【2009.10.16配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
中国の新大富豪が発表されました。なんとダンボールメーカーの女性社長が新たに仲間入りを果たしました。だからといって日本でダンボールメーカーを始めても大富豪になることはあり得ません。
そのわけは中国と日本では人口数が違うことと、急激に経済成長を遂げている国と成熟している国の違いです。
日本のようにこれだけ社会全体が成熟化しますと、ビジネスは共生関係の構築なしに展開することはできなくなります。成熟とは既存の文明に対する成熟という意味です。すべての商品とサービスさらにはエネルギーまで成熟しているのです。
顧客はいつでもどこからでも商品を購入することができます。成熟している社会は需要がしぼむ時代です。その上。少子超高齢社会が来ているのですから、需要は輪をかけて小さくなります。供給側である企業は需要という名の椅子を奪い合うことになり、椅子取り合戦が始まっているとはこの様子をいい表した言葉です。
さて、昨今、日本の状況ですが椅子を奪い合うために企業が取っている手段は価格を安くする戦法です。低価格製品を製造し販売できる仕組みを構築した企業は時代に呼応して収益を上げていますが、社会全体としては疲弊の方向に向かって進んでいることは事実です。
私はいまから6年ほど前に大手広告代理店の要請でユニクロ本社へ訪問したことがあります。
ユニクロは決して新しい会社ではありません。ユニクロ製品は山口県民からは安かろう悪かろうの代名詞とされていた時代もありました。かつて既製服が吊るし服と呼ばれてさげすまれていた時代がありましたが、それと同じでユニクロは安いけれど耐洗回数が低い粗悪品という時代があったのです。今、ユニクロの本社がどこにどんな風にあるかは分かりませんが、当時は山の中のプレハブでした。柳井社長は自社のセーターを着て仕事をしておりましたが、そのころから「うちは国内メーカーを基準にしていない。我が社が超えるものはGAPである」と幹部社員は志を語っておりました。
アパレルはファッションセンスと結びついた製品であり、常にシーズンに適合した鮮度を要求される商品ですから利幅があって、数さえ出れば安くしても利益率が高いです。そうした業種の特質を生かして、いまや時代にマッチしたビジネスになり高収益を上げていることは周知の通りです。
このような企業は別として別の業界を見てみましょう。
例えば家電業界です。家電メーカーは、製品をつくっても販売はヤマダ電機、ビッグカメラなどの大手家電販売会社や、ジャパネットたかたなどの通販会社などに依存しています。
この販売が熾烈な価格競争になっていることは承知の通りです。当然ながらしわ寄せはメーカーに覆いかぶさります。家電メーカーの努力とは自社製品で固めるための製品ネットワーク構想です。一台のリモコンでTVも録画機も音響設備も相互連携ができるというものです。しかしそれとて熾烈な価格競争から逃れるものではありません。
家電メーカーでは、季節労働者、非正規雇用労働者に依存しなければコストを削減できず、三人に一人が非正規雇用労働者になっている疲弊した格差社会の要因がここにあります。
誌面に限りがありますから本題に入ります。モノに関する需要は逓減の一歩をたどることは明らかです。この椅子を争奪する消耗戦に日本中の企業が参加しているのです。ユニクロのように仕組み化に成功した極一部の企業を除いて、大半の企業が消耗疲弊の道を進んでいます。
こうした企業構造が社会構造を変えています。こうした時代をつくり上げた要因は、ヒト、モノ、カネの三要素経営によるものです。
一方、顧客を中心にした経営四要素体制を仕組めば、新たな展開が生まれます。
一つのヒントは、時代がいやおうなしに共生・共歓社会に向かっていることです。
ビジネスにおける共生とは、顧客と関係性を通じて顧客の価値を実現し、持続した取り組みを実現することにほかなりません。
超高齢社会とは、この層に富が集中している社会でもあります。日本では貧困層だけがクローズアップされていますが全体をバランスよく眺めれば成熟社会を認識すればそこに新たな需要が生まれる社会でもあるのです。
日本は逓減する椅子を奪い合う戦いにだけ目を向けています。これは常に足元を追いかける日本の経営者に共通した悪い点です。片方で新しい椅子を創造する目を持たないといけないのですが、ヒト、モノ、カネの三要素だけを見ていたのでは、売れるモノを追いかけるしかないのです。経営四要素体制を持てば、顧客との関係性、顧客との情報のネットワーク、顧客情報のシナジーネットワークなどを構築して顧客の価値を実現することが可能になります。
大事な話をします。
自社の営業プロセスと、顧客の価値実現プロセスは実はまったく同じものです。しかし同じものにするためには顧客と関係性を通じて顧客の価値を発見し確認しなければならないのです。
そのプロセスを無視して自社の営業プロセスを推し進めるから顧客の価値を発見し実現することができない。結果として自社の価値実現もできないのです。そのことが分からないから日本中の企業は、消耗戦を強いられて結果として企業も社会も疲弊しているのです。
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