【2009.06.05配信】
いままでの営業は確率論で活動を決めています。
訪問件数対比受注率が5%であれば、100件訪問すれば5件の受注は取れるという考えです。
SFAではこのようなデータが取れるので営業を企画する人たちの手でどんどんと確率論に走っています。
最近は不況で受注率が落ちてきたから訪問件数を増やそうと受注件数を120件に増やすなどは普通の会社で普通に行われています。
営業企画の若い人たちは優秀で理論的に考えますから、この答え以上に正解はないと信じています。
BMW販売圧倒的日本一を誇る飯尾さんは(カスタマープリンシプル協議会常務理事)、この考え方を真っ向から否定します。
私は50件試乗をしたら、50件全部のお客様にBMWを買って貰おうとしたというのです。
そのためには試乗日にはクルマをぴかぴかに磨いたといいます。見えることは当たり前、見えないところもぴかぴかに磨き上げたというのです。それで試乗して買ってくださらない顧客がいたら絶対、確率論にしないで車の磨き方が足りなかったのか、自分の対応に落ち度があったのではないかと反省をしたそうです。
その結果、日本一の営業になったわけです。飯尾さんはBMWの旗艦というべき7シリーズを圧倒的に販売したことでも知られています。
多くのお客様は繰り返し飯尾さんからBMWを購入したわけは簡単なことで、飯尾さんが顧客をきちんとケアをしたからなのです。
だから確率論で営業を語ることなど絶対におかしいといいます。
さて、若く優秀な営業企画の人は飯尾さんのような経験をしていませんから、一定の方向から物を見ています。つまり自分脳の満足という観点からです。
彼らは分析をして一定の法則を見つけようとします。それは簡単なことですが確率なのです。
高度経済成長時代を知らない若い営業企画の人が、考えることは高度経済成長時代の手法だなんて、なんとも皮肉な話です。毎年高度成長している顧客企業が、何か新しい製品はないかと待っていてくれた時代に有効であった営業活動の手法を、成熟し切った時代に再現しているのですから。
むかしの話ですが、私の知人に確率論で訪問をしている米屋さんがいました。彼は事業をやっている家に生まれたのですが父親が獅子のように突き放して彼を苦労させたのです。彼は米屋をはじめました。それも松戸の奥深く、周辺が全部田畑(でんばた)というところに数軒の家がありました。その家を買って米屋を開いたわけですからあきれた話です。
彼は確率論で訪問販売をしました。受注率1%と踏んで、受注する1件に近づくためには 99件から断わられる必要があるのだと考えたのです。だから断わられるのは苦にならず断られるたびに受注できる1件に近づいているのだと考えて気を取り直して訪問したというのです。
しかし、100件回っても1件も受注はとれず、120件回っても1件も受注はとれず、そんな時に私が「商店界」という誠文堂新光社という出版社から出していた雑誌に連載をしていたものですから、読者であった彼は私にどうすればよいのか相談があったという次第です。
米を作っている家ばかりの土地に米屋を開き、売れないからといって農家へ米を売り歩く若い彼の姿はいまの成熟した時代における営業を彷彿とさせます。
まず確率論を捨て去るべきです。事務機販売会社ではどこでも月間述べ訪問件数150件を目標にしていますが、これを半分にします。そして余剰時間を顧客ターゲティングして訪問すべき重点顧客を決めて、まずは関係深化を図ります。そして顧客の課題を知り、顧客の価値を発見することです。そうして次に顧客の価値を実現することです。この一連の動きを枠組みにして営業担当者に実行させることです。
飯尾さんのいうように訪問した顧客の全部から注文をとろうとすることです。ターゲティングした顧客は30社程度に留めて、繰り返し訪問をすることです。顧客と関係を深めていろいろなことを聞ける仲にまで深化したら、顧客が求める価値を発見することができます。価値を発見することを業務として一定の枠組みにすることです。
組織全体で一斉にやるのではなく、部分からはじめます。その手法で売上げを作れることを学びましたら確率論で訪問している顧客の中から再度ターゲティングして、一ヶ月に150件の訪問体制を再度構築します。
その仕組みを徐々に組織に拡大していくことでスイッチしていくことができます。
繰り返しますと、共生・共歓のビジネス活動を構築するには、企業は営業担当者のために顧客ターゲティングをして情の関係と、理の関係による信頼関係を構築するための業務活動を定義し枠組みを作って実行させます。何を話すのか、何を聞くのか、何を伝えてくるのか、伝えるためにはどのようなツールが必要か、これらの活動をどう評価するのか、すべては枠組みとして決めていくことです。
この活動は花を結びますから次第に手法を入れ替えていくことです。こうして1年がかりで手法を全部入れ替えるわけです。
確率営業は顧客を平気で無視し、切り捨てる営業です。そんな営業はもはや通用しないのです。
価値を実現できない営業は淘汰されていきます.人も企業もです。
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