SFAでは、2~3年前から「プロセスの見える化」が大ブームになった。このことはマーケティング業界にとっても価値あることであったが、2007年は見える化ブームが徐々に終焉の兆しを見せていくだろうと思っている。とはいえ政治と違って経済は緩やかなカーブを示すから一気に終焉することはない。うちはまだ見える化も出来ていないのだからまず見える化から取り組むのだと考えている企業もいる。ITベンダーにも見える化一辺倒で進んでいるところもある。
しかしプロセスの見える化を先駆けて導入実施した企業群からは、見える化導入の猛反省が起きている事を知らなければいけない。彼等は異口同音に「営業プロセスが見えて喜んだのは口うるさい管理型上司だけであった。入力を強要するほどに営業マンの士気は下がり、やる気が失せていく。見える化は営業マンを幸せにしない」と言い始めている。この小さな声はやがて大合唱になっていくことは明らかである。
ある経営者の話は印象的である。プロセスの見える化を導入して失敗した企業の執行役員の話であるが、次のように語っている。
「製造部門ではプロセスの見える化は、大変深い意味を持つ。プロセスが見えたことで生産性向上につながり、納期改善、コスト削減につながる。しかし営業部門では当社の場合は営業員の販売生産性向上と称して行動管理、時間管理を厳しく追及する方向に走ってしまった。製造部門から取締役を多く輩出している当社の体質は、営業部門はだらしがないという営業性悪説があった。その結果、営業員の士気は下がり、モラルは低下していった。
一日に同じ顧客になぜ二度も行くのか。一回でなぜ済ませられないのか。準備が悪いのではないかと上司から時間管理の合理化を追求されても、実態は契約に向けて、最終プロセスにあり、追加提出資料を求められ、社に戻って作成し届けるということがある。製造上がりの、営業未経験者には理解できないことなのだ。
私は、社長に掛け合って営業プロセスの見える化をやめさせました。代案をすぐに考えるからという条件をつけましたが、私は営業性善説に戻りたい。彼等の暗黙知を形式知にし、また彼等の暗黙知にして頂いてスキルを上げてそれをまた、形式知にしていきたい。
パッケージがもつすべての機能を埋め込み、営業部門に機能に添って活動を強制実施させ、管理することをやらせるようなというようなバカなことはもうやりたくない。SFAは必要最小限度の機能でよい。そしてSFAの目的は顧客との生涯の付き合いを実現するものにしたい。
見える化は重要なことだ。プロセスが可視化できたことは功績である。しかし見えた後の使い方が問題なのである。見えたことで納品完結しようとするIT企業。使い方を研究しない導入企業。顧客不在、営業マン不在、マーケティング不在のSFA。このことがSFAをダメにしているのだ。
下降を始めている「見える化カーブ」の後ろ側に、新たなトレンドカーブが立ち上がっている。顧客を公平差別してターゲティングした顧客との関係深化を軸にしたLTM(Life Time Management)が企業に求められるようになる。その動きが顕在化する。
SFAはこれからは営業マン管理ではなく営業支援だというが、LTMは観点が違っている。LTMは顧客との関係を深めて顧客との生涯の付き合いをマネージメントするシステムである。
マネージメントを管理とは訳さない。マネージメントはマーケティング、あるいは経営と訳すべきである。また、SFAはプロセスの可視化ではなく、契約に導いてくれるような機能を持つものが出てくる。マーケティング理論があれば可能である。
店舗系,Web系、通販系のCRMでは、これまでのデータベースマーケティング手法は終焉を遂げる。店舗、通販、WEBビジネスではRFM分析やABC分析などで優良顧客を識別しようとする手法が一般的であったが、これら一定期間を区切りその間にたくさん購入した顧客を優良顧客とする過去のタイムスライス分析では、真の優良顧客を特定できないことが企業担当者にわかっている。
年間40%近い顧客が入れ替わるこれらの優良顧客特定方法では、大切にするための伸の顧客を発見することが出来ないのだ。この分野もLTMが注目されていくだろう。
かかる意味で2007年はマーケティング理論が中心となったLTMシステムが台頭する。
BI(Business Intelligence)は、見える化をマーケティングに役立つように変化をしていく。真の優良顧客を特定し、抽出するために役割を果たすようになるだろうし、タイムスライス分析で過去にRFM値の高い顧客を抽出するのではなく、未来にたくさん購入してくれる、ポテンシャル度の高い顧客を抽出するようになる。
2007年は、古いものが壊れて新しいものに変わっていく年になる。顧客が一歩先に進み、ニーズが顕在化することで新しいものが台頭する年になるだろうと思う。
それにしても、これから見える化登山口から契約率向上(売上げアップ)を目指して登ろうとしている企業は哀れである。
この登山口を先に昇っている企業は、この先何もないと引き返しているのである。
なぜ引き返している人に、その訳を聞かないのか。それが私にはわからない。
売上げ要因分析という分析手法があるが、売上げ=顧客数×頻度×一客点数×商品単価で組み立てられている。この公式からわかるように売上げを増やすためには購入くださる顧客数を増やすことしかない。プロセスを管理して営業販売生産性を上げても顧客は増えないのである。不条理な管理で営業マンの士気が下がれば何をかいわんやである。
このことがようやくわかり始めだしている。逆にいえばここにいたるまでにいろいろな遠回りをしなければいけなかったのである。
やって、失敗して、消去して、次の道に進めることがある。
かかる意味合いから、今年は新しい波が押し寄せる。波を認識できるか、できないのか、その波に乗れるのか、乗れないのか。
勝ち組になれるか、負け組になってしまうのか、選択の三叉路に立つ年でもあるのだ。
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