【2007.11.16配信】
日本国民がようやく豊かになりはじめたころ、暮らしを変える商品は大量に生産されて、これを大量に販売するための方法が産みだされた。これがマスメディアを媒体にして商品告知をするマスマーケティングである。
先週号で事例を紹介した自動車販売業界の販売方法はフォード販売理論として知られている。
一般に私達が知るフォード理論はは自動車をベルトコンベアーシステムで流した大量生産システムのことであるが、販売についてもフォード理論を持っていた。それは納車までが営業マンの仕事、納車後のクルマはサービスマンの仕事とした単純明快な理論である。
当時はクルマを欲しい人が次々と列をなした時代である。この話をかつお釣りに例えると非常に判りやすい。釣るのは漁師の仕事、釣ったかつおを保存するのはバックヤードの仕事。
この仕組みが、かつおが一番釣れる方法だ。というわけである。
顧客が列を作って買いに来た時代はそれで十分によかった。
しかし時代はフォードチームが一番効率がよい販売方法を求めた時代とは激変している。
フォード販売理論は顧客が行列を作って契約書に印を押す順番を待っていることを前提に作られている。顧客はクルマを欲しくて仕方がない。だから大量生産したクルマを大量に販売する仕組みを作らなければ顧客の期待に応えることができないとするベースが根底に流れている。いまは、販売各社が大量に作った製品の売り先を見つけ、販売するために懸命の努力をしている時代だ。顧客が変われば売り方も変えなければならない時代になっているのだ。
いつの時代でもそうだが時代の風を察知して新しいビジネス方法を考える人たちがいる。
中古車のオークション会場が増えてきて、オークションで落札される価格が公表されている情報を把握し、各メーカーのディーラーと契約し、クルマを販売できる権利を持ちながら、下取りの時に高く下取りをできるクルマしか売らない方法を展開しているクルマ販売会社が増えてきている。
彼等の主張はこういうことである。オークションシステムの情報でどの車種のどのクルマをどのくらいの走行距離のうちにどのオークション会場に持参すれば、いくらで落札できるかの情報を知っているので、お客様。一番高く売れるクルマに乗っていて、一番高く売れる走行距離のうちに販売して、また新車を乗り換えなさい。その方が七年も八年も乗ることと比べて、いつも新車に乗れて、これだけお得になりますよということだ。
お客様。二人の方が同じ日に同じようなクルマを買って同じだけ走って下取りに出す時に、高い車は130万円で下取ることができて、低いクルマは40万円程度でしか下取ることができないことがクルマの世界ではあるのですよということである。
このビジネスを全国に広げている彼等から話を聞くと、このビジネスのポイントは販売した顧客をいかにケアできるかにかかっているのですと明快に答えを返して来る。
今の走行距離を把握できる。今売ればこれだけの高値で売れてまた新車に載れる。これを7年半、3回繰り返すと1台のクルマを7年半乗って次のクルマにようやく買い換えることと比べて、これだけお得なんですよと説明をした時に納得していただけるように顧客に学習をしていただく時間と仕組みが必要になりますと 彼等は詳細を語る。
しかし、実効力を持ったその手法がわからないわけである。
彼等のビジネスを精査すると販売した新車を2年半で下取り次の新車販売をしている。
今、代替年数が8年になろうとしている時代に2年半で顧客に買い換えることを実践している
ことは凄いと思う。彼等は販売店として新車販売の利益を得、下取りで利益を得る。
それを2年半のサイクルで回すことができれば既存のディーラーにはできない仕組みを持つことになる。成功の鍵が顧客ケアだというから面白い。
自動車メーカーも販売ディーラーも、さらにはこのような新しい販売をする人も含めて、いかに販売した顧客をケアできるかがこれからの販売のポイントであると異口同音に語る顧客ケアマーケティングは、次代の大マーケティングとして脚光を浴びることは確かであろう。
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