■百貨店ではカード会員全顧客を対象に育成することは無理があるから育成するべき顧客ターゲティングという概念が必要になる。
■自動車販売業では、全顧客をターゲティング対象者とするのが正しい。新車は次に買い換えるのが購入後から約7年後である。高齢化社会になって、老齢後の 生活を考えるとクルマにお金を掛けられないし、いまのクルマを大事に乗るという人が増えているので7年はやがて8年になり、9年になる。
すると次回も当社からクルマを買っていただけるかどうかは重要なマーケティング上の鍵になるので、全顧客をターゲティングにすることが正しい。
しかし現実にはクルマをたくさん購入してくれる法人客、一人一台でクルマを持っている顧客、顧客を紹介してくれる顧客、購入頻度の短い顧客などさまざまな顧客がいるので、結局は顧客属性に合わせた顧客ターゲティングが必要となる。
■ブライダル業、とくにブライダルジュエリー業界では顧客ターゲティングをどう定めるかは重要なマーケティング施策になる。
収入も少ない若いカップルが婚約指輪を購入するときは、安売り店から安いダイヤの指輪を購入している。ダイヤの品質を表現するCarat, Color, Clarity, Cutの いわゆる4Cが強く打ち出されてから消費者は4Cをダイヤの評価基準であると勘違いして選ぶようになってしまった。
つまり4C評価が同じならダイヤはすべて同じものであるという考えが定着し、この考えは同じデジタルカメラなら安いところが得であるとまったく同じ現象を起こしてしまった。果たして安売り店で展示する4C値がダイヤを正しく評価しているかどうかは疑問であるし、4Cとは希少性の基準であってだから評価基準とは言い切れないのだが、こうした何らかの基準が浸透定着するとその影響は計り知れない。
さて、収入の少ないカップルが一生一度のお買い物だから、夢を見るように高級ジュエリー店から購入することもあるが、このカップルは人生で成功を収めない限り二度と高級ジュエリー店から高級ジェリーを買うことはないだろう。だから高級ジュエリー店は収入の少ない若いカップルを顧客ターゲティングしても、現 実的には顧客になり得ない層を追いかけることになる。
ところが顧客が富裕層になると違う。宝石を散りばめた指輪、ブローチ、ネックレス、宝飾時計などを生涯にかけて買い求めることになる。だからLTVが実現できるような対象を顧客ターゲティングする必要がある。
■B2Bで機械機器を販売しているような会社では、毎年たくさん購入してくれる企業から毎年少しずつ購入してくれる企業、数年に一度購入してくれる企業などさまざまだから、効率的に営業活動を行なうために顧客ターゲティングは絶対的に必要になる。
■製薬会社では自社の薬品を採用していただく、つまり処方箋を書いていただくための活動をしているがどのドクターが権限を持ち、影響力をもっているか、次期に影響力を持つドクターは誰かなどを決めることが、顧客ターゲティングである。
以上のようにいくつかの業態を取り上げるだけで、顧客ターゲティング、すなわち誰を当社の優良顧客として育成していくかを決めることがカタチこそ違え重要なマーケティング要素となることがお分かりと思う。
これまでSFAでは顧客ターゲティングは重要な要素として確認されていたが、店舗など流通業はRFM分析など何月何日何時時点でのRFM値が高い顧客が優良顧客という定義でターゲティングしていた。
SFAでは顧客ターゲティングは重要なマーケティング要素となっていたが、実際に我々がコンサルティングで確認を取ると、定義があいまいであることが多い。
顧客ターゲティングは古くて新しいテーマなのである。
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