【2010.04.23配信】
専門職と総合職という分け方が企業にはありますが、組織の上位に立つ人は総合職として扱われます。ですから組織の上位者は、企業の業務に詳しい人材で占められ、専門的な知識に関する教育を受けていません。
日本企業は雇用形態が、終身雇用体勢であったがために、社員を一部の職種を除いて専門的にスキルを上げることよりも、多数の職種を薄く広く経験することによる企業通、企業内人脈通に優れた人材として育てていきました。
その結果、専門知識が向上せずに企業内のあらゆる業務に広く浅く秀でている人が企業にはたくさんいます。
日本企業がグローバル競争に突入して、他国の企業と競争に負けて次々と遅れをとっているのはこのような制度が影響していると私は思っています。
企業が高度経済成長時代には、業績は向上し、売上も年々増えていましたから、社員数も比例して増えていました。そのような時期では幹部社員は総合職として採用し、人事異動を頻繁に行ってあらゆる職種を覚えて出世することは適していたと思います。
問題はその結果、専門的分野で広い知識を持った人が組織を構成するのではなく、社内事情に長けた人が構成する組織になってしまったことです。
言い換えれば、企業経営を専門家集団による形式知で動かしていくのではなく、社内事情に長けた集団による和の暗黙知で動かしていく集団になってしまったことです。
例えばCRM分野を見ても企業にCRMの専門家はいません。
企業が顧客に関する専門家を育てていないからです。また何が基準であるか専門的分野での研究開発が進んでいないからです。
私がかつてアメリカの金融業界を視察した時に、投資やM&Aを行う企業はITとバイオに関する専門家をそれぞれ100人ほど抱えて投資やM&Aを行う企業の業務内容がどの程度のレベルか、開発している製品の将来性について適切に即座に判断していました。
ものの見事な専門家集団が企業を支えていたわけです。
彼らは専門分野を原理原則的かつ体系的に網羅していて、その会社が発明した製品やナレッジがどのレベルのものか、その将来性についてなどを適切に判断できたのです。
日本の金融業が過去の業績と担保能力を頼りに融資をしている実情と比べて、専門家集団が組織を動かすアメリカ企業は、専門家集団を持たない日本の企業との差を大きくつけるなと思いました。アメリカでは転職は当たり前で、転職をするたびに専門的なスキルと経験が上がり、優遇されます。中国でも同じです。
日本ではCRM分野に限って言えば、多くは情報システム部がCRMに関する予算を握っていてシステムを起案し、導入の決定権を持ちます。
情報システム部は情報システムに関する専門家ではありますが、CRMに関する専門家ではありません。
ですからパッケージの持つ機能比較を選択の基準となり、機能が多いほうが営業部の要請に応えられると判断をしてパッケージを選びます。
ですからシステム的には機能を生かして構築できても、使わないCRMや使えないCRMが生まれてしまうのです。これは顧客戦略に関する専門家が企業に存在していない結果です。
話は一時的に変わります。
私は来る5月28日にSCC日本支部の主催で「カスタマーチェーンを見直す」というテーマで講演を行います。SCCとはサプライチェーンカウンシルの略で本部はアメリカにあります。SCCではサプライチェーンに関しての製品設計からデリバリーに至るまでプロセスが完成して、しかもそのバージョンは著しく進化しています。
サプライチェーンを極めるほどにCRMとの連携が必要になる事が分かってきて、その提案を私が同講演会で行うことになりました。〈講演会の詳細を入手しますのでメールマガジンに詳細を記載いたしますので参加申し込みすれば受講できます。無料です〉
SCMとCRM(SFA)をつなげる夢が実現すれば、メーカーは全社的な業務プロセスを標準化して、経営全体が可視化できます。そしてベストプラクティス経営が実現できます。
多くの企業が大変な資金を投入してここに挑戦したのですが実現しませんでした。その要因は営業プロセスが真実の営業プロセスではなかったからです。つまりは真の営業プロセスを構築できる専門化が不在だったからです。
サプライチェーンとカスタマーチェーンが繋がれば工場と営業と顧客が一直線上に繋がることになります。このことによるプロセス改革は、世界進出での他国での企業プロセスの標準化に多大なる寄与をいたします。
SCCが始まって以来の内容「カスタマーチェーンを見直す」とは、カスタマーチェーンとサプライチェーンを連結して新たなバリューチェーンを構築することに他なりません。
私はこの講演では、CRM〈SFA〉の営業プロセスが製造〈作り手〉の発想で出来上がったもので真の営業プロセスではない事を論理的に喝破し、その上で真実の営業プロセスとはこのようなものだと、本物の営業プロセスを具体的に提示します。その上で真実の営業プロセスを進める事により、サプライチェーンとこのように結合していくと言う話をします。
話を元に戻します。
どこもサプライチェーンとカスタマーチェーンと連結できていない、もしもできたら世界中の大企業は一気に製造と営業プロセスを連結していつでもどこでも展開できる経営全域プロセスの標準化が可能になるのですが、このような想像を超える話を、自信を持ってできるのは私がCRMに関して原理原則的な、高度の専門能力を持ち備えているからです。
専門的な能力で専門分野を深く掘り下げているからSCMとCRMが、SCCの用語で言えばSCOR(Sコア)とCCOR(Cコア)とがバリューチェーン化できるのです。
このことは私の自慢ではなく専門分野を掘り下げているから実現できるという証として加えました。
話を戻します。
日本企業は、企業通を育て、専門分野における専門家を育てていません。だから専門的分野では企業が持っている専門知識よりわずかに高い、ちょっとだけ高いレベルの知識があれば納入が決まってしまいます。ここに専門性は無くてもです。
また専門能力を持たない上司がジョブローテーションでいろいろなポジションを回遊しますが、彼らには専門的な能力を持ちませんから適切な判断ができません。こういう人が場違いな判断をして部下を困らせ、挙句の果てはせっかくの事業チャンスをつぶすような事が大企業で散見しているのは、専門性を持たない人が上司に座る欠陥です。
アメリカでは専門家を育てます。組織がどの分野でも上に立つ人は専門家です。
だから彼らはこのやり方とこのやり方があってこのやり方の長短はこうで、こちらのやり方では長短はこうだと冷静に判断できます。当社の現状はこうだからこのやり方を採用しているが、将来当社がこのやり方になったらこの手法に変えると将来予測を立てます。専門家だからできるのです。
専門家を育てるのか、企業内総合職を育てるのかは、議論があります。
私はCRM分野を見ていて、なぜこんな考え方が支持されるのか、これはこんな風に失敗すると予見ができます。多くの場合に与見通りになります。私が専門的な直観力を磨いているからです。
私が失敗するだろうという考え方を持った売り手がいて、買い手ができて導入しているのは、売り手にも買い手にも専門家が存在していなかったからだと思います。
グローバル競争とは専門性に基づいた競争です。先端技術は特にそうです。私はこれからの人事は専門性と関係性を教育する事だと思っています。
まもなく本当に厳しい競争時代がやってきます。いつまでも高度経済成長時代の考えに抜けきれないでいる日本の姿を見ると、路頭に迷う人の多くは専門的な教育を受けていない人だと思いますが、皆さんはどう思われるでしょうか。
企業活動がグローバルに動き、終身雇用制が崩れてきている今日、企業は自社だけに通用する人間を育てるのではなく、どこに勤務しても通用する人間を育成するべきと思います。
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