SFAをBPRであると規定している間は、SFAをいかに導入しようと受注率が高まることはない。
BPR、すなわちビジネスプロセスをリエンジニアリングする試みは100%、企業側のご都合による。企業がどのようにBPRを実現しようと、顧客には全く 関係がないことだ。関係がないことだから受注率が上がることはない。つまり顧客は「製品を売り込んでくる企業のビジネスプロセスが変わったから契約をしようではないか」とは絶対にならないわけである。
それをあたかもBPRで受注率が高まった、売り上げが伸びたと言っているのは、売り上げが伸びたことが事実であれば、それはBPR以外のことを実施したからである。
ビジネスプロセスを再設計したからといって、売り上げが伸びるわけはない。このことは営業経験者なら誰もが分かることである。
ビジネスプロセスを理想的に設計して、素晴らしいマイルストーンを立てようと、見積書提出から先に進むことはない。たまたまその先に進んで契約できたとすれば価格が折り合ったとか、性能が良かったからとか、営業マンががんばって関係ができていたからだとか、競合相手に落ち度があったとか、いろいろな要素が 働いた結果であって、ビジネスプロセスがリレンジニアリングされたから契約までできたのではないということだ。
営業マンのビジネスプロセスを変えるだけで受注率が高まることはありえない話である。
ITにデータを落とすということは、落としたデータが数値化されるから、さまざまに分析することが可能になる。これが見える化なのである。
したがってIT化は見える化と同一である。営業プロセスが見えるとプロセスの項目ごとに集計することによって、営業プロセス全体の中でどのような動きをしているかが見えるようになる。
例えば社内時間、社外時間の比率、社外時間÷訪問件数で一件当たりの訪問時間の比率が算出される。すると上司は当然ながら部下の数値比較をすることとなる。これこそ営業マンが嫌がる行動管理という名前の、部下を追い込むマネージメントなのである。
大会社で事務系の管理職が営業職に配置転換になると、真っ先にこうした管理に走るケースがあるが、こうした作業を、SFAを販売する側は、販売生産性の向上と言っている。
財務部など事務系から昇進した社長から、1時間単位で記録しているのはおかしい。実体は分単位で動いているのだろうからSFAは分単位で記載するようにと命令があれば、悲鳴をあげるのは営業マンである。
ついでに日報記載が義務付けられると、営業マンは仕方無しに書く訳だが、部下を多く抱えた上司は毎日返事を書くのは大仕事になる。やがて上司の記載はあい まいになり、最後には導入当時の「精神論的な日本の営業はおかしいとか変だよ」ということでスタートした「志」は全く消えてしまい、上司の返事は、「今月 受注獲得100%達成がんばれ」と書いているだけになり、部下も「何とかがんばります」と返事を出して上司と部下の精神論的な交換日記になってしまってい るのである。
あるいは、「この案件は受注取れそうか」と上司の質問に対して、「分かりませんががんばってみます」と答えるだけの、「日本の営業は変だよ」がIT化されてもそのまま変な営業スタイルを続けているだけのSFAになっている。
こうしてBPRと規定したSFAは、営業マンにとって一番やりたくない余分な仕事として位置付けられているから成果が出るはずがないのである。
営業マンの仕事は、本来は(1)聴くことと、(2)関係者と関係を深めること。関係を深めるには売込みではなく、商品を「へえ、なるほど。すごいね。よくできているね」と理解を深めていくアクションを行なうことであり、(3)商品理解をいただくアクションと(4)人間関係を深めるアクションをしていくことである。
その結果としてビジネスプロセスが契約に向かって進んでいくことになるのである。BPRでSFAが完成すると思ったら全くの大間違いなのである。SFAは顧客政策そのものなのである。
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