昔、バブルが弾ける寸前の頃、いや弾けた直後と言った方が良いかもしれない。私は銀行の支店長から強引かつ熱心な薦めもあり、2000万円で購入したゴルフ会員権を200万円の損失で手放した。私の直観力で、時代がおかしいと感じ取ったからである。
私の会員権を1800万円で後生大事な思いで購入した人がいた。
このときに、私は情報の先頭に走っている人と、最後部にいる人との温度差というものを感じた。
世の中には時代の変化を察することができる人と出来ない人がいるのだなと思った。その差は情報量の差だけではなく、「一葉散って天下の秋を知る」ではないが一葉が散ったことを見て秋を知ることにつながる直観力であり、問題意識の差であると思った。
先頭に立っている人は、手放しているのに、情報のない人はそれを購入しているのである。
この差は大きいと感じたものである。
やがてバブルが崩壊しゴルフ会員権価格の低落はご承知の通りである。あるときゴルフ会員権相場表を見たら50万円になっていた。私は小さな損で売り逃げたことになるが、ゴルフ会員権販売業者を通じて購入した人は、そのまま持っていたら大きな損をしたことになる。
今の状態での見える化ブームはもう終焉を迎えている。CRMを企業に導入している責任者の方々は、過去データを見える化しても結果として得るものは何もないことを切実な思いで体験をしている。
見える機能を導入しても、営業マンは使わなかったことを体験した人は、これまで、せっかく良いものをつくったのに使わない営業マンが悪いのだと営業マンを否定していたことを改め、営業マンが使って喜んでもらえるCRMとは何かということを模索している。
つまり先頭集団にいる人たちは、やった過去のデータを使って見える化や行動管理を行ってもうまくいかないことをもう分り始めているのである。
私はこのような先頭集団にいる人たちと連続をして会っている。
このようなCRMの先頭を走って体験した人たちはCRMにおけるITとは冶具のようなもので、営業マンが使いやすいものになっていなければならないと言い切っている。つまり営業マンのナレッジが最優先であるはずであるというのである。しかし現状は個人の暗黙知に過ぎないから、営業マンのナレッジを集約して、形式知化しなければならないと、先頭集団を走る人たちは断言をしている。
さらにCRMの目的は顧客との関係を強化し、LTVを実現するものでなければいけないと断言をしている。
私は過去データの見える化CRMを構築して、上司が営業マンの行動と時間を管理するだけのものや、パッケージの機能に営業マンの行動を従わせるだけのものは崩壊して行くと直観力でそう思っている。
このことは否定ではなく、警鐘である。いつまでも過去データを集計して見える化だけを追いかけていると、顧客企業から相手にされなくなりますよという警鐘である。
しかし、冒頭に語ったバブル崩壊時にゴルフ会員権売買事例のように、個人にも企業にも時代の動きを掴む能力には温度差があるから、これからもデータを過去のものにしてから見える化を考えようとする企業もいくつもでてくるだろう。しかしその延長上に未来はないことを知るべきである。
それはCRMの先頭を走った人たちが熟慮した結果、答えを出していることからも、容易に想像がつくものである。
私は、これからは顧客のLTV実現を中心軸に据えたもので、コアとなるエンジンは小さく、さらに企業のナレッジを活かし、形式知にするために周辺システムを手作りにして行くようなCRMが主流になると考えている。
営業マンがこれば便利だ、これはありがたいと心から思うようなCRMをつくることが次世代CRMのポイントとなるのである。
一葉は既に散っている。これを見て天下の秋を知るのか、一葉は散ったけれど葉は散るはずがないと思うのか、一葉さえも散っていることが分らないのか。それは問題意識の差であると思うのである。
(*本稿での思惟はデジタル経営化に大きく発展していきます。<服部隆幸>
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