ビジネスプロセスを契約に向かって進捗させるにはASKが必須になる。
ASKとは、顧客を理解するために必要な質問事項、ビジネスプロセスを契約に向かって進捗させるために(見積書作成に向かってではない)必須な質問事項である。
ASKとは、ビジネスに関わる関係者全員に対しての「合意の事実確認」である。
先週号に紹介したハウスメーカーでは、家を建てる意志があるのか、家を建てる目的は、
この設計内容でよいのか、資金計画は、などASK項目を用意し関係者全員の事実確認をとる行為をしている。その結果ASKで関係者全員の合意を事実確認できれば必ず契約できるという事実に立ち至った。
私は、これまで「そこまでASKが訊ければ絶対契約できますよ」「でもそこまではASKを訊けないですよ」と、幾百人の若い営業マンからこう言われてきたことだろう。
例えば下記のようにである。
『そこまでASKが訊ければ絶対に契約できます』
「なぜ、そこまでASKが訊ければ絶対に契約できるのですか」
『そのASKがさらりと訊けるには、顧客と信頼関係が出来上がっていなければ無理です。だからそこまで訊けると言うことは信頼関係が出来上がっているということで、絶対契約できるということです』
「信頼関係って何のことですか」
『信頼関係を何って聞かれても答えようがないですよ。信頼関係です』
以上の会話内容にこそ、契約率向上を高めることができる鍵が隠されている。
1.それが訊ければ契約できますよと営業マンに言わせるASKとは何か。
2.でもそこまで訊けないですよと営業マンに言わせるASKとは何か。
3.顧客と相当に信頼関係の構築が必要と言わせる信頼関係とは何か。
4.これをシステムでいかに構築するのか。
以上に基づいてASKを解明すると、例えば設備機械の納入営業プロセスでのASKはこうなる。
1.設備を導入することは決定しているのか。
2.導入時期は幾らで予算は幾らか。前後どのくらいの幅を持たせてあるのか。
3.購入管轄する部署はどこか。
4.関係者全員とその職位とキーマンは誰か。
5.納入決定方法は。
6.決裁者は誰で上申責任者は誰か。
7.設備導入の目的は何で、何を改善することを目標としているか。
8.製品を選択する基準を明確に知りたい。
9.この設備導入後の計画を知りたい。
「ここまで訊けたら絶対契約できますよ」「でも訊けないですよ」という質問を拾うと、例えば上記のような項目が思い浮かべることができる。こうしたことを営業マンは顧客にさらりと聴けなければいけないのである。それでは聴くためにはどうすればよいのか。それが関係構築である。
関係を構築するものは何か。
信頼関係ができればASKは訊けると営業マンは誰でも言う。
それでは信頼関係を「科学」するとどうなるか。
言葉としては、信頼関係とは関係構築、人間関係を深めることという。
それでは、人間関係を深めればASKが聴けるのか。人間関係を深めるには酒を飲むことか。ゴルフをやることか。それも関係進化の一つだが、それだけではないはずである。
信頼関係の構築はエモーション「理」と「情」で実現できる。エモーション「理」と「情」をシステムに登載することを可能にすることによって実現できるのである。
エモーション「理」と「情」が進捗すれば、ASKは訊ける。ASKが訊ければビジネスプロセスは契約に向かって進捗していく。
エモーション「理」とは、製品カタログ以外のツールを使って、企業の理念、開発者の理念、業界の歴史、製品の歴史、市場の要求、ライバルとの関係、製品の特長などを顧客に伝える活動のことである。この活動を「顧客学習」と名付けている。
顧客はそもそも製品について未認知、未理解部分が多い。営業マンは製品カタログでしか製品の説明をしないし、後は使用ユーザー見学会などで顧客に語ってもらうことくらいで製品の認知・理解活動を具体的にしていない。
だから提案時の製品に対する顧客の知識といったらどのコンペジターも似たり寄ったりなのである。
エモーションの「理」とは、「理」で顧客と親しくなることを意味している。「理」とは製品、商品のことが中心になる。製品、商品で顧客と親しくなるにはエモーション「理」というプロセスを展開し、エモーション「情」のプロセスで顧客と親しくなることだ。
このIT化(シナリオ化)と、リレーションシップツール化を一つに束ねたものが統合である。。
だから契約率アップについて、驚くほどの成果が実現しているのである。
顧客が心を動かすツールとは「理」をエモーションで語ることに他ならない。
シナリオとはプロセスを細分化したその一つともいえるから、プロセスごとに、プロセスを進捗させるために事柄で生まれる「理」を、エモーションで語ることなのである。
そして我が社は理と情のエモーション、ASKの二つを称して関係構築プロセスと呼んでいる。
顧客の心を動かすとは以上のことを愚直に行なっていく結果なのである。
*本稿はその後、考え方が整理され全く新しい概念になってデジタル経営化の中心的な手法の一つとなっている。「詳しくは服部隆幸のデジタル経営Blogを参考にしてください。<服部隆幸>
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