【2009.04.17配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
不況を受けて投資や消費が萎縮しています。
企業はどこでも売上げ減になっています。上場している企業は株価に反映しますから売上げアップ利益アップに大鉈を振るっています。
なかでも営業担当者の訪問件数を増やそうとする傾向は強いですね。その大部分が経営トップから発信されています。
既存のSFAは、非常に都合よい集計データを出してくれます。訪問件数の個人別、組織別などが簡単に集計されますから、これを持って一日訪問件数8件を10件に増やせと指示が発令されるわけです。
この指示に基づいて営業部では効率営業、生産性向上営業を繰り広げるわけですが、一向に成果が出ず、逆に成果は落ちて、営業担当者も疲弊の度を強めているのが現実です。
訪問件数が増えれば受注率もリンクする。この考えは高度成長時代の語り草です、高度成長時代には成長を続ける顧客企業は、営業担当者が訪問して提案する、品質や生産性の上がる機械設備、事務機械、あるいはコストが下がる設備の話しを積極的に受け入れました。
だから訪問件数を増やせば宝物は見つかったのです。私は訪問件数×受注率の公式を宝物探し理論と名付けています。正確には売上げ=訪問件数×受注率×一客単価です。
宝物とはいうまでもなく案件、そして受注のことです。
ここでの母数は訪問件数です。業種によっては電話件数が母数ということもありますが、ここでは訪問件数を母数と致します。
訪問すれば宝物を発見する率を案件発掘率、若しくは案件獲得率(受注率)といいます。
多くの企業は自社における案件獲得率を持っています。SFAで集計されて出ている場合もあります。訪問件数対比受注率がほぼ固定化されている企業では、この公式を見ると売上げを伸ばすのは訪問件数を増やすしか方法はないと思ってしまいます。
事実、公式にはそれが正しい方法であると書いています。
だから企業は訪問件数アップ率が売上げアップ率であると定義をしてしまいます。
そうではないとうすうすは思う人もいるでしょうが、この公式にはそうではない要素は一切含まれていませんから、訪問件数を増やすことが売上増にはつながらないと異論を挟む余地を与えないわけです。
どこ企業も成長をしている時には訪問件数が売上げを定める決め手でありました。
繰り返しますが、成長を続ける企業には更なる生産性アップ、品質アップ、コストダウンを継続できる投資力があったからです。
いまはどんな時代でしょうか。
企業にも家庭にもすべて設備やモノは揃っています。古いか新しいかの違いはありますが、いま使っている設備で十分満足しているのです。それはモノも人の考えも成熟しているからです。
いま複写機メーカーが苦戦しています。
これまでのビジネスモデルは、複写機を大幅値引きをして納めて毎月使用料をコピー枚数に応じて支払っていただく。その代わりトナーと修理代はメーカーが負担するというモデルです。
顧客先が5年に一度新型に交換していただければ修理個所もあまり出ないで十分に利益が上がるモデルでした。
それがどうでしょう。いまでは5年経っても機械は順調に動きますし、故障をすれば無償で交換してくれるわけです。その上仕上がり品質も見違えるほどよくなっているとは思えません。
だから再リースが増えてきているのです。
複写機メーカーは、新しい機械は入らない。使用年数が増えることで大型部品の無償交換が増え大きな費用負担が生じる。リース会社も再リースが増え、1年分のリース料が1か月分に減りますから収益減と、負のスパイラルが始まるわけです。
こういう状況に複写機の販売会社が提供できる価値は、毎月の使用料単価を下げて、新しい単価と使用枚数を掛けて新しい使用料を算出し、いくら得になるからこの投資は何年で回収できますとするコスト削減価値だけです。
営業担当者は、訪問件数×受注率で縛られていますが、その手前にあるプロセス、例えば話しを聞いてもらった率、コスト計算を算出する現状単価と平均使用枚数の確認プロセス、既存複写機と新しい複写機の品質確認プロセス、およびコストダウンを含めた計算書と見積もり提出プロセスを通過した率をもチェックされますから、そのプロセスを通過することだけが目的となって、それ以外の顧客を悪い言葉で言えば蹴散らかすのです。
別の言い方をすれば次のプロセスに進捗しない顧客の切捨てです。
そんな営業をしている営業担当者が、訪問件数を増やせばどうなるでしょうか。彼らは訪問件数を増やすことだけがゴールになります。上司の関心はそこなのですから。
しかし、昔と違って訪問しても宝物は見つかりません。訪問件数を増やしても宝物は見つかりません。見つかるものは無いのです。
自分が売りたいものは訪問先に存在し、訪問先は不満を持たずに使用しているのですから。
しかもメーカーや販社にとって居心地のよかったこれまでのビジネスモデルは時代の大変化で逆風になっているのです。ここで営業担当者が行う価値はコスト削減提案だけです。この営業方法の着地点は存在するのでしょうか。
訪問件数を増やせば営業担当者には次を回らなければならないプレッシャーに押しつぶされます。訪問しなければ何も生まれませんが、訪問をしても何も生まれません。
複写機メーカーに限らずこのような販売形態をとる企業の人たちは一致して次の一手は顧客先と営業担当者との関係深化であると口にします。
そこで私は、関係を深めてから何をするのでしょうかと問いますと、その先の答えはありません。そこまでは考えていませんということです。
ドラゴンクエストでは宝箱を開けるには鍵が必要で、その鍵はいくつもあって最重要アイテムが入っている宝箱は最後の鍵を手にしなければゲットすることはできません。
企業は最後の宝箱を見つけ、開ける力を持たなければなりません。そのやり方はカスタマー・プリンシプル・アクションが、形式知化され、標準化されて実現できるのです。
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