【2010.03.05配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
厳寒期経済の背景があって、日本中の企業が「コスト削減活動」を展開しています。
中には一切の投資を凍結している企業もあります。
こうした企業では経営者も管理職も頭を下げてじっと風雪を耐えていることになります。
ヒト・モノ・カネの三要素で経営をしている企業にとっては、ヒト・モノ・カネはすべてコストですから社内のすべてがコスト削減の対象になります。
企業が永続的な活動を続けている間に投資を凍結している会社は企業活動の大半をしていないことになります。
そこで、コスト削減を続けていては企業が参ってしまうことに気がついてきて、売上を拡大する事に投資をしようとする動きが見えてきています。経営者は息を押し殺すようにしていた状態から抜け出してきているわけです。
経営者や営業部が気付かなければならないことは、夏山向けの軽装備で営業活動をしていた営業部は、厳冬の重装備をしなければ全員が凍死をしてしまうような状況に差し掛かっていることです。
日本の営業社員は、カタログと会社案内だけを持って顧客に対応してきました。その上、SFAが導入されて見える化が実現しましたが、見えた営業プロセスは、単なる見積書提出までの会社都合で考えた手順であって、営業プロセスと胸を張っていえる代物ではありません。
高度経済成長時代には、この程度の装備でも製品は売れたのですが、厳冬時代には、冬山に適した装備が必要であるとの認識が企業にはありません。
企業は売上を増やす手法が分からないでいます。B2C向け大量消費商品、例えば缶コーヒーや、洗剤などはこれまでのマスマーケティング手法を展開し、フィールド・マーケティングを展開すればそれで売上を作ることができましたが訪問営業、集客営業を行う企業は長い間ヒト・モノ・カネの三要素に特化してきたがために、顧客に対する戦略がないからです。多くの企業人が、次は顧客だと言い切ります。けれどもどうしてよいか手法が分かりません。
売上を増やすために魔法の箱は存在しません。
経営理念を実現するために経営戦略が必要となります。経営戦略の中に営業戦略があります。営業戦略の中にカスタマープリンシプル〈顧客戦略〉があります。顧客戦略の中に営業プロセスがあります。顧客戦略は理論によって支えられます。営業プロセスは営業支援ツールによって支えられます。
売上を増やすには、営業プロセスが売上を伸ばす、契約率を高める、リピート率を高める、などの成果目標が必要です。目標が実現するためのプロセスでなければ意味をなさないからです。
するといまのSFAは、導入している企業のほぼ全部が営業部として求めている目標の成果が出ないことを粛々と行っていることになります。ほぼ全部です。
これでは売上を伸ばすことにもなりませんし、顧客戦略を充実させることにもなりません。
どうしてこうなっているかを考えますと、結局は日本民族の問題にたどり着いてしまいます。営業プロセスとは何かを深く考えないでプロセスの見える化と叫んだIT企業と、飛びついた企業。始めは俺も俺もと普及するけれど、おかしいぞと気がつき始めると一斉に放棄してしまう民族。ですから顧客戦略に関して企業内ではまったく積み上がらないのです。
あるIT企業は顧客企業に対してRFM分析で優良顧客を発見し育成するとのセミナーを打っています。かつてこのIT企業の社員が私の事務所に訪ねて「服部さんがRFM分析では顧客を育てることができないと本に書いてあって反発をした。しかし自分が流通業のCRM担当に転職して実際にやってみると服部さんの言うことが正しいことが分かった。しかし当時はRFMパッケージしか売るものがなくて売らなければ企業は食っていけないのだ。そのことはわかって欲しい。服部さんの主張が正しいことがよく分かったのでそのことを伝えたくて訪問した」と言っていたのです。彼が私の元を訪ねてから10年が経過するけれど、この会社の残った人たちは相変わらずRFM分析で優良顧客を育成するのですと言って販売をしているのです。
同じことはSFAにもいえます。SFAで売上が伸びると言っていますが現状のSFAで売上が伸びることはありません。
企業は、いまこそ新規の顧客獲得と、既存顧客の育成に投資をするべきです。しかし市場には上述したように玉石混合です。いやほとんどが顧客獲得、既存客の育成観点からでは実現不可能のものばかりです。それを新規顧客獲得、既存客の育成ができると言って販売しているから困惑するのです。
厳冬期を生き抜く最後の手段として顧客の獲得と育成を戦略導入した企業にとって、選択を間違えてしまえばまったく実現しないことに大きな経営資源を割くことになります。 実現しなかった企業はどうなるのでしょうか。最後の手段として選択した経営の夢も打ち破れてしまいます。
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