【2010.03.12配信】
神楽坂は私の事務所から歩いていけるところですが、ここに75歳の女将が店を張って商売をしています。女将は日本舞踊の名手で、三味線もプロです。唄も謡いますからたいしたものです。
女将は神楽坂の土地柄に着目して、お座敷遊びがカウンターでできるお店を開業しました。
お座敷遊びができるとなれば三味線が弾けて唄も謡える女性が必要です。女将は自分の弟子の中から抜擢して3名をカウンターに座らせ料理も運び、お酒を注ぎ、ショータイムには芸を見せることを考えました。
お弟子さんもアルバイトができて人前で三味線も引けるとなればやってみようかしらとなります。
女将は、こうして弟子をアルバイトとして使い、マナーを厳しくしつけて高級感あるサービスを展開しました。
お店は大ヒットして近くに二号店ができました。予約が殺到し、捌き切れないために近くに3倍ほど顧客の席を作ったのです。ここでもお弟子さんをバイトとして使い、大きく稼いでいました。
やがて不況になりますと、女将は一人単価を5千円ほど下げました。コースに出てくる業のひれ肉は、たれはそのまま鶏肉に変えました。
そしてお座敷遊びの看板を三味線ライブに変えました。
なんと琉球三味線も弾いて喜納昌吉が作詞作曲した、「花」も唄うようになりました。
次には1500円のランチを店先に並べて売りました。「安物を売る必要はないのよ。
たまにはおいしい料理を食べたいわって女の子は思うのよ」と女将は言いました。
「はじめは少なく並べて、少しずつ量を増やしたのだが、欲を出さないでいつも売り切れている状態が一番よいのよ」と言います。「残したら損が出るでしょう?」その通りです。
私がマーケティングの仕事をしていることが連れの人が話したために女将は分かっていましたから、二号店に中国の女性を置いて中国観光客向けにお座敷遊びの店に変えたいと思うけれど、どう思います?と電話がありました。
骨付きとか、皮付きをだすと床に吐き出すマナーがあるから料理を変えてやったら良いんじゃないのと言いましたら、いいこと聴いたわと、喜んでいました。
その前は、名刺はたくさん持っているんだけれど、誰が大事な客かわかんないのよ。
いい方法があったらやり方を教えてくれる?と、電話があったこともあります。
女将は「足腰が痛くてもうだめよ、何せ後期高齢者なんだから」と言いながら、ベンツの高級スポーツカーを所有していて、片道300キロもある別荘に吹っ飛ばしていきます。
現地集合、現地解散で一緒に行きませんか?同じクルマで行くと事故があったりすると面倒でしょう?だから現地集合、現地解散が一番いいのよとケロッといいます。
この割り切りと活力が今の日本人に欠けている所です。不況を吹き飛ばすような元気な女将の話でした。
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