【2009.07.24配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
マネーと貨幣は違います。しかしマネーはいつでも貨幣になります。貨幣はいつでもマネーになります。ここが怖いところなのです。
ある一部上場の企業が平成21年3月期に未曾有の赤字決算を行いました。2061億円の売上げに対し当期純損失が1615億円と、すさまじい赤字決算をいたしました。
理由は明らかです。経営者の一部が不動産投資を行った失敗です。
この会社は汗を流して稼ぐ安定した事業を営んでいますが、上層部が証券会社からの人間で占められていました。彼らはマネーを扱っていたのです。マネーを扱う人間から見れば貨幣を扱うビジネスを「こつこつ働く奴はごくろうさんワハハ」と植木等のスーダラ節を唄うような気持ちでいたと思います。貨幣を扱うビジネスの場にマネーを持ち込んだのです。したがってこの決算内容は、マネーが貨幣に戻った瞬間をスライスしたものです。
マネーの怖さはこんなレベルではありません。アメリカ金融危機の暴走で世界が大不況になりました。これもマネーの怖さですが真の怖さはマネーを駆逐出来ないところに存在します。マネーは貨幣ですから貨幣経済が存在している以上にマネーもまた存在し続けます。
今回の金融資本主義の暴走で、金融機関が痛手を蒙りましたが、すでにアメリカの金融機関は回復をしています。それはマネーがまた動き始めたからです。
金融工学と名前が付いたリスクヘッジ方法を数学的に発見して対処する学問は、次々に深化して新しいリスクヘッジ手法を生み出し、そこに行き場を失った巨額のマネーが群がっています。
マネーは顕微鏡下で見るアメーバーの活動に似ています.自己増殖をしていくわけです。
弱いところに入り込んで、そこに存在する価値を吸い上げて去っていきます。
だから上記の企業もマネーの被害者なのです。マネーに価値を吸い取られた結果が1615億円の赤字決算をした姿です。
グローバルの名の元に「世界同一基準による経済活動を行うのだ、市場がすべてを決めるのだ」と言う意見が主流を占めましたことがありますが、マネーはこうして世界各国の弱い国に入り込んで自然を破壊し、貨幣の相場を極端に下げ貨幣を紙くず同様にして去っていきました。その被害国が韓国であり、タイであり、アルゼンチンであります。
私たちは韓国のウオンが安くなって旅行がしやすいと喜んでいますが、韓国経済は大変な危機に陥っています。タイもアルゼンチンも同様です。すべてはマネーのなせる仕業なのです。
今回の金融危機でもうアメリカ金融資本主義は崩壊したと言いますがとんでもありません。
ドルは世界の基軸通貨として印刷をすればいくらでも発行できます。国債を日本や中国に買ってもらえなければドルはいくらでも刷り増しをすることが出来ます。したがってドルは有り余っている。この有り余った貨幣がいつでもマネーに換わるのです。
マネーは一極集中して侵入しますから、そこにバブルが発生します。これからもバブルは発生するでしょう。振り返るとITバブルがあり、不動産バブルがありました。いずれも安値で購入し、価格を釣り上げて売り抜けて去ることがマネー資本主義の鉄則です。
だから企業経営はマネーを相手にしないで真面目にこつこつやるのだと言うことになりますが、真面目にこつこつでは生き残れないほど市場は変化をしているのです。
時代背景が変わったことが最大の変化です。成熟しきっている社会、少子社会、超高齢社会の三拍子が揃っているのが、いまの時代背景にあります。私は成熟しきっている社会が一番困難だと思います。商品に感動のない人たちが増えている社会を成熟社会と言うのですから。
そこで企業が生きていく上で拠り所にするものは何でしょうか。
こんな時代背景でどのように生きていかなければならないでしょうか。拠り所にするものはただ一つ、顧客と関係性を通じて顧客の価値を実現し持続した共生・共歓の関係を構築する以外に手法はありません。
皆さんの企業を支えてくれる存在は顧客です。顧客は唯一、売上げと利益を言う返済不要の現金を支払っていただける存在です。顧客を拠り所にしなければ企業はもう生きていくことは出来ません。
カスタマープリンシプルこそ、新しいパラダイムを持った企業に生まれ変わる唯一の方法で、それは出来上がっているのです。
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