企業間の経営統合がブームになっている。百貨店に続き小売り電機業界も経営統合ブームでヤマダ電機がキムラヤを子会社にしたなど経営統合のニュースは次々と出てきて新聞紙上やTVニュースを賑わしている。
こうした競争は我々が若い頃に田岡さんから教わったランチェスターの法則に当てはめると強者の戦略である。
なぜ経営統合をするかといえば、少子高齢化時代に向けて、商品をたくさん並べる大型ショップを作ろう、そればかりか皆で手をつないで敵を減らそうよとする考えである。売り場面積が大きければ顧客は来店するだろう。競合しないエリアに仲間を増やせば結局は同じ財布にお金が入る。
だから商圏を拡大しよう、ライバルとは面積(商品数)と数(店舗数)で勝負しようとする強者の戦略というわけだ。昨日まではライバルと思っていた他社が今 後はHRという同じ会社の元に終結し同じ財布に利益が集まるのだから、ライバルと同時に同じ親会社を抱く仲間なんだよということになる。
経営統合をすれば、ライバルは減るし、味方は増えるし、延べ面積は増えるし、商品数は増えるし、経営者も安心できるし、会社も大きくなるし、大きくなれば使えるお金も大きくなりしたがって、集客力を拡大することにお金を使え、あるいは価格を安くすることにお金を使え、そうすれば顧客が集まり、たくさん売れて利益も増え、少子高齢化社会でも生き残りができるという構図で、風が吹けば桶屋が儲かる式ではなかろうが経営統合をすれば生き残れるという構図が経営者 には見えるのであろう。
それがブームを生んでいるわけである。
ビートタケシの「赤信号みんなで渡れば怖くない」に似た心境が経営者に働くのだろうと私は思ってしまう。つまりみんなで渡ったことによって得られる恐怖感の減少こそが誤りなのである。
赤信号だが皆で渡れば怖くないのか、皆で渡ることが赤信号なのか、経営者はどう捉えて経営統合を急いて(せいて)しているのだろうか。足元は見えても先は読めていないのである。
皆は強者の論理で拡大をしている。拡大をしないと負けてしまうとする恐怖感がある。だから皆で業界を挙げて経営統合をすればライバルは減り、その分拡大ができると考えているわけだが、
少子高齢化の後に来るものは極端な人口減の社会である。
人口減の社会では、規模のメリットは有効に働かない。したがって規模のメリットを追求して構築した大面積と大型インフラは人口減社会にはまったく通用しない。
10人の乗客しか乗らないのなら大型バスというインフラは不要になるのである。
皮肉なことに大型化になることによって生き残り、大型化になったことによって死に絶えた恐竜のような歴史に学ぶことがあるのに、今小売業は憑かれたように大型化を目指している。こうした拡大戦略は商品を中心にしたマスによる拡大戦略である。
なぜ、商品と顧客とケアを結びつけた充実戦略をいっしょに走らせないのか。
ボストンコンサルティングの日本代表御立氏は、最近とみに「顧客に慮る(おもんばかる)時代になる」と話をしている。
御立氏の話しによれば、昔は商品を並べれば顧客が買いに来る時代があった。やがて売る技術がなければ商品は売れなくなった。これからは顧客を慮る時代が到来したのだ。買う時代でもなく売る時代でもない。顧客を慮る時代になったのだという発言内容である。
ボストンコンサルティングは他の大手コンサルファームと同様に戦略コンサルティング会社である。
こうした戦略コンサルティング会社の日本代表が、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを、表現方法を変えて発言しているのは大変興味が深いことである。
経営統合をしても一社しか残らないことはなく、それぞれの企業が努力するのであるから競争は続く。しかし人口が減れば購買する分母数が減少するのだから、一番もてあますのは巨大化したインフラそのもの、つまりコストである。
これから50年後、環境問題はもっと現実的に人々の生活を拘束するだろう。ツバルなど低い標高の土地は水没化し、都市の夏は酷暑化し温帯は亜熱帯化し、こうした環境変化に人々は適合しなければ生きられない。当然ながら価値観は激変する。
恐竜が滅びた後に哺乳類の時代になる。人口が減少した社会では、大きなインフラは大量なコストがかかりそれを維持する費用はまかなえ切れなければ、当然のこととしてエネルギーの少ない業態が次々と生まれてくる。
例えば大きなエネルギーや大きなコストを必要としないネットと商品サンプル店舗、それと配達システムを連動させた小型ユニット業態であり、片方では商品と顧客、顧客を育成するシステムを連動した顧客ケアができる企業体のミックスしたものといえる。
心地よいケアを続けることができれば顧客は心地よいケアを求めて移動する。
商品に差別化はできないのである。A店でもB店でも同じ商品を販売している。
顧客ケアの姿は完全に差別化できる。つまり顧客ケア企業こそが新たな時代における充実戦略であり、生き残り勝ち残りの姿といえるのである。
※人口減については国立社会保障・人口問題研究所HPをご参照ください
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