【2008.07.25配信】
2000年当時、アメリカから著名なSFAのパッケージが入ってきて、SFAの大ブームが巻き起こったことがあった。私はこのシステムを見て直感的に、これは一過性のブームだと判断した。その理由を列挙するならば、正確に書くことができるが、それを細かく書くことがテーマではない。
肝心なことは、アメリカから入ってきたSFAは、在宅勤務者が本社に出していた業務報告書の電子化にしたものに過ぎなかったのである。営業マンがやったことの後追い報告書や、電子化したことによって可視化できることに日本の経営者は過大評価したわけである。
案件の進捗を可視化できる。ビジネスプロセスを可視化できる。いまでもSFAの宣伝ページを見るとこんな言葉が並んでいるがこれらは業務報告書が電子化されたものである。
SFAには営業活動の理論が載らなければ、日本では意味をなさないのである。
私は「営業活動」をコンサルティングの現場でつぶさに見て、共通した原理原則を見つけた。私自身も産業機械メーカーに勤務して製品の開発から製品を販売する営業企画までを一気通貫でやっていた経験があり営業活動については熟知している。
それは日本では、案件を圧倒的に勝ち取るためには「顧客の意思決定進捗を確認する」ことであるという原則である。
当時、私の会社では大手ハウスメーカーの売上げアップコンサルティングを展開していた。
プロジェクトで議論を続けながら、顧客の意思決定進捗を確認できればほぼ間違いなく契約に至ることが分かった。
そこでどの項目について意思決定できれば契約に至るのかを議論した。そして顧客の意思決定進捗を確認することをASKと名付けた。
ハウスメーカーでは建て主と話を進めることが普通だが、どうもそれだけでは不十分で家庭内の力関係や、土地が祖父のものかどうかで祖父の発言力も強いと言うことが分かった。
私は関係者全員のリストを作ることと、各人から意思決定進捗を確認することが契約できる圧倒的な力であると判断をした。
こうしてASK表ができたわけである。このASK表を見た営業マンの感想は全員一致した。
「これがわかれば絶対に契約できる」
ところが営業マンの営業力はトータルでは決してレベルの高いものではなかった。
建て主の氏名は聞けるが、家族全員の名前さえ聞くことはできなかったのである。
私は関係深化こそがASK表が埋まる唯一の方法であると直感した。
そこで情の関係と理の関係を深めるための定義を開始した。
同時に営業マンが契約にいたるプロセスのどこに存在しているかが分かるようにしないといけない。どこにいるかだけではなく、次に何をしなければならないかも分からないといけないと気が付いた。
これまでの話を集約すると営業活動とは
● 顧客と情の関係を深める活動である。
● 顧客と理の関係を深める活動である。
● 顧客関係者を把握し、一人ひとりと関係を構築する活動である。
● そのために顧客をターゲティングし、公平に対応する活動である。
● こうして案件を発掘し、登録する活動である。
● 次に社内向けビジネスプロセスを進めるためにASK表をYESで埋める活動である。
● ASKで顧客の意思決定プロセスを確認し、理のアクションで顧客の課題を解決し、YESを積み重ね、推し進める活動である。
特に日本は情の関係が重要なキーワードになる。特に製薬業のMRはドクターと情の関係を構築しないとビジネスが一切、前に進まない。
顧客は自らの購入プロセスと照らし合わせて項目を一つひとつチェックし、YESとならない限り、お宅から買おうとは言わない。だから企業の営業活動とは、最終的には顧客に自社製品を購入いただく上で意思決定の進捗を確認し、理のアクションでこれを解決し、YESにしていく活動である。
こうした営業活動を日本のSFAに搭載することが必要である。日本的な営業活動がSFAによって展開でき、可視化でき、形式知化できればそのSFAは日本の企業が待ち望んだものになる。
次はお約束のトピックスについて説明をする予定です。
コメント