この世の中は20:80の原則で動いているといわれている。
フランス有名ブランドメーカーのデータで、顧客全体の20%で50%の売上げを上げているケースもまれには存在するが、多くの場合は、上位20%の顧客で80%の売上げを上げて、そして残り80%の顧客数で20%の売上げを上げている原則は間違ってはいない。
顧客マーケティングの目的は20%を顧客といかに関係を深めて継続した売上げを創っていくかである。したがってこれまで顧客マーケティングは「ショートヘッド」をターゲットにしたものであった。
限度無しで顧客マーケティングの販促予算を使うことはできないから「ショートヘッド」層に特化したアプローチを掛けることは正しい。
上位80%の売上げを上げている20%の顧客層に、販促予算を特化することは非常に効果的で効率的である。
このマーケティングはデータベースマーケティングと呼ばれている。
ただ、データベースマーケティングは、そもそもデータの見える化、つまり過去データの集計が目的であって、マーケティング展開部分についてのロジックは存在しないといってよい。
見える化で抽出した顧客にDMをだすのですということで終わっている。
だからデータベースマーケティングというのは、実際にはデータベースの機能に限定され、しかも分析した結果が見えるということだけである。
データベースマーケティングの最大の欠点は、データそのものがタイムスライス(一瞬の時間を輪切りにして見せている)ものであるということだ。
抽出条件が何年何月何日~何月何日までと制限されるがゆえに、あくまでも期間データであって、その期間では顧客のAさんが「ショートヘッド」に存在するから優良顧客と認定をしても、次の抽出条件ではAさんが「ショートヘッド」に存在しなくなる可能性は高く、したがって「ショートヘッド」イコール「優良顧客」という図式は当てはまらない。
そこがデータベースマーケティングと言っても、実はマーケティングにはならない、マーケティングの限界を示し、悩ましい存在となっているわけである。
一方、ロングテールとは残りの80%の顧客をターゲットにできるビジネスモデルであり、インターネットだからこそ実現できるものである。
例えば着メロや着うたはロングテールビジネスを明快に物語っている。
月に100円の課金で、好みのメロディをダウンロードして聴くことができる着メロビジネスB社では、500万人の会員組織を抱えている。
一人の顧客は月間100円から200円しか支払わないが、会員数が500万人と圧倒的に多いので、月間8億円がチャリンと入金するビジネスモデルこそロングテールビジネスなのである。
2年前にカード会社のコールセンターから月々970円で万一の場合1000万円を補償しますという傷害保険の勧誘があり、970円なら昼食代と加入したが、後から考えるとこれもロングテールビジネスだろう。
それではインターネットビジネスは、すべてロングテールかといえばそうではない。インターネットビジネスとして代表的なショッピングサイト「楽天」は、「ショートヘッド」ビジネスである。
多くのビジネスは「ショートヘッド」に存在する顧客を対象にしたマーケティングが必要であり、その技術的な成果実現のために顧客マーケティングが研究されているわけである。
私が創案したメソッドはデータベースを使う点ではデータベースマーケティングの括りに入るが、育成すべき顧客を条件設定し、条件に叶う顧客を毎日、自動的に拾い上げて、顧客育成シナリオに基づいて育成していく。育成シナリオは人間が創案し広大、精緻、複雑にわたるシナリオをシステムに登載する。つまりPLAN(P)の人知化、そして人間技では絶対でき得ない広大、精緻、複雑なシナリオのACTION-DO(D)をITが自動生成する。
データベースマーケティングでは(P)をITに任せ、(D)を人間が実行することと比べ大きく違っている。(D)を人間がやるから広大、精緻、複雑なシナリオなどやれるはずがなく、結局はやったりやらなかったりし、さらにタイムスライスし抽出した顧客は、抽出条件を変える毎に対象が変化するのであれば顧客育成、LTVなどの実現はありえない。
上位顧客を対象にしたビジネスは古いとか、これからはロングテールビジネスだというキャッチーなコピーは、時代の流れを包んでいるかのようだが、一人100円を毎月数十万人、数百万人から取り続けるビジネスモデルの構築は限界がある。いつかは成長が止まるからだ。時の流れとともに顧客は成長し関心事が変化をする。新しい世代は別のコトに関心を示す。だから80%の顧客を対象に少額を取り続け成長していくことは実は至難である。
今流行りの音楽配信ビジネスでもこうした時の流れに乗って流されている顧客をつなぎとめていく価値を常にフイットさせるのは、そのうえ長期的に展開しビジネスを成長させるのはやはり日夜の努力が必要となる。
「優良顧客を育成する」「LTVを実現する」この考えは、最適経営を実現する上での、原理原則なのである。だが、優良顧客の定義は変る。ネットの時代になるとすべての顧客が、購入する時は当店から買ってくれる顧客を育てることが必要で、年間10万円の購買力がある顧客が10万円を当店で購入いただけたらそれは優良顧客だ。一方で100万円の購買力を持つ優良顧客が100万円を当店で購入いただけたらこちらも優良顧客になる。どちらが大切かと言えば企業視点では100万円客だが、顧客視点では10万円顧客も同等になる。
三越が電飾看板で時折見かける次の言葉は顧客に対する三越の立ち位置を表していて、好きだ。
「晴れの日も雨の日もお買い物は三越で」。
100万円買える時も10万円しか買えない時もお買い物は三越でと解釈すると、顧客を大切にする意味が明確に見えてくる。
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