顧客育成という言葉はCRMの枕詞として必ず出てくるので、見過ごしてしまうというか、対して意味のない言葉と思い込んでしまう。だからスーと入ってスーと抜けていってしまう言葉と捉えがちだが、実は大変奥深い意味を持った言葉なのである。
それがスーと入ってスーと消えてしまうのは、これまで顧客育成という用語に定義をしていなかったからではないかと思う。顧客育成という言葉そのものに意味があるので、分ってしまうこともあるだろう。そこで顧客育成について語ってみよう。
ビジネスプロセスが進捗をすれば「顧客」も変化をするのかという問いを皆様に投げかけてみたい。
営業マンは契約をゴールとして案件活動に入る。当然どのような形態の営業でもビジネスプロセスは存在する。
例えば住宅営業では、現地調査、ヒアリング、図面提出、内装決定、設備決定、見積書提出などマイルストーンがあって、これらをビジネスプロセスと呼んでいる。
他にもビジネスプロセスがあるのだが、それを明らかにすることが本題ではないので割愛するが、こうしたビジネスモデルが進捗すれば、顧客の状態も契約に向けて変化(進捗)するのかという問いである。
既存のSFAではビジネスプロセスが進捗すれば顧客の状態も進捗し、契約が実現できるとは言っていない。ビジネスプロセスが進んでも顧客の状態が進捗すると設計していないからである。
だから、既存のSFAは、見える化を推進するのだと言っている。
事実、これまでのSFAでもデータベースマーケティングでも、目的は見える化であった。
見える化を推進した企業では、たしかに縦・横・斜めからプロセスが見えるようになった。
4半期でプロセスを管理している某大企業では、案件の一つひとつがどの部署からも詳しく、手を取るように見えるようになっている。だから利益がどのくらい上がるのか、売上げがどのくらいになるのか、おおよその予測はつくようになっている。
しかし、ビジネスプロセスが進捗しても顧客の状態は変化がない。だから見える化が進捗してもプロセスは契約まで進まない。見積書を出すまでは見える化が進んでも、その先はまったく見えないのである。既存SFAの欠陥はここである。
服部メソッドでは、ビジネスプロセスの見える化と進捗が顧客の状態を変えるものではないと初めからそう決めている。また服部メソッドでは、プロセスの見える化が進捗すれば、売上げが伸び、契約率が高まるとはまったく考えていないのである。
もしもそうでなるのであれば、日本中の企業が見える化をもっと積極的に進めているはずであると考えている。
顧客の状態を変えるもの、それはエモーション「理」と「情」の進捗であり、プロセスを契約に向かって押し上げていくのはエモーション「理」と「情」の進捗を背景にした「ASK」と「TELL」であると確信している。
顧客の状態を契約にまで高め、導いていく技術こそが顧客育成技術である。
「ビジネスプロセス」の進捗と「ASK」と「TELL」の進捗、エモーション「理」と「情」の交点に、「契約」があると定義し、顧客育成とはこの実現に向かって進捗していくためのシナリオとそれを実現するシステムにより始めて実現できるものと考えている。
したがって服部メソッドでは、見える化がゴールなどとは夢にも考えていない。
案件が発生していないときにも、顧客育成シナリオは、大きな役割を果たしている。
だから時計が24時間停まらないと同じように、顧客育成技術は24時間動いているものにしなければならない。
顧客育成とはマーケティングの本質を貫く概念である。私もBREA理論を構築し、システムを持って実践できることにより、ただしく顧客育成の定義をすることができるようになった。
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