【2008.06.20配信】
日本の営業はいつから毎月の売り上げを追いかけるビジネスの形態になってしまったのか。
昔は一年間というサイクルで商売は回っていた。盆暮れはそのけじめであって、年度末にすべてをきれいに精算するという風習が商いの根本的な原則であった。
昔は顧客をきちんとケアすることができていた。顧客の誰によって当店は支えられていることを良く知っていた。商家は顧客を定め、顧客をケアし、顧客はケアに対応した信頼の絆で結ばれていた。片方で商家は仕入先にも手厚く絆を作っていた。一方で商家同士はネットワークを持っていて顧客と仕入先の与信ネットワークを張り巡らしていた。
やがてアメリカの経営理論が入り、毎月の計画達成が年間計画の達成につながるということになった。企業は毎月の売り上げ目標を達成することに一喜一憂した。
高度経済成長時代になって物を中心とした経済が回り始めると、売る規模は年々大きくなっていった。こうして営業部は企業規模の拡大と共に目標数値は高められ、今月の目標達成に追いかけられることになった。
経済が大きくなり、高度経済成長時代を迎えると企業は絆を結ぶことをしなくても商品は売れていった。こうして時代は顧客の時代から商品の時代へ移って行った。顧客の誰を問わなくても売れた時代であるという意味である。
それからは時代が幾コマも動いている。商品を売る技術はどこも横並びになり、売る技術を磨き上げてもそれが通用するのは都会のごく一部であって、大方は低迷している市場での大競争のさなかにいて明日を憂えている状況である。
もう、商品を追いかけても、売る技術を追いかけても、そこからは新時代の扉を開く解は生まれない。
かつて主婦を過重な労働から解放した洗濯機や炊飯器に変わる商品はもはや生まれない。
快適な夏を過ごせるエアコンも、食品を長期保存する冷蔵冷凍庫も、テレビもオーディオも生まれない。商品はすべて成熟した。生活を一変させる創造的な商品は生まれない。
それなのにビジネスは高度経済成長時代のままだ。売ることだけを最優先し顧客のケアを考慮に入れていない。商品が欲しい時代、一台も冷蔵庫が無い時代、テレビが無い時代にはこのやり方が一番正しいとされた。顧客は列を作っていたからである。
営業マンは毎月、今月の売り上げを作るために心身ともに追いかけられた生活を送っている。
時代が幾コマも動いて、これからは顧客をケアできなければ企業は時代に取り残されると言われ始めている。
顧客が主役なのだ。顧客が商品を買う。顧客が商品を使う。顧客が商品を壊す。商品はやがて陳腐化する。サイズも合わなくなる。流行遅れになる。商品を使わなくなるのは顧客だ。また顧客は商品を買う。顧客はシームレスに商品を買う存在である。
顧客はなぜあなたの企業から再び買ってくれないのだ。一回目はあなたの企業から買ってくれたのに、なぜ二度目は他の企業から買うのか。それはあなたの企業は再び買ってくれなくてもよい顧客戦略を取っているからである。毎月今月の売り上げを稼ごうとする戦略だけをとって、顧客をケアしていないからだ。それ以外に理由は無い。
LTVはあり得ないと言う人は多い。そんなものは机上の理論であるというわけだ。片方で企業は一回の顧客が生涯の顧客になればよいのに、と願っている。実際、一回の顧客が生涯の顧客になったらこんなに素晴らしいことはない。営業は楽になり、財務も安定し、企業は安定拡大をする。
大事なことを一つ話す。ライフ・タイム・ケア(Life Time care)の成果がLTVなのである。顧客はケアをしている間だけ顧客で居続ける存在である。
顧客をケアしないから一回の顧客が生涯の顧客にならないのである。
ライフタイムを人の一生と厳密に考えることはない。幼児服だけを作るアパレルメーカーにとって顧客の生涯とは幼児服を着る間だけとなるからである。
顧客をケアできる企業こそが、生き残れる。それは明らかである。そうして顧客をケアする企業になるのは決して難しいことではない。経営者の意志さえあればすぐに踏み込んでいける。
顧客ケア企業は顧客を持つ企業ならばすべてに当てはまる。流通業などの店舗でも、通販でも、ネットビジネスでも、営業マンが訪問する企業向け営業でも例外は無い。
次の成長戦略は顧客ケア戦略である。顧客をケアできる企業は本当に強い。このことを私は実感している。
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