【2008.09.19配信】
過去客とは、むかしは当社の顧客であったがいまはまったく当社から購入していない顧客のことである。別名離脱客ともいうが、ここでは当社の顧客になれなかった人々のことについて説明をする。
一度は当社の顧客になっていただいているが(当社から商品やサービスを購入いただいているが)二度と購入しない顧客。この人たちは顧客になり続けようとしてなれなかった人たちである。
こうした顧客はどの業界にもたくさんいる。例えば通販業界。一度は買うが二度と買わない人たちで溢れている。企業は伸びない売上げを打開するためにますますはじめて買う人に向けてマス広告を打っていく。その結果、新客が商品を購入してくれるのだが、その多くは二度と買わない。だから業績は下がっていく。
実際のところ、取引のない顧客に対して振り向かせることは大変困難なことである。ずば抜けた製品力があればまだしも、多くの場合は製品力に大差はないのだから、取引のない顧客を新客にするためには価格訴求がてっとりばやいやり方となる。
たくさんのマスメディアを使い(多額の広告料を支払い)安さを誇張し、売上げを作ってそれでお終い。また次に同じことを繰り返す。
企業は売上げ数字を作るために活動しているのではないが、やっていることは顧客無視の企業のご都合だけを優先させた売上げ数値作り業務なのである。
こうして毎回、新客をとるためのセールスアプローチが恒常化しておこなわれた結果、獲得した新客は底が抜けたタルに水を注ぐようなものになる。タルに貯まらないで底から抜け出てしまうわけである。
新客をいかに常連客にしていくかは、新客を獲得する技術と同じウエイトで、平衡して走らせなければいけない戦略であり、技術ある。そこが欠落している。そのわけは書いた通りだ。
一回限りの(今月の)売上げ数値作りを毎回繰り返しているからである。作るのは売上げ数値だけであって、顧客を作り育成しようとする考えがないからである。
ここにコンサルティングを展開している企業データがある。この会社は大企業で店舗をたくさん持っている。全店舗の平均値で説明をしよう。
これまで一回購入した顧客で、それから一年以内に購入しなかった顧客が全体の67.3%であった。一年以内に1回だけ購入してくれた顧客が16.3%、2回購入してくれた顧客が5.8%、3回購入してくれた顧客が4.7%、4回以上購入してくれた顧客が5.9%であった。
我が社はこの企業に対して顧客ケアマーケティングを導入し展開した。
顧客ケアを実現できる顧客管理システムを導入し、二つのやり方を選択した。
一つ目は顧客が商品を購入したことをトリガーとして発生する顧客ケアを生み出す設計し、シナリオを設計し、実行を支援する機能をシステムに搭載した。
以下の記載するシナリオはその一例である。特定した商品を購入したらシステムがそれをトリガーとして商品購入御礼状を出すようにアクション指示をする。ついで購入2週間後に使用感についていかがでしょうかとお問い合わせの電話連絡をして、追いかけるようにその商品の開発理念を分かり安く書いた説明書を送付する。半年後に保管方法に付いてアドバイスをする。プロパーの時期に新商品案内を送る、というシナリオである。こうしたシナリオを何十本も作成してシステムに搭載することで、営業担当者が採るべきアクションを自動的に生成し担当者に指示をする。システムには宛名の抽出やラベル印刷といった各種ツールが用意されているからそのツールを使って発送するわけである。
二つ目は、顧客をランク分けし、ランクごとに顧客をケアするシナリオを作成展開し、商品購入をトリガーとせずにしないで催事を開催するタイミングで、セールの案内、誕生日カードなどを送付した。
一年後の結果は次の通りである。一年前の顧客データは全顧客であるが顧客ケアはコスト総額の関係もあるので全部の顧客を対象にはしない。育成するべき顧客だけを対象にしているが、顧客ケアの効果が著しくでていることが分かると思う。
その後一年間に購入しなかった顧客:67.3%→28.1%に減少した。
その後一年間に一回購入した顧客:16.3%→8.1%に減少した。
その後一年間に二回購入した顧客:5.8%→4.3%に減少した。
その後一年間に三回購入した顧客:4.7%→3.9%に減少した。
その後一年間に四回以上購入した顧客:5.9%→44.4%に大幅増加した。
新客を作ったらケアをするべき顧客をターゲティングし、ケアを続けることで新客を貯める樽の底はしっかり閉じて、継続した顧客になってくれるのである。
たくさんの過去客ができるのは過去客ができるような仕組みしかないからである。
前述した事例のように顧客育成ができているのは、できる仕組みを作ったからである。
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