ロングテールビジネスは、これまで無視をしていた、2:8の法則における80%の顧客を対象にしたビジネスであるというのは間違いである。
ロングテールビジネスの本質は、「サービス提供のインフラビジネス」であって、全体の20%の売上しか占めていない80%の顧客を対象にしたビジネスではないのだ。
2:8というコンセプトを取り外した領域でのビジネスであって、それを2:8に引っ掛けて語るのは、本来正しくない。2:8の法則で語るとロングテールビジネスの本質を見失ってしまう。
着メロ利用一ヶ月150円。会員数500万人。ロングテールを語るときにこの事例が出てくるが、本質は頻度の高い定額商品をダウンロードできるインフラを整備することによる実現するビジネスであって2:8の法則はまったく関係のない話である。
このビジネスは商品(サービス)価格が安いことが条件になる。
価格が安いことで顧客をたくさん集めることができる。価格が安いことでキャンセルがでない。
二つ目の条件は継続性である。
保険会社がカード会社と連携を取って970円の傷害保険をコールセンターでアウトバウンドして大量の受注を取っているが、これも安いからたくさん集まり、保険商品であるために継続性がある。加入している間だけ補償される。安いから断る気もしない。ロングテールビジネスは掛かる意味合いで「まあ。いいか!ビジネス」なのである。
着メロの継続性は新曲が次々とでることである。だから脱落しない。
三つ目の条件は集金が自動的になされる点である。着メロは通信会社が代行して集金してくれる。傷害保険はカード会社が自動引き落としてくれる。
以上、ロングテールビジネスに2:8の法則はまったく関係がない。
一方、これまでのデータベースで顧客を抽出するための方法は結果として2:8の法則に準拠している。
優良顧客とはデータから抽出される上位顧客であると定義されているからである。
上位顧客とは期間の定義が加わるから期間を変えて抽出するたびに優良顧客の定義は変動する。
そんなことはまじめに考えれば判ることだが、底辺に2:8の法則で縛られている何者かが存在している。それは下位顧客を抽出してDMを出したと仕事をするより、上位顧客に出しましたと仕事をしたほうが企業の正義になるからである。
20%の上位顧客は常に入れ替わっていて、上下循環をしているのが普通である。
服部メソッドは上位20%も含めて100%の顧客からポテンシャル度を見つけて条件を設定し、条件に叶った顧客を機械的に拾い上げ、別プール化し、育成シナリオによって恒常的な上位20%顧客にしていこうとする考えである。
下方は先週号のMMを読んで、読者の方から(20:80の法則について)下方のようなメールを頂いたものを、ご本人のお許しを得てお名前を外して全文を掲載したものである。
またその後ろにあるURLは2:8の法則についていくつかの文献? 掲載のURLを掲げたものである。
20:80の法則について
20:80の法則について、私自身が科学的データで検証したわけではないですが、体験的には確かにほとんどの場合に存在します。
1)以前責任者をしていたカード会員組織(在籍数40万人)
2割の会員がいつも全体の8割のカード利用を占めていた。
2)その推進組織
2割の特約販売店が8割の商品売上や会員募集を稼いでいた。
3)知り合いの公認会計士
2割の顧客企業が(いつのまにか)8割の売上を占めているそうです。
4)プライベートな親睦組織
常連といえるメンバーは2割。
5)人事考課
2割の社員が表向き8割の収益を稼いでいる、と巷間よく聞きますし、私の管理職経験でもそうでした。
最近の企業は成果主義と称して頭2割(ショートヘッド)を優遇しています。
残り8割(ロングテール)を冷遇か、切り捨てようとしています。
切り捨ててしまうと、皮肉にも2割のエリート集団が、さらに2:8に分化するそうですね。
服部先生も、多分、このロングテールの解析にマーケテイングの要諦があると見て、ブレア理論を主張されているようにお見受けします。 そこまでは私自身も同感なのですが、人の集団が必ず2:8に分化する 根源的理由がよく分かりません。
(それが解明できたら、おそらくノーベル賞に値する発見かもしれません。)
早稲田大学の池田清彦教授は「頭脳の活動が劣ると解釈されている学習 障害は病気ではなく、個性だ」と主張し、IQが60以下でも驚異的な知的労働、 たとえば6桁の数字の立方根を計算できる人がいるのが、その証拠だという理論を述べています。
つまり、人間の根源はある種のOSを共有していても、知的レベルを簡単に 定量化できるほど単純ではない、のではないでしょうか? 昔から、歴史を変えた人は、変人、奇人が多いようですが、それは頭脳が優秀だったかどうかよりも、常識的な人より”予見に囚われない純粋な性格 だった”と考える方が納得できます。 私見では、生命は、いつの場合も表(2割) と裏(8割,正確には中間層が6割)が 絶妙なバランスの上に立って流動的・循環的に活動しているような気がします。言い換えると、8割のロングテールとは、2割の樹木(ショートヘッド)を支える土壌のようなものではないでしょうか? そうすると、確かに服部先生の言われるとおり、いつ土中にある種が何かを契機に育ち、開花してもおかしくない。
釈迦に説法のようなメールですみません。
マーケテイング理論の多くはテクニック偏重ですが、深いところを突いておられる 服部先生のご活躍を祈念申し上げます。
▼パレートの法則(情報マネジメント用語事典)
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/paretoslaw.html
▼パレートの法則(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/パレートの法則
▼「20対80の法則」本(Amazon)
http://www.amazon.co.jp/
服部からの返事
実際には20:80の法則はあるように感じていますが形式的に成り立つ論拠が乏しいのが20:80の法則ではないかと思っております。
私は自然界の法則に20:60:20の力関係というものがあって、こちらが正しいのではないとおもいます。なぜその法則があるのかというと種を守っているのではないかと根拠なく勝手に思っております。
例えば小魚の群れが大きな魚に襲われる時に、小魚は一つの大きな塊に変化しますが、この塊の中に20:60:20の法則が存在し、あの形をつくり上げているのではないかと思います。
20:60:20はグラデーションになっていて、三つの塊があるのではなく緩やかなカーブを描いて一つの山のカタチをつくり上げているのだと思います。
おしまいの20の中も20:60:20に分かれているのだと思います。魚の例を広げますと、力の弱い魚が群れから脱落し、群れを離れることによって大きな魚の餌になる。大きな魚が脱落した小魚に関心を持って追い回し食している間に大きな塊となった強い小魚は逃げ、強い種を残す役割を果たしているのではないかと思います。
これらの話は推測です。
転じて、顧客の群れに20:60:20の法則はあるのかということですが、先頭顧客の群れ20%が売上げの80%を達成しているかどうかはなんともわかりませんが、私も百貨店の仕事をたくさんしていて感じることはあります。
仮に全顧客数の35%で売上げの80%を達成しているとして、もしも上位35%の顧客だけを露骨に大事にしたら、残り65%の顧客は店離れを起こします。35%の顧客では店内はガラガラになり、それを受けて先頭の35%の顧客も店離れを起こします。
昔、アメリカの流通業視察をよくやっていたころ、クリスマス前の百貨店は、来店顧客がほとんどなく、修理できないエスカレータの異音だけが館内に響き渡っていたことを鮮明に覚えています。
つまり、65%の顧客がたまに来てくれるから賑わいがあるので、65%の顧客は35%の上位客を支え、かつ館の経営を支えていることになります。
ですから顧客はデータであり数量であると考えてはいけないのだということにつながるのではないかと思っております。
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