【2010.06.25配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
私たちはルネッサンスを文芸復興と習いましたが、いまは言葉通り「再び誕生」転じて「再生」の意味で使うようです。
企業は顧客との関係性(Relation ship)を重視することに注目を始めています。
そんな意味でリレーションシップ ルネッサンスと言ったのではありません。
日本はモノ造りの国として発展を遂げてきていますから、経済団体のリーダー達は、重厚長大型企業やメーカーから、いまだに選出されているのが現実です。日本にはモノ造りからの目線、上から目線という言葉があります。いずれも顧客思考に立っていないことを表現したものですが、もっというと営業思考にさえ立っていないのです。
「それは営業の仕事だろう。ほかに誰がやるのだ」と言わんばかり上から目線でなんでも営業員に押し付ける企業癖があります。
私は企業が顧客との関係性を重視しだしたことは遅きに失したと思うくらい賛成です。
けれでも「それは営業員の仕事だろう」と営業員に押し付けられたらどうなるのでしょうか。
答えをいいます。営業員は毎月の売上を追いかけるのが一杯で顧客との関係性を深めることはできないでしょう。すると顧客との関係性を重視せよとする経営政策は実現できません。
リレーションシップ ルネッサンスと申しましたのは、この課題を解決するためにリレーションシップを再誕生させようとする意図からです。
私はメディアの働きを注目しました。
例えばテレビCMです。今でも残っていますが昔のテレビCMは、どこの会社のCMか分からない画面が続いて、最後に社名が出てお終いとするものが圧倒的に多かったです。企業がブランディングを高めることが目的でした。なんと静的な、欲のない上品なCMであったかと思います。
そのうち、集客型のテレビCMが出てきました。週末新車試乗会、大セールなどの告知です。
このCMを観て顧客が駆けつけることになりました。顧客の心を動かしたのです。これまでのブランディング型CMと比較するとメディアとしての機能が変わりました。
しかしテレビは視聴者数が圧倒的に多いですから告知力が長けています。顧客の心が動くのは当たり前のことです。
ところがテレビショッピングはどうでしょうか。テレビショッピングは話術力、画像力で顧客の心を動かし購買まで動機付けています。背景には縁日でハブを袋から出すと言って顧客をひきつけてハブの油?を販売するほどの大道芸人の話術に似た会話力と、一流品を扱う製品力、そしてバックヤードに大量注文を引き受けるコールセンター力とで顧客の心を動かすメディアに変化していきました。
それでは企業が使用するメディアを考えて見ましょう。新しい話題ではiPadですが、いまのところ顧客の心を動かすことまでは至っていないようです。
日本中がiPadを手にして、どう活用したらよいかを考えている時期と思いますが、私が訪問先でiPadの話題になると強い関心を示すものの使い方は今ひとつ分からないとなります。
カタログはどうでしょうか。
製品カタログや会社案内を見ても顧客の心を揺り動かすことはできるようにはなっていません。どこの会社案内を見ても自画自賛で、未来に羽ばたく○○○グループなどと世界地図に航空路線のような線がたくさん入って拠点数を誇るようなものばかりで、到底顧客の心をゆり動かすものにはなっていません。
顧客の心を動かすとは、営業プロセスを進捗させるという意味を持たせての発言です。
いま、企業が顧客との接点設計を重視してきていると冒頭に申し上げましたが、顧客との接点とは突き詰めれば営業プロセスのことです。そして顧客接点とは接触時と非接触時期があるということです。
賢明な本MM読者の方々にはこれで私が言おうとすることがご理解できたことと思います。
企業が顧客との接点設計を重要視してきたことは時代の流れとして当然の帰結ですが、それは顧客接点設計と名付けた営業プロセスのルネッサンスであり、言い換えればリレーションシップ ルネッサンスの観点から考えなければならないことです。
そして顧客接点設計にはメディアの役割を重視しなければならないのです。
ここを定義しないと、それは営業員の仕事であろう。ほかに誰がやれと言うのかと正論がまかり通ってしまうことになります。
いままで私が知る、企業の顧客接点設計を振り返って見ますと、必ず顧客と接触しろと指示命令しているように思えます。
必ず訪問する顧客、訪問したほうが良い顧客、必要な時には訪問する顧客、声が掛かれば訪問する顧客などと、企業ごとに顧客ターゲティングを展開していますが、顧客接点の再設計は営業プロセスの再設計であり、同時に営業員に負荷をかけないで顧客の心をつなぎとめる設計でもあるのです。
メディアはフレームワークであり単なる器です。大事なことはどのメディアを使って戦略的なコンテンツをどのように載せるかです。戦略とはここでは営業プロセスを進捗させるための戦略で、それを実現するコンテンツが営業プロセスを進捗させるのです。
ジャパネットタカタの戦略とコンテンツはテレビメディアを使いました。同じテレビショッピングのQVCやショップジャパンでのトークもまさに同様です。そして多くの顧客の心を動かし、購買につなげて急成長をしています。
戦略とコンテンツを持てばメディアは自律的に顧客の心を動かし、次のプロセスへ進める役割を果たします。メディアがまるで心を持ったようにして自分自身を律することができるのです。戦略と戦略に従ったコンテンツを持ったメディアを私はマジカルウエポンと名付けました。
くれぐれも顧客との関係性を深めるのは営業員の仕事だと決め付けないように。仕組みで関係性を築いていかないと成功しません。リレーションシップ ルネッサンスの時期が到来していることを経営者は認識しなければいけません。
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