【2009.07.10配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
百貨店に新しい動きが見えてきました。
一つは、極めて部分的でありますがリスクを持って商品を仕入れ販売する方向性です。
すべては報道による情報で私自身は確認していませんが、松屋では海外の有名ブランドメーカーに直接出向いて、買取りで大量の発注をし、それを国内で販売し商戦を圧勝したと言うニュースです。
イタリアのブランでメーカーはいま、世界経済危機の影響で、売上げが昨年対比50%減少といいますから大打撃を受けています。百貨店もリスクを持てば収益も高く得ることができますし、有名ブランド品を安く販売することも出来ます。ニュースによれば割安感から一人で何着も購入する顧客がいたと報じていますが、これまでテナント業であった百貨店が活路を見出すための戦略の一つとして注目されています。
二つは、三越日本橋のお中元商戦のニュースです。朝のテレビで特集として組まれた番組ですが前年対比で大幅に売上げを伸ばした事例です。
この事例がとてもBREA理論的なので驚きました。
お中元商品として高額なものがたくさん売れたのですが、その手法と言えば、まず三越にはベテランのアドバイザーがいます。顧客はお中元にどれを贈ったら歓ばれるか迷っています。
こうした顧客がアドバイザーの名札を付けた女性を見ると、相談のため話し掛けます。
ベテランのアドバイザーは驚くほどの速さで顧客と親しくなり、次いで価値の発見をするためのASKを行います。アドバイザーは答える顧客の話しを聴いて、こういうことですねとすぐに顧客の価値を確認します。そのプロセスを経たあとで、「ハイわかりました。これが良いです。ご案内しますからどうぞとショップへ自信を持ってお連れします。そこには商品の試飲・試食が出来るようになっていて、すぐにこちらでいかがですかとお試しを奨めます。
顧客は試飲・試食して「おいしい」と言います。するとアドバイザーは「これがよいと思います。これに決めましょう」と言い切ります。この手法で高額なお中元品が驚くほど売れたわけです。
三越日本橋の成功事例は先に申し述べたようにBREA理論そのものです。
多くの食品売場では日常的に試飲・試食を進めていますが、顧客は簡単に試飲・試食に応じません。なぜなら試飲・試食をしたら奨められて買わされると思うからです。つまりは売る側の理論に基づいて、売るためのプロセスを奨めているからです。
しかし、三越日本橋店ではどうでしょうか。アドバイザーが瞬間的に顧客に安心感を与える関係促進をすること。アドバイザーは販売のアドバイザーであって売る担当者ではないこと。
だから顧客は安心して心を開きます。そのあとにアドバイザーは顧客に対して顧客の価値が何であるか、ASKをします。「どなたに贈るのですか」。「どのような方ですか」。
顧客はそれに答えます。このプロセスがあるから次が生きるのです。
「分かりました。お連れしましょう」
そうして必ず試飲・試食が出来ます。「いかがですか」。ここが価値発見と価値確認です。
顧客が美味しいですと言えばこれで決まりです。このプロセスが価値の実現プロセスです。
これまでの業務プロセスは自分たちの売上げを作るためのプロセスですが、日本橋三越お中元セールで行った一連のプロセスは、情と理の関係深化とASKを行って顧客の価値実現を果たしたことによって自社の価値も実現したカスタマープリンシプルそのものであったわけです。
BREA理論はお中元セールだけではないのです。ファッション衣料も、化粧品も、洋品雑貨も、食料品も、美術品も、つまりは百貨店の扱う全商品売場で実現できるものなのです。
我が社がBREA理論を百貨店のこのケースにコンサルティングをしたなら、アドバイザーはお客様の住所、名前、連絡先〔電話番号など〕を聴いて、次に商品の予定到着日を書いてリストを作成します。ここに目標数値を求めるべきです。
リストはすべてデータベースに登録し、システムは次のアクションをシナリオにしてアドバイザーに指示します。お中元商戦が終わって手が空いたらお礼の電話を入れてお中元をお贈りしたお客様の反応を聴きます。〔美味しいって電話が入った〕などと書いておくわけです。〔あるいはシステムに入力をしておくわけです〕
出来ればお中元とお歳暮の間に、もう一度関係深化のDMをお届けすればベストですが、それをしなくてもお中元の時期にシナリオが動いて、アドバイザーはシナリオに基づいた電話連絡をします。「今年もお待ちしていますからお越しください」こうすれば顧客は他店に行きません。
実はファッション衣料こそ情の関係と理の関係を構築し、ASKを行うことができる商品です。靴もバックもそうですし、ギフト商品は全部出来ます。
重要なことは理の関係です。先の事例では試飲・試食が理の関係に相当します。ファッション衣料で言えばこの服の着心地のよさ、デザインのトレンド、色と肌色の関係、素材のよさ、この服をデザインしたデザイナーの思い、パタンナーの思いなどを顧客に告げて良さを理で理解いただくことです。
こうしたことをBREA理論では「顧客との対話」と言いますが、顧客との対話を実現することで劇的な変化が生まれます。
つまりこれまで自社の売り込みのプロセスが顧客にとっての価値実現のプロセスに変わるのです。
カスタマープリンシプル活動とは、「顧客と関係性を通じて、顧客の価値を実現し持続した共生・共歓のビジネス活動」を意味します。夢のようなことが情と理の関係深化とASKで価値の発見をすることによって実現するのです。
百貨店にこのような動きが生まれたことは、とても素晴らしいことだと思います。ここから復調が大いに期待されるからです。
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