【2008.04.04配信】
昨日、診療所で処方箋を書いてもらい、薬局に持参した。
するとしばらくして、白衣姿の薬剤師がプリントした紙を持ってきて、処方箋に書いてある薬のうち、この薬とこの薬にはジェネリック薬品があり、成分と単位は同じですが、価格がこれだけやすくなります。どう致しましょうかと質問をしてきた。
持参した紙には薬剤によって異なるが、ジェネリック品は40%くらい安いことが具体的に金額で私向けにカスタマイズされて印刷されてあった。
聞くと、処方箋を持ってきたすべての人に同じ提案をしているようで、処方箋に書かれた薬名を打ち込むと、ジェネリック製品名が出て来るシステムがすでに備わっているのであった。私は仕事柄、これから医薬品メーカーは大変なことになるなと直感した。
医薬品メーカーの営業をMRという。(英文正式名:Medical Representative 日本語名:医薬情報担当者)が努力してドクターに、当社の医薬品を選定していただいても、薬局でこのような活動が積極的に行なわれるとしたらMRの活動はジェネリックが出ている薬品については、無に帰するからである。
私は、処方箋に書いた薬品名を患者の意見で変更できるのか、それはおかしいことではないかと薬剤師に意地悪い質問をした。
すると薬剤師から先生に連絡をして処方箋を変更するカタチを取らせていただきますと返事が帰ってきた。
医薬メーカーの業界は生き残りをかけて合併をしているが、再編成が再び生まれると感じた。
最後は一つになって分業で薬品を作るようになるのではないかとも思った。
一方、三越と伊勢丹が合併をしたニュースがTVで特集を組まれていた。
ニュースを見ていてTV会社の視点の付け所が、幼稚で私は驚いた。
三越と伊勢丹のためにだけ有名ブランドがバックを作った。これは一社だけでは不可能なこと。
二社が一つになったから実現できたことと百貨店のマネージャークラスの人が説明をし、TVはそれを合併効果に挙げた。TV会社がやらせたことである。
数が出ればロットとして成立するから、メーカーは百貨店の要請に従って1パターンを増やしただけのことである。顧客からすれば大したことではない。三越伊勢丹HRだからこそできました、他社では扱っていませんと言ったところで、顧客はそのデザインが気に入らなければ買わない。
日本人はブランド信仰が強いが、それだけブランド品は丈夫でしっかりと作られているからともいえる。私が25年前に購入したLVのKeep Allは、変色しているものの、いまだに丈夫で長持ちをしている。日本人がブランド好きといってもウチだけしか扱っていませんという商品に無条件で飛びつくほど時代は未熟ではない。
1ブランドの1アイテムに1パターンが増えることは、そのリスクはどこが持つのかを同時に考えなければならないことである。全品買い取りなのか。消化仕入れでいけるのか。売れなかったらメーカーは他店に持っていくのか。
そう考えて行くとお祝いだからといって両社の古いマークが入った布地を販売するようなわけには行かない。幾つも特別ロットを組み立てるわけには行かなくなる。今回のパターンが売れたとしてもそれはお祭り効果であって、そうした手法が多くの商品で継続するはずはないのである。
百貨店の合併によるメリットはこんなバカなものではない。
本当の合併メリットは、やがて人口減になって企業を縮小する時に生じる。
二社を一社にすれば当然ダブル部門が出てくる。その削減が合併のメリットなのである。
次には利益を出せない店舗を切ることになる。ここにも合併効果が出る。情にほだされずに閉店することができるからである。
つまり生き残りをかけた時に、ダブっている無駄を排除できる合併効果が生じることになる。
喩えは悪いがわかりやすいのでお許しいただくが、二つの濡れ雑巾を二つ合わせればやがて水を絞る時期が来るそのときに一つの雑巾より多く絞れるので、それが合併効果になる。それが真の合併効果である。
有名ブランドが我が社だけのオリジナルを作ってくれた。これが合併効果と浮かれているとしたら、まだ医薬品業界のような厳しさが百貨店業界にはない証拠でもある。
以下は余談である。
この両社の合併はマスコミがさまざまに取り上げている。合併のいう名の元に伊勢丹のシステムによる統合、伊勢丹流の顧客層と商品(単品)を紐付けたキャンペーンなどが、話題になり、いまは圧倒的に伊勢丹のマネージメントシステムが三越を支配するカタチになっているが、三越の社員は優秀である。今は受け入れてもやがて三越側から逆襲が始まる。
三越の銀座店増築によるノウハウは伊勢丹新宿店流でやれる。銀座と新宿は商圏が似ているからである。しかし、日本橋は顧客層がまるで違う。三越の地方百貨店に伊勢丹新宿店流は通用しない。
ある時期で三越と伊勢丹の社員によるマネージメントレベルが同じになったときにどのような合併効果がそこから生まれるのかと思うのか。
私にはよく見える。
レベルが一緒になったとき、三越は真の三越探しの旅が始まると。
必ず両社とも独自性が求められてくるはずである。この衝突こそが三越と伊勢丹の独自性を作る源となる。三越の社員が伊勢丹のマネージメントスタイルを吸収したあとに、独自性を出せなければ、いいかえれば伊勢丹新宿店流に飲み込まれてしまえば三越は押しなべてつまらない百貨店になる。伊勢丹と同じなら顧客は伊勢丹を選ぶ。新宿に行かない三越の顧客は高島屋へ移る。
三越は三越とは何かと早く探し当てなければいけない。探し当てたら、顧客にアクションをしなければいけない。
三越の特徴は顧客ケア力のはずである。ここをとことん磨き上げることである。そこに商品がついてきたら鬼に金棒である。
伊勢丹の武藤社長は、三越のデータベースにある優良顧客が魅力だと言っている。新聞を読むと三越のデータベース顧客に伊勢丹がアプローチをすると書いている。
はたして関係が深化されていない人に、顧客は心を開くのか。
私はケアされていない顧客データベースに、価値はないと思っている。ケアをしている期間だけ顧客は顧客としていてくれる。ケアしなければ顧客はいつでもどこかに移ってしまう存在だと思っている。
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