【2008.07.11配信】
前号でこれまでのSFAは、在宅勤務者が本社への業務報告をする際のフォーマットを電子化したものに過ぎないと書いた。営業マンがやったことを記載するためのフォーマットで、電子化にする前はFAXで送付していたものである。
だから、ここにはマーケティングロジックは存在していない。報告書以上でも、以下でもない。ただFAXに記載していたことを電子化したわけである。
日本ではSFAを過剰期待で迎えた。
製造会社では特に顕著であった。メーカーのトップは製造部から上がっていく人が多く、製造出身のトップは営業経験がないから、いつでも営業部に不満を持っていた。それは製造部が品質管理、コスト管理、納期管理などの目標を掲げて推進しているのに比べ、営業部は月初めに打ち上げる売上げ数値目標と、月末に閉じる売上げ実績が毎月のように乖離しているところが不満の原因であった.一言で言うと営業部はだらしない。当てにならないということである。
そこに案件管理、行動管理が可視化できるということで、製造出身のトップはこれでだらしない、当てにならない営業部を改革できると踏んだのである。
製造出身の社長は、ほとんどの方が営業部をだらしないという。私は製造部と営業部では対象が違うと説明をしているのだが、営業を経験していない人にはわからない事と気付いた。
世界的に有名な大企業の社長が私に、自社営業部がいかにだらしがないかを愚痴り、営業数値が全く当てにならないことを愚痴った。そしてSFAを導入し、これですべてを解決するのだと抱負を語ったことを思い出す。
私は、製造部はすべて社員だから社長の命令に従うが営業部は顧客を相手にしているのだから、社長の思う通りにはならないと説明をしたが、彼は理解しなかった。そればかりか服部さんはうちの営業常務と同じ事を言うと怒りに満ちた顔をした。
それからこの会社は数十億円の投資をしてSFAを導入したが、しばらくしてから使用を中止するとマスコミに発表をした。
私はこの大企業の仕事をしていたので内情を良く知っていたが、案件ランクを製造ラインと紐付けて失敗し、行動プロセスを可視化したことによる営業マンの厳しい時間管理で失敗をした。
案件ランクといってもマーケティング理論に基づくマネージメントがなされているわけでなく、やったことを記入しているだけで、営業マンが上司から追及されて意味なく案件ランクを自ら書き換えているだけだから、それを鵜呑みにして製造ラインを組み立てていた製造は大混乱をきたすことは当然の帰結である。
また、行動管理では日報の記載内容が不明確であると上司から叱られるのであるから、モチベーションは下がる。SFAは大失敗をした。それが使用を中止する要因となった。
つまり報告業務の電子化しか機能を持たないSFAに過大な、私に言わせれば過剰な期待を懸けたことが失敗の最大原因であった。システムの性ではないのである。
それを証拠に今のままでよいという企業もある。世界的なレベルで動いている企業はどのような案件があってどう動いているか分かればそれでよい。我が社は報告を受ければそれでよいのだと明言している。
大事なことはシステムではなく、システム以前に考えなければならないマーケティングロジックなのである。これを上流工程と言っているが、ここを無視してしまっているころで
ある。
次に日本企業は更なる失敗をした。在宅勤務者の報告業務を電子化することでスタートしたSFAは、やがていろいろな機能を増やしていくが、日本では営業活動を理解しない情報システム部がSFA導入の権限と予算を持つことが多かったために導入に際しては機能比較になった。
そうして機能に忠実に仕組みを作り、営業にはこの機能に基づいて活動をせよということになった。この機能にもロジックはなく、要は時間管理や行動管理を行うものが中心であったから、日常の営業活動とは遊離している仕組みになった。そこで営業マンは自分の日常にやっている活動とは遊離にした活動を記載しなければならなくなった。しかも1分単位で行動を記載せよと社長から指示がでる企業もあって営業部は大混乱し、営業マンのモチベーションは著しく低下していったのである。
ここで気付くことがある。SFAにはマーケティング理論が必要であるということ。その理論は顧客、営業マン、企業の三方にとってよいものでなければいけない。売上げが伸びて、顧客も心地よく、営業マンも成長できるものでなければ長続きがしない。
こうしたマーケティング理論があって、この理論を展開できるようにシステムは作られていなければならない。さらには、システム導入後は営業活動の展開を指導して企業に、営業マンに、顧客に定着するようにしていかなければならないのである。
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