損害保険業の話からリレーションシップに話は飛んでしまっていたので、この話を損害保険業に戻す。
生命保険は契約をすると長期間継続するのだが、損害保険、特に自動車保険や傷害保険は、途中解約あるいは再契約をしない率が年々増え始めている。
これまでは再契約をしないことがあっても新規加入率がそれを上回っていたから問題にならなかったのだが、最近は逆転をし始めているので、再契約率が問題になってきている。
代理店制度を敷かなくとも、インターネットからダイレクトに契約できることになって、その分保険料が安くなってきたことによる鞍替えが増えてきていることが大きな理由だが、見逃せないのは、損害保険販売企業と顧客との関係深化がなされていないことである。
損害保険業に携わる人々に話を聞くと、言い分はある。
関係者は、例えば代理店の人たちは事故が発生していないときには顧客とリレーションがとりづらいだとか、顧客の方からリレーションされることを嫌うのだということを挙げる。
しかしそれは我々から見れば単なる言い訳に過ぎない。
当社のHPでハウジングメーカーへのコンサルティング事例が掲載されているが、ここでは建てたあとの顧客に対するリレーションシップの成果で、なんと顧客からの新たな建築主紹介が、1ハウス展示場の年間契約率を上回ることが支店長自ら語られている。
Sハウスにおける成功の秘訣はリレーションシップの質である。
リレーションシップの質とはシナリオとリレーションシップツールのことである。
いつ(どのようなタイミングで)、誰に(どのような時期を迎えている顧客に)、どのような目的で、どのようなシナリオに基づいて、どのようなリレーションシップを行うのか、そして一回だけではなくシナリオに則り、継続して実行できるのかである。
このことが正しくデザインできて実行されれば損害保険業の再契約率は必ずアップをする。
優秀な代理店は契約者とのリレーションシップを欠かさない。わざわざ箱根に行って現地でたくさんの絵葉書を買って、旅館に入ったら温泉にも入らず、テーブルに絵葉書を広げて顧客名簿をカバンから取り出し、一人ひとりに(顧客の顔を思い浮かべながら)、レターを書いて投函することをやり続けている人を知っているが、もちろん大変な好成績者である。この人に話を聞くとこうした事例をどの損害保険会社も持っているが、この事例は特別、あの人は例外と処理してしまって、企業の形式知にしていかないのだそうだ。
日本では人口が減り続けるわけであるから、企業はおのずと自社の顧客を維持育成していく仕組みを社内に作らなければいけないのである。
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