【2008.03.22配信】
ポイントカードがCRMであるとする考えは誤りである。お買い物の時にはポイントカードを顧客が提出するので顧客の囲い込みに成功していると考えるのは誤りである。
ポイントカードは、値引き、割引戦略である。CRM戦略ではない。
ポイントカードが有効なのは、この店でポイントを貯めようと考えている間だけで、貯まったポイントが消化してしまったら、もうポイントの価値は消え去ってしまう。
顧客は一箇所で商品を購入するわけではなく、色々と使い分けている。
矢野経済研究所が調査した結果だと、一人当たり8.2枚のポイントを持っているという。
百貨店の販売員に話だと、お客様が時に5枚くらいの百貨店カードを出して、お宅はどのカードですかと聞かれることがあるという。一人3枚は当たり前だという。
そもそもポイントカードは、アメリカから入ってきたFSP(購入頻度の高い顧客を優遇するプログラム)が、日本に定着せず、FSPを仕掛けたITベンダーが日本式にアレンジしたことによって広まったものである。ベースになったものはスタンプカードで、これをIT化したものがポイントカードなのである。
はじめは顧客データを取るためには何かインセンティブをつけないとデータが取れないという考えがベースになった。データをいただく御礼がポイントであり、それは購入金額に応じた基準でポイントをつけるということで、ポイントを出せば貯めるために来店し、使うために来店するから、結果として顧客を囲い込めるということにつながり、頻度を上げることができる、クロスセル、アップセルをすることができるCRMなのだという論調でスタートした。
ポイントカードには魔性がある。はじめたら止められない。ライバルがはじめたら自分もやらなければならないという麻薬のような魔性である。
ポイントは発行する企業にとっては、負債の増加である。有効期限を設けないクレディセゾンは、永久不滅ポイントというキャッチフレーズで会員獲得に成功したが、0.1%(1000円で1ポイント)という低い換算比率にも関わらず、いまポイント負債が430億円ある。
そこで発行会社はポイント制度を変え、比率を変えようとしてきている。
初めから判っていたことだ。ポイントは値引き・割引戦略であることは。
しかし、魔性があるから、ライバルが始めたら自社もやらないと負けてしまうと考える。
もしもポイント止めると打ち出したら、顧客は持っているポイントを消化しようと動き出す。
極端な話になるが、借入金がある企業に銀行が来て全額返済しろというようなものである。
だからそんなことはできない。
私はポイントが出たときからこの制度の欠点がわかっていた。
ポイントは値引き販促であって、集めようとしている間は有効だが消化してしまったら、それでゼロになる。使う顧客はポイントを集めようとする人であって、そんなものには無関心な人、いわゆる富裕層対策ではない。企業は負債が増えてくる。顧客を囲い込んでいる積りになるが、決してそうにはならない。値引きで取った顧客は値引きで取られる、これは私のコンサルティング経験で培った鉄則である。
ポイントの交換は、交換景品を揃えている会社があって、このような会社とタイアップしてやっているケースが多い。ところがどの景品も欲しいというものはなく、交換比率も高い。
ポイントの景品がチープになっている。そこで特にクレジット会社は航空会社とタイアップしてマイレージと交換しているが、これが人気を博しているために、そちらに顧客が集中し、クレジットカード会社は比率を変えようとしている。
VISAカードは、1ポイントが10マイルであったが、4月の中ごろから10マイルコースと5マイルコースに分けて、これまでの10マイルコースは交換時に年間6300円を別途支払うように制度を変える。各社とも追従するであろう。
するとポイントの比率が下がれば顧客はポイントに魅力を感じなくなる。
ポイントは発行する企業が疲弊をしてきているのだ。
ポイントで顧客を囲い込むということにはならないことが、次第に判ってくる。
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