【2009.01.23配信】
ブレアコンサルティングの服部です。皆様。お変わりありませんか。
今から14年前、1995年にワン・トゥ・ワン・マーケティングが紹介されてからこのマーケティング手法についてたくさんの人がさまざまな定義をしましたが、一致したのは「顧客との対話」それと「双方向」というキーワードでした。しかしながら対話とは具体的どういうことなのか、何を対話するのかを問うた人も無く、定義をした人たちの多くはマーケティングの現場を知らない人たちでしたから、頭で考えたキーワードであって、それを営業現場にどう落とすのかの手法を語る人はいませんでした。
言葉だけが一人歩きしてワン・トゥ・ワン・マーケティングは企業と(営業担当者と)顧客の双方向な関係でなければいけない。顧客対話こそが重要なキーワードであると語られるだけでした。
14年後のいま振り返って顧客戦略に当てはめてみても顧客と対話をして顧客創造し、育成し、LTVを実現することを目的としていますから、企業が一方通行で顧客へ販促DMをだせばそれでマーケティングの目的が達成し解決するわけではありません。
まず店舗のビジネスで考えて見ますと、身近な例では、私の娘達はとっくに結婚して家を出ていますが、たくさんの小売店からプロパーやセールのDMがいまだに送られてきています。
私は娘の気持ちになってこのDMを見ますと、どれもデザインだけが尊重されて、私には到底読めないような小さな文字で書かれたものとか、何を目的に送付しているか分からないようなものがおおく見受けられます。こうしたDMは、グラフイックデザイナーやコピーライターなどDMを考える人が顧客対話をベースにした発想はしていませんから、仕方がないのですが、いずれにしても顧客対話に基づいた制作物でないことは確かです。
また、外回りの営業担当者も、社内都合で決めた営業プロセスを進ちょくさせろという指示だけでアクションをしていますから、顧客対話の概念もありません。話をしてくれば顧客対話だと思っているわけです。
ですから、双方向は顧客と営業担当者が面談すれば必然的に双方向であると認識することは出来ますが、顧客と話したから顧客対話を実現しているかといえば決してそうではない訳です。顧客対話にはしっかりとした定義が必要です。
顧客戦略における顧客対話には明確な目的があり成果があります。目的とはプロセスを進ちょくさせることであり、成果は結果としてプロセスが一つ進んだことです。プロセスとは単に案件を契約に導くだけでなく、生涯価値を実現する長期的な関係の中で起こりえるすべてのプロセスを指します。
例えば他社の顧客を獲得することを目的として、マイルストーンを進ちょくさせるための顧客対話。定期訪問をして案件を発掘させるための顧客対話。発掘させた案件を契約まで進ちょくさせるための顧客対話。契約後に納品までのプロセスを、顧客満足を維持しながら進ちょくさせる顧客対話。さらに納品後の顧客ケアと製品ケアを進ちょくさせるための顧客ケアなど、多様なプロセスを目的に添って進ちょくさせるためのルール作りこそ顧客対話の真髄です。複雑多岐なプロセスを進ちょくさせる手法を顧客対話というキーワードでカテゴライズしているわけです。
それではどのような要件が満たせば顧客対話になるのでしょうか。顧客と会って何を対話すればよいのでしょう。どのアクションを対話というのでしょう。
顧客戦略では明快な答えを持っています。一つは顧客と営業担当者が、情の関係を深化させる。
二つは理の関係を深化させる。三つは顧客側の購入プロセスの位置や、顧客の心情を確認するということです。
顧客との対話には常に目的を持たせなければ意味はありません。プロセスを進ちょくさせるためには人間同士の、情の関係を深めることが不可欠です。人間は感情の動物ですから、情の対話が必ず必要になります。例えば気候の話やスポーツの話をすることも情の対話です。
しかし情の対話はこれから進める目的を実現するための潤滑材であってこれ自身が目的ではありません。
二つには理の関係深化です。理の関係は目的を実現するため企業側のメッセージをいかに売り込まないで顧客に納得いただくかの技術です。
ハウスメーカーの営業担当者を例にして情と理の関係を話してみましょう。
彼らのプロセスの第一は顧客の見極めです。住宅展示場に来場した顧客が本気なのか、冷やかしなのかを見極める必要があります。すべての顧客を追いかけると無駄な時間を使うことになります。図面を何回も出して設備や内容まで決めて見積書まで提出してから、挙句の果てに将来、家を建てたいと思っているので参加になりましたでは営業担当者もハウスメーカーも経営が成り立ちませんから。
この見極め方法にはハウスメーカーごとにたくさんのノウハウがあります。
祖父、祖母も一緒に来場したか。きちんとした身なりか。きちんとした履物か、クルマは何か。家を建てる真剣度はあるかなど顧客の見極めから、土地はあるか、建築時期は定まっているか、資金計画は出来ているかなどさまざまにあります。しかしこれらは企業の論理で組立てたプロセスなのです。顧客から見れば頭の先から足元までじろじろ見定めされることはすぐに感じますから感じが良いとは思えません。
ベテランになれば悪い感じを顧客に与えませんが、若い社員は表情に出しますから、これでは顧客からあの営業担当者は感じが悪いと見透かされ、情の関係は成立しません。ここで話はストップしてしまいます。
次に営業担当者は土地の調査を提案します。土地の形状、用途地域、地質調査、地盤調査などは家を建てる前提として必須条件です。どこのハウスメーカーでも営業プロセスの第一番目に土地の調査プロセスを置きます。
しかし、顧客側にすれば土地の調査をお願いするプロセスは、建築会社をお宅に決めたと決心することと同じくらい重要な判断です。余りしつこく迫ると顧客側は消去法でこのハウスメーカーを交渉相手から消してしまいます。
けれどもハウスメーカーにとって土地の調査をしないとその先にプロセスが進まないことは事実ですから、土地の調査を営業プロセスから外さないわけには行きません。
顧客対話はプロセスを進ちょくさせることを目的としますから、その成果は「土地調査を実施した」となります。
ここに顧客戦略における「顧客対話」とそして「双方向」が、必要になってくる本当の意味があるのです。
コメント