【2007.11.22配信】
昨今、社会問題になっている食品賞味期限の偽装問題を、ブランドが地に落ちたとか、消費者の信頼を裏切ったと評論されているが、実はこれらの企業はLTVを失ったのである。
赤福も、吉兆も、雪印も、石屋製菓も、不二家も、永年にわたって築いてきた顧客の生涯価値を一瞬にして失ったのである。
生保ではこれからの高齢化社会、そしてその後に迎える人口減少社会の間に横たわる高齢者死亡社会にあって多額の保険料支払いが予測されている。すでに生保の決算書を見れば明らかのように保険料収入より、保険金支出の方が増えてきている状態だ。生保は保険契約者を増やさなければいけないが、人口減社会ではそれもママならない。契約者の解約率が増えてきていることが生保全体の課題になっている。生保はLTVを実現できていないのである。
損保も同様である。損保のメインは自動車保険だが国内の自動車販売市場は決して明るくない。
老人のクルマ離れと買い替え離れ、都市部の若者のクルマ離れ、さらに代替年数が7年から8年に延長になってきている。これだけで市場は12.6%も縮小したことになる。
一方、損保は販売代理店に契約を依存しているが個人営業の代理店は一代で終わる可能性が高い。
またダイレクトに契約をすることで安い保険料で済むダイレクトマーケットがインターネット時代に急成長している。事故を起こさない被保険者はこのTV・ CMをみて同じなら安い方がよいと既存代理店と関係ができていない人は解約を始めている。保険会社はLTVを実現できていない。
自動車販売業界も同じである。顧客が列を作ってクルマを買う時代にはフォード販売理論はきわめて有効であった。この理論は納車までは営業マンの仕事、その後はサービスマンの仕事と割り切ることで販売生産性を高めることに成功した理論である。この理論を採用した日本の自動車販売企業は企業体質を作ったが、いまやLTVを実現できないために、リピート率(また次も当社から購入してくれる率)が改善できず、非常に大きな課題になっている。
さまざまな企業不祥事を受けてコンプライアンスブームであるが、なぜコンプライアンスが必要かといえば、つまるところLTVを守るためである。
ブランディングの目的はLTV実現である。多くの企業はブランディングを望む。特にNETの世界ではブランディングが選択の極めて重要になる。誰もが楽天のようなブランドに成長したいと考えている。ブランディングが進めば宣伝は一切不要と考えている。しかし突き詰めればブランディングで得られる価値は LTV実現である。
顧客感動マーケティングが一時期大流行したが永続しなかったのは、顧客感動は永続せず飽きられることが分かったからである。感動は麻薬効果を生じる。どのようなことをやっても顧客は手の内を見透かし、同じことを続ければすぐに飽きてくる。次は前よりもっと感動的なものをと考えるから麻薬効果といわれている。感動マーケティングではLTVが実現できないから永続しなかったのである。
百貨店の売場数値を追いかけると年間に一回しか購入しない顧客が圧倒的に多い。これは売場単位でLTVを追求していないからである。RFM分析やABC分 析などデータベースマーケティングではLTVを追求することはできないのである。年に一度しか来ない顧客が二度購入してくれれば、客単価(一客点数×商品 単価)が同じなら売り上げは二倍になるのだ。
広告の世界ではインターネットテクノロジーを駆使してクリエィターエージェンシーがビジネスに応用できる仕掛けを次々と発表して話題になっている。
しかし彼等はこの仕組みの欠点は顧客と関係ができないことだ.顧客との関係が一番大事なことだと断言している。Web2.0の世界でもLTVが目的ということである。
以上、思い当たることを紙面の都合に合わせて書き並べただけでLTVを無視した結果と、LTVがいかに必要なものかの二点がお分かりにいただけたと思う。
顧客と関わりあいを持つ長期的な全プロセスで、各ステージに於いて顧客の状態に合わせて顧客ケアを持ち続けることができる企業だけがLTVを実現できるのである。
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