【2010.03.19配信】
優良顧客の定義は企業に居ては難しい作業だと思います。多くの企業は優良顧客の定義を、顧客データベース分析を担当している部署に任せます。
彼らは社内では自分の部署こそが、顧客のことを一番知っている部署だと自認していますから、腕に磨きに磨きをかけて優良顧客とはこういう顧客だと定義をします。
しかし、私から見ると大きな履き違いをしています。
データベースから抽出する優良顧客にはだれが定義しても共通した誤りをします。
一つは、過去一定期間におけるR・F・M値の高い顧客を優良顧客と決めることです。
このパターンは極めて多く、どこの企業でも優良顧客像をデータ分析者に委ねるとこうなるという典型的な誤りです。分析担当者の多くは過去の一定期間における高額購入者、高頻度購入者を選択します。
RFM分析の欠点はR・F・M、またはF・M、あるいはR・M、R・Fマトリックスを区分けして作ったセルに優良顧客と名前を付けて、顧客そのものに、優良顧客フラグを立てませんから、RFMセルから抽出した顧客は、抽出のたびに入れ替わります。優良顧客分析のたびに入れ替わってしまうのは果たして優良顧客と正しく定義をしたことになるのでしょうか。
二つは、過去分析であることです。過去の一定期間における分析では、あるいは過去の長期間分析であっても過去分析であることには違いありません。
BREA理論では、過去の結果分析では優良顧客を定義することは困難と考えます。
優良顧客の定義とは、どのような顧客になってもらいたいかを企業都合でよいから定めることです。企業都合でよいからと言う言葉には重要な意味合いが含まれています。優良顧客とはそもそも企業が作った言葉であって、顧客は自らが優良顧客だと意識はしていないはずです。ですから深く考えると優良顧客という言葉は不遜というか企業都合の言葉です。
けれども顧客にどのような状態になっていただけることが企業としての希望なのかを定めることは重要です。大事なことは、企業が定めた優良顧客ポジションに向けて、「顧客と企業が関係性を通じて価値を発見し実現することで、優良顧客へ昇る階段を顧客自らが駆け上っていただくこと。このことこそがBREA理論における優良顧客を定める目的です。
優良顧客を定義することは過去のだれが優良顧客であるか、あったかを特定することではなく、当社にとってどのような顧客が優良顧客というのかを定めることです。
分析をして決めることは当然ですが、この人が当社にとって優良顧客ですと定義するのではなく、分析の結果、当社の優良顧客とはこういう人だと思いますと決めることが優良顧客の定義をする第一歩です。
一番大事なことは、優良顧客像に向けて、多くの顧客が昇ってもらえるようなシナリオを作ることにあります。
ここを履き違えている多くの企業はRFM分析で優良顧客を抽出しDMを頻繁に送り続けています。なかには長期的スパンで優良顧客を抽出し、この顧客こそが優良顧客であり、我が社の財産であるとばかりセールやプロパー時期のDMを出し続けている企業がありますが、顧客属性を追いかけると、すでに購買年齢を過ぎている顧客層が圧倒的な比重を占めたりして思わず苦笑いをしてしまいますが、分析屋に一任している誤りが顧客政策の大きな失敗を招いていることを実感します。
RFM分析で抽出した優良顧客には、これからの(将来の)優良顧客など一人もいないのかもしれないのです。優良顧客像を決めることは、過去のあるいは現在の優良顧客とは誰かを決めることではなくて、どのような顧客に育って欲しいかを企業都合でよいから目標値を決めることであって、優良顧客像に満たない顧客を優良顧客像に育て上げることのゴールを定めることに他ならないのです。
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