【2010.10.22配信】
ブレアコンサルティングの服部です。
最近、顧客価値を実現することが大事なことだと改めて言われ始めています。多くの経営者が対談などで語っておりますし、顧客価値の実現が営業の目的だと改めて言い始めている企業が増えています。
営業は顧客を知って顧客が求める価値を実現することが必要だというわけですが、「言うは易く行いは難し」の典型的なサンプルのような話です。
顧客を知るとはどういうことでしょうか。定義が曖昧です。営業はどのようなアクションをしなければならないのでしょうか。ここも曖昧です。知ったとはどのような状態を指すのでしょうか。ここも曖昧です。どうすれば顧客を知ることができるのでしょうか。
ここも曖昧です。顧客が求める価値とはどのようなものでしょうか。曖昧です。価値の共有とはどういうことでしょうか。曖昧です。顧客が求める価値を寸ぷん違わず営業が共有することはできるのでしょうか。ここも曖昧です。価値を実現するとはどういうことでしょうか。ここも曖昧です。そもそも顧客の価値を実現するには会社の価値が実現しなくなることだってあります。そこをどう整合すればよいのでしょうか。企業はそれを許し評価をするのでしょうか。
曖昧とは定義がされていないだけでなく、手法が示されていないことを差します。だから顧客を知り顧客の価値を実現せよは、漠然とは分かりますが、営業員が実行するには大変な困難が伴います。その上、営業評価が昔どおりに売上金額と利益金額だけだとしたら、それは何一つ変わりません。
営業目標を厳しく追及している企業では、顧客を知り、顧客の価値を共有せよといってところで誰も振り向きません。上司から厳しく追及されているのは目標売上と目標利益だけだとしたら、誰でも目先の数字だけを追いかけます。
一方、顧客を知って顧客の価値を共有することができたとしても売上につながらなければ意味がないという意見は間違いではありません。
営業員の中には顧客と関係を深めて、顧客の言いなりになって、顧客から可愛がられていても売上が一向に伸びないという人がいます。知識を知恵に変えられないからそうなるのですが、二律背反のようなところが、顧客を知り価値を共有せよという理念にはあるように思われるのが、実行するのがむずかしいというもう一つの理由です。
顧客を知り価値を共有することは、目的を実現するための目指す行動指針のようなもので、ここには具体性が伴っていません。
顧客を知り、顧客の求める価値を実現するには、概念を具体的に一つひとつ最小単位にまで落とし込んで定義し、手法を示し、人事評価方法まで変えて、教育訓練が必要となります。
それ以上に、言葉だけではない、実行を伴った経営理念を変える必要があります。
その実現にはトップの強力な支援が必要になります。
顧客を知るためには何を知る必要があるのか、定義が必要です。
簡単に顧客を知ることはできません。だから関係性が必要になります。ところが関係性とは何かと定義が必要です。多くの場合、関係性とは親しくなるということで理解されていますが、親しくなっただけではだめです。顧客から好かれても売上はさっぱりという営業員は、親しくなっただけで、信頼性が構築されていない結果です。
信頼関係を獲得するには、情だけでなく、理が必要です。BREA理論で情のアクション、理のアクションと言っているのは顧客と信頼関係を構築するためにということがお分かりと思います。
信頼関係を築くことができれば、顧客を知ることができます。ここがBREA理論のASKに相当するところです。
さて問題は顧客の価値を知って共有するところです。
顧客は抱える課題や求める課題を整理できていないです。一部分は明確になっても全体像が見えていません。顧客が抱える課題や求める価値は、あくまで自分の企業についてですから、主観的な情報であって、客観情報ではありません。
だから未整理な主観情報を顧客と一致して共有することは不可能なことです。
そこでBREA理論は抱える課題や求める価値を多くの顧客から集計して整理して顧客に提示すれば、ここに顧客の抱える課題や求める価値は存在することになります。顧客はただこれとこれが私の抱える課題であり求める価値であると指呼するだけでよいのです。
しかしこれだけでは十分ではありません。共有するなどは刷り合わせを何回も行わなければ実現しないからです。分かったといってもどの程度が分かっているのかは刷り合わせが必要になりますし、分かっている範囲と深さも刷り合わせが必要になります。
このプロセスの結果が価値を共有する成果を実現することになります。
すると課題解決方法(ソリューション)や、価値を実現するにはうちの製品で実現できますと言ったのでは顧客は引いてしまいます。まずは客観的な解決方法を提示して顧客からの真の納得を得なければなりません。
抱える課題や求める価値を実現する方法として客観的な解決方法を示し、それを実現するには私どもの製品で、ここの部分が実現できますということが鍵になります。
これらはカスタマープリンシプルに基づいたBREA理論と、マジカルウエポンによって実現できるわけです。
すでに20年近く前、アメリカの百貨店ノードストロームは、自店で販売していない商品を欲しいという顧客を案内して隣の百貨店まで連れて行き一緒に商品を選んで、商品が決まったらライバルの百貨店の店員さんに声を掛けるという販売スタイルをとっておりました。真の顧客価値の実現とはこういう販売方法であるとオーナーは20年前から分かって実行していたのです。だからアイルランドからの移民としての靴屋であったノードストロームはアメリカ有数の百貨店に成長して行きました。
顧客の価値を共有し、自店に扱っていない商品ならライバルの店にお連れすると言う経営理念を持っていたからこそできたことですが、顧客を知り価値を共有することの真の意味を理解することが、大切であると思います。
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