予算を掛けていた.目的は優良顧客の育成であり、LTVの実現である。
ここに至る前、A社は上位顧客に販促予算を特化してLTV実現を図ろうとしてきた。しかしデータ分析をすると上位顧客と名付けたセルにいる顧客のうち四〇%もの顧客が、毎年セルの外に流出している現状であった。顧客一人ひとりを追いかけないで、RFM分析やABC分析で抽出する上位顧客という名のセル内顧客を対象にしてきたこれまでの仕組みでは、顧客拡大スパイラル戦略を実現するのは不可能と判明した。
A社の短期戦略とは、LTV(生涯顧客価値)化による顧客拡大スパイラルの実現、つまり顧客が旅行に行く時にはいつでもA社をご利用になって頂ける仕組みを企業内に構築することであった。
さらにA社の長期戦略は、次世代優良顧客を育成するソリューション(課題解決の仕組み)を、早期に構築しておくことであった。
安定した経営内容を未来の経営者に手渡すためには、長期的将来を見据えた優良顧客育成システム体系の構築が必要となる。A社の長期計画はまさに植林計画と同じである。
A社の担当責任者は、自社がこれからの時代に成長戦略としての短期戦略と、長期戦略を共に実現できる顧客マーケティング理論とITエンジンを探し抜いた。業界紙を読み、HPを探り、展示会に足を運び、多くのベンダーに相談をしたが、実現できるものには出会えなかった。
戦略構築は画餅であるかと囁かれたときに私のシナリオを使ったメソッドに出会った。
売上げを伸ばす戦略の仕組みとは
A社は前述した自社の短・長期戦略すべてが実現できるメソッドとシステムと判断した。
大河を混沌として流れる水のように、流動的な個客を捉えて継続して関係を深化させ、商品を販売し顧客を創造し育成しLTVを実現できる理論とシステムであると結論付けた。
テスト導入で驚くべき成果を実現した。ターゲティングした顧客の旅行販売件数は、最高で約3倍に増えた。その上これまで歴然としてあった新人販売員とベテラン販売員のデータベース運用能力とリレーションシップツール作成能力差がなくなった。個人の暗黙知を、企業の形式知に置き換えることができたのである。
その結果CRMに関しての残業時間は何と90%も削減され、全員が高品質のCRMを展開できた。
自社長期戦略も、この仕組みなら誰でもできると、誰もが納得した。
この成果を受けて経営は全社一斉導入を決断した。顧客を創造し育成し、LTVが実現できる手法を伴わなければソリューションとはいえない。係る意味でこれこそがザ・ソリューションCRMであると評価を受けた。
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