【2008.12.24配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
文中に公式の説明がありますので固い話になってしまいますがゆっくりとお読みください。
自動車メーカーが抱える最大の弱点を申し上げましょう。それは系列企業群の領主であるメーカーが本来ならば製造から販売、そして顧客ケアにいたる全体プロセスにまで深く関わり一貫した系列の戦略としなければならないのに、やっていることはメーカー視点である事です。自らは製造機能としか考えていないことです。いえ、正確に言えば考えてはいるのだけど考え方が間違っているために成果が出ない。したがって考えていないことと同じ結果になっているということです。
製販を分離し、製造の視点でしか物事を捉えていないということです。
これを製販一体となった製造販売会社の生産性の理論で解きほぐしてみましょう。
(製造販売台数÷組立て要員労働時間)×(組立て要員労働時間÷工場全員労働時間)
×工場要員労働時間÷全社全員労働時間)×(全社全員労働時間÷1)×平均販売単価
上記の公式を公式1と名付けます。この公式の答えが売上金額になります。この公式は一人時生産性(点数と売上げ)を計測するために私が開発した数式です。
系列企業群の領主であるメーカーは、グループを上記の公式を一体化したものとしてみていません。
販売台数が下がってきたから、生産性を落とさないようにするために労働時間を減らしましょうと工場を運営する側の発想で捉えているわけです。労働時間の削減は即政策としての派遣社員や非社員のカットにつながっていきます。次には工場を休止して稼働するために掛かる費用を削減しましょうとなっていきます。つまりは製造販売台数に比例して工場労働時間を調整していきましょうとする考えです。
この考えは系列企業の領主としては片手落ちです。系列企業の全体を俯瞰していませんし、製販一体となった考えに立っていないといえます。
自動車メーカーの弱点は、販売台数を単純に販売台数として固定的なものとしてしか捉えていないところにあります。
販売台数は結果の数値であり過去の数値ですから変えることが出来ません。だから販売目標と販売実際値が統計的にマイナスの差分が出てくると、公式にあるように目も頭も行動もすぐに工場全員の労働時間を削減する方向に向いてしまうわけです。売れない在庫を抱えることは資金も寝ますし直接的に利益の足を引っ張ることになるからです。つまりは統計的に表現された販売台数の落ち込みに合わせて製造台数を削減する。その製造に関わる一切のコストを削減しようとしているのです。
本メールマガジンは自動車メーカーの方がたくさん読者でいますから、本メールマガジンを読んで、なかには顧客戦略は販社の課題であってメーカーの課題ではないとおっしゃる方もいるのではないかと思います。
それでは次の公式はいかがでしょう。
{(顧客数×平均購入頻度×平均一客買い上げ台数)÷組立て要員労働時間}
×(組立て要員労働時間÷工場全員労働時間)×工場要員労働時間÷全社全員労働時間)
×(全社全員労働時間÷1)×平均販売単価
上記の公式を公式2と名付けます。公式1と公式2の違いは何処にあると思いますか。
答えは、製造販売台数を顧客数×平均購入頻度×平均一客買い上げ台数に分解しただけなのです。
これで賢明な本メールマガジン読者の方は、理解できたことと思います。
メーカー的な発想では台数は台数そのものです。販売台数、製造台数は固定的なものとして考えます。だから製造側のコストを削減することに専念します。企業は人、物、金経営で動いています。
社内に持っているものはコストだけです。在庫もコストです。人もコストです。資金調達にもコストが掛かります。銀行から借りれば金利が掛かりますし、資本調達をすれば配当金という名のマイナス利益が発生します。また現金はコスト化していきます。会計学的に言えば資産は費用の未使用部分であるのです。したがって社内はすべてコストであるという認識しかありませんから、企業は冷徹に人というコストを削減していくわけです。
製造台数はコストですが、売れることによって売上げになり販売台数という概念が生まれます。
そして販売台数をさらに分解すると前述しました顧客数×平均購入頻度×平均一客買い上げ台数となるわけです。
自動車メーカーに限らず、すべての企業はコスト削減と同時に販売台数を増やすために、顧客数×平均購入頻度×平均一客買い上げ台数を増やし、平均販売単価を増やす戦略を樹立して戦略の両輪にしてやっていかなければならなくなってきているわけです。
公式1を通分していくと製造販売台数×平均販売単価が残ります。この答えは売上げです。
公式2を通分していくと顧客数×平均購入頻度×平均一客買い上げ台数×平均販売単価が残ります。
この答えも売上げです。
公式2で自動車メーカーに限定して説明をしますと、ただ今の不況で購入頻度が8年に延び、9年に延び、10年になろうとしています。これで売上げが下がります。法人需要でも個人需要でも同じことです。一客あたりの平均購入台数が減ればその比率で売上げが下がります。ダウンサイジングが行われていますから販売単価も下がる傾向です。
売上げの4素数である顧客数×平均購入頻度×平均一客買い上げ台数×平均販売単価がそれぞれ
1割下がれば、売上げは65.61%になり34.39%も下がることになります。
そのうち顧客数、購入頻度、一客点数が1割ずつ下がると販売台数は72.9%で27.1%も下がることになります。
今、世界的に自動車が売れていませんが、推測をすると顧客数も頻度も一客点数も下がっていると思います。販売拠点ごとにこの数値の何処がどれだけ下がって売上げがどれだけ落ちているのでしょうか。ここを見過ごしているところが自動車メーカーの経営上の弱点となっているわけです。
過去の数値は変更できませんが、未来の数値は努力次第でいくらでも変えることが出来ます。繰り返しますが販売台数とは顧客数×頻度×一客点数の合計であると分かればメーカーは製販が一体となって全体顧客戦略に取り組む意味がわかってくると思います。
同時に、それは売った顧客を放置するこれまでの経営政策の転換であり、営業プロセスの転換であることを意味します。
社内的には需要創造実現という大きなメリットの享受であり、人、物、金三要素を基盤とするコスト管理経営から、売上げと利益を創造してくれる利益導入経営にはじめて手を掛けるパラダイムのシフトであり、社会的には目標ノルマ達成追求型から顧客ケアによる目標利益達成に転換することにより、働く人の生きがい創生に寄与することができるようになります。
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