先日、某中堅企業の社長から直接に電話を頂いた。自社の営業改革を実現するために相談をしたいという内容であった。
その社長の話をご紹介しよう。
「見える化と言っているけれど、見えた後の使い方がまったく駄目だよ。見えるのは営業マンの行動時間とプロセス進捗だが、行動時間が見えるとどこもここも皆、行動管理に入ってしまう。
IT会社は販売生産性の向上と言っているが、販売生産性とは営業マンの行動を管理することによって生まれるものではなく、契約できる仕組みを作ることによって生まれるものでなければいけないのだ。無駄な動きをさせないことが販売生産性の向上というのはおかしいよ。工場生産性を上げることと販売生産性を上げることを一緒にしてはいけないんだ。
工場は無駄な動きをさせないことで生産性を上げることはできる。しかし営業は相手がある。相手は人間だよ。その相手が買うといわない限り商品は売れないのだ。
今の見える化で営業マンの行動を管理すればするほどモチベーションは下がるよ。
ある中堅メーカーで自社営業マンが直販と代理店販売をしている会社があるのだけれど、ここの社長が私のゴルフ仲間で、社長が見える化を推進したけれど営業マンがSFAを使わないということで、この社長はSFAをやらない奴は賞与を減らすと怒り狂ったらしいんだ。
営業マンは仕方無しにやっているらしいが、見える化ができたら今度は在社時間を減らす運動を始めた。だから営業は喫茶店に入って仕事をやっている。あるいは自宅で仕事をやっているというようになったらしい。
この話には続きがあって、社長はプロセスの見える化が進んだら「ここまでプロセスが進んでいるのになぜ契約ができないのか」と会議で騒ぎ始めているようで、今度は営業マンの営業力がないのだと営業常務に食って掛かっているらしい。
営業マンはやる気がなくなり、営業部には退廃的なムードが出てきて、営業常務は見える化には困ったもんだと頭を抱えていた。
この常務もやはりゴルフ仲間なんだが、社長に見える化はよいけれどその後のアクションに問題があるのではないかと意を伝えたら、「お前がそんな考えだからうちの営業は駄目なんだ」と社長から逆襲されたって言っていたよ。
いまの企業は、大金を払って見える化をやって、営業マンのモチベーションを下げるという愚行をやっているんだ。企業の中に目明きがいないんだねえ。
ちょっと考えれば判りそうなことなのにねえ。
見える化の限界がわかり始めてきている一つの事例をご紹介した。
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